4.新しい出会い
「もう死んでるんじゃない、近づかないほうがいいよ」
「いや、生きてるぞ。おい、起きろ」
ん——なんか声が聞こえる。気のせいかな。もう少し寝たいな。
そもそも今何時だろう。まだ目を開けたくない私は、手探りでスマホを探した。
「おい! こんなところで寝るな! 起きろって!」
誰かの声とともに体が揺れる。
「もーー! さっきからなに?!」
さすがに目が覚めた。
目を開けるとそこには見慣れない顔があった。茶髪にエメラルドのような瞳。きれいな顔立ちだけど、眉間にシワがよっていて、あきらかに怒っている顔だ。
「えっと……どちら様ですか? なんで私の家に?」
「俺たちは近くの街から来た。この広い森がお前の家なのか」
その言葉に驚いた私は慌てて立ち上がり、辺りを見渡した。どこを見渡しても木しかない。たくさんの緑で生い茂ったこの場所は自然そのものだ。
「ふう……良い空気。落ち着く」
じゃなあーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!
「すみません! ここはどこですか?」
「ここはオルシノンの森。お前はどこから来たんだ」
「あ、すみません。私は杏です。起きたらここにいたので、よくわかっていなくて……」
「アンズ? 変わった名前だな。俺はマルセル。そんであっちにいるのが弟のリュカだ」
そういって指差す先にいたのは私よりも少し小さな男の子。心配そうにこっちを見て立っている。目が合ったので、軽く頭を下げみたけど、何の反応もない。
「あの、日本ってわかりますか」
「ニホン? なんのことだ?」
やっぱりそうだよね。オルシノンの森なんて聞いたことがないし、日本じゃないよね。そもそもマルセルとかリュカとかどこの国の人たちなんだろう。でも言葉は通じてるみたいだし。
状況がまったく理解できず、考えれば考えるほど、頭の中はこんがらがっていった。
「よくわからないが、困ってるなら一緒に街まで行くか?」
「え、いいんですか? ありがとうございます! よろしくお願いします!」
マルセルの提案に即答すると、離れたところにいたリュカが近づいてきた。瞳はマルセルにそっくりなエメラルドで、髪の毛は少し明るくて金髪っぽい。かわいい感じの男の子だ。
「ぼくはリュカ。よろしく」
「リュカくん、はじめまして。私はアンズ。驚かせてごめんなさい。よろしくね」
「リュカクンじゃない。リュカだよ」
「あ! そうだよね。よろしくね、リュカ」
こうして私はよくわからない森で、マルセルとリュカと出会った。