6.過去
「……おじゃまします」
お家の中に入ると木製のおしゃれな家具が並んでいて、イメージ通りのかわいいお部屋が広がっている。
「今日はもう遅いから、街には明日行こう。役場に行けば何かわかるかもしれない。ひとまず落ち着くまでこの部屋使って」
「え。いいの?」
「いいもなにも行くとこないんだろ。悪いやつじゃなさそうだし」
「アンズ弱そうだし。へへへ」
「マルセル、リュカありがとう!」
私は優しいふたりのお言葉に甘えることにした。
***
翌日になり、私たちは街に出掛けた。
私が着ていた部屋着は目立つからということでリュカの服を借りた。
最初の目的地は役場。
マルセルの知り合いがいるみたいで、その人に会いに行った。
役場に入ると、真ん中に受付があって綺麗な女の人がいた。西洋風ではあるけど、役場全体の雰囲気は日本とあまり変わらない気がする。
マルセルが受付の人と話して戻ってきた。
「ロットさん今出てるみたいだから、ここで待ってよう」
しばらくするとひとりの男性が役所に入ってきた。
「ロットさん!」
気がついたマルセルが一目散に駆け寄る。
ロットさんと呼ばれるその男性は、スーツのような装いにメガネをかけていて大人な印象の人だ。
私はマルセルの紹介で、ロットさんに話を聞いてもらうことになった。私の話を聞いたロットさんはずっと頭を抱えてる。
しばらくすると、徐に立ち上がり、隣の部屋に行ったしまった。戻ってきたロットさんは古書を持ってきた。本を開いきパラパラとページをめくり出す。
「……あった!」
そういって私たちに向かって本を広げて見せてくれた本には、はるか昔に起きた、私と似た境遇の人のことが記載されていた。日本ではないけど、他の世界から転生した人の話。そして戻ることはできなかったようだ。
薄々気づいてはいたけど、もう戻れない。その事実が私に突き刺さった。
「大丈夫か?」
見かねたマルセルが優しく声をかけてくれる。
「うん、大丈夫。なんとなくわかってたし。でもこれからどうしよっかな〜。仕事とか住むところってどこで探せばいいの?」
「それなら商業ギルドに行くといい。できそうな仕事が見つかるかもしれないよ」
「ありがとうございます」
「困ったことがあったら何でも聞きに来てくれたまえ」
そう言ってくれたロットさんにお礼を言って役場をでた。
善は急げ。
私たちはすぐ近くの商業ギルドに向かった。