5.街に行く
マルセルとリュカに出会い、ふたりの住む街に連れて行ってもらうことになった。
「ほらこれ、上から羽織っておいたほうがいいと思うぞ。そのままじゃ目立つ」
そういってマルセルは自分が羽織っていた茶色の上着を私に渡してくれた。
「ありがとう! お借りします」
私、部屋着だったんだ。そういえば部屋で寝てて起きたらここにいたんだった。あきらかに格好も浮いてるし、街に着いたら服買いたいな————あれ、でもお金ない。スマホも何もない。
森は木々が生い茂り、街までの道も想像していたよりもなだらかで、家でスリッパとして履いていたサンダルでも歩きやすかった。
「アンズはなんであんなところに寝てたんだ。荷物も持ってなかったし、何かに襲われて倒れてるのかと思ったぞ」
「それが私にもよくわからないんだよね。マルセルに声かけてもらうまで気が付かなかったし」
「さっき言ってたニホンから来たのか?」
「うん。そうなんだけど、どうやって来たのかはわからないんだよね」
マルセルが私のことを気にして話かけてくれているのが伝わって嬉しかった。あきらかに不審者なのに優しくしてくれるなんて。ふたりのおかげで少しずつ落ち着いてきた。
しばらく進むと、開けた場所に出た。
「森は抜けられたな。ここから街まであと少しだ。少し休むか?」
「ぼくは大丈夫」
慣れているリュカは全然余裕そうだ。
「私も休まなくて大丈夫だよ」
正直疲れたけど、ふたりが大丈夫ならそのまま進んだほうが良さそう。休みたいけどそれより早く街に着行って状況整理したいんだよね。
「そうか。まあもう少しだから頑張れ」
私たちはまた歩き出した。
森の中よりも平坦な道を歩き、道なりに行くと少しずつ街が見えてきた。
「わーーきれい」
街を見た私は無意識のうちに呟いていた。
目の前にはレンが造りの建物がたくさん並び、いわゆる中世ヨーロッパのようなの街並みが広がっていて、本当に日本じゃない場所にきたことを実感した。
「感動してるところ悪いけど家までもう少し歩くよ」
「頑張って、アンズ」
「あ、ごめん! きれいな街だね」
ふたりに声をかけられて我に帰った。
街に入るとさっきみたレンガの建物がいろいろなお店屋さんなんだと気がついた。お肉や野菜、果物のようなものが店頭に並んでいた。おしゃれな洋服屋さんやよくわからない道具が売っているお店もある。
少し進んだところで小道に入ると、さっきよりも背が低めなかわいい感じの建物が所々に建っている。
「ここだよ」
到着したマルセルとリュカが住む家もレンガ造りのおしゃれな家で、お庭みたいなスペースもあってどこか懐かしさを感じる場所だった。