3.気持ちを切り替える
あれ、ここどこだ。考えながら歩いてきたせいで、よくわからない場所に来ていた。周りを見渡すと小さな公園を見つけた。
近くにあった自販機でココアを買ってベンチに座る。スマホをみると時刻は22時を過ぎていた。
こんな夜に私はひとりで何やってるんだろう。
自分で考えたケーキをたくさんの人に食べてもらいたい。
そのために頑張ってきたのに。中途半端にレシピを盗まれて、私のケーキはなかったことにされた。
なにがベリー系のチョコレートだ。
あれはルビーチョコレートを合わせるから良いのに。
良さを奪って勝手に変えちゃうなんて。
思うことも、言いたいこともたくさんある。でも何を言ってもこの事実は変わらないもんね。
この事実をどう受け止めればいいんだろう。
パティシエは辞めたくないけど、お店は辞めようかな。あの店にいたら私のケーキはずっと作れない。
「自分のお店開きたいな〜」
静かな公園に私の声が寂しく響いた。
「お店はじめてみればいいじゃん」
「いや、そんな簡単じゃないよ。そもそも……ん? 誰?!」
慌てて周りを見渡したけど誰もいない。
おかしい。絶対に声聞こえたよ。
疲れすぎて自分に都合のいい声が聞こえちゃったのかな。
さすがにもう帰って寝よ。
私はタクシーを呼んで、そのまま家に帰った。
***
帰宅したのは23時をすぎた頃。私はシャワー浴びて、今後どうするのかを考えていた。
もう心は決まっていた。お店はやめる。
とりあえず明日出勤したときにオーナーに伝えよう。
すぐ辞めたいけど、無理だろうな。いっそのこと、もう来なくていいって言われたほうが楽なんだけどね。
どっちにしても新しい職場は探さないと!
私はパソコンを開いて求人を探し始めた。好条件の求人はなかなかないだろうけど、めげずに探すしかない。
そして、そのままパソコンの前で寝落ちしてしまった。