第二話:破滅のラブレター②
作戦決行となったこの日、火曜日。私は朝からワクワクが止まらなかったことを告白致しましょう。
何となく小走りになった朝の登校をのり越え、いつもより長く感じるほど、だらだらと教鞭をとる教師の一限目を乗り越え、休み時間となったとき。
私は行動に出ました。
上原がトイレに行ったタイミングを見計らって、私はなぎの座席に近づきました。彼女も離席中であることを確認した私は、机の上にほっぽり出されていた彼女の筆箱の下に、偽ラブレターをサッと差し込みました。
心臓はドクンドクンと徐々に速さを増していき、私は楽しみで楽しみで仕方がありません。
上原がトイレから帰ってくるのが待ち遠しい私は、そわそわしだしました。脚をゆすりながら、手は右の人差し指と左の人差し指を激しく交差させてました。
そうして2分ほど経った頃でありましょうか。上原が教室に入ってきました。
「お~い、上原!俺やっちゃった!!」私は彼に慌ただしく声をかけました。
その呼びかけに、上原はそそくさと寄ってきました。
「何を?」と呑気に問いかける彼に、私は続けて話しました。
「なぎの机にラブレター入れちゃった!!」
それを聞いた上原は苦虫を嚙み潰したような表情をしました。
「ふーん……お前のタイプって変わってんのな」間違いなく引いていました。
俺が上原の立場でも、ゾッとしていたと思います。上原は彼女のことが大嫌いだったのです。
しかし、彼は他人事だからかさも興味なさそうでした。
そんな油断しきった彼の頭上に、いよいよ私は爆弾を投げ込みました。
「上原の名義でな!!」
その言葉を聞いたときの彼の表情ときたら。
眉毛は二本の虹が出来上がるほど吊り上がり、目玉は信じられない、といったように
ぱちぱちと瞬きを繰り返します。
そしてまるで魂が抜けたような放心状態の後、彼はガシッと私の両肩を強く掴み、
「オイイイイィィィ!!!」と大声をあげ激しく揺さぶりました。
そして「小林半端ないって!!!」と喚きながらなぎの机に向かって走り始めました。
偽ラブレターの内容をなぎに読まれる前に取り返そうという魂胆でしょう。
取り返されたら私の作戦は失敗です。何としても止めるという確固たる鋼の意思のもと、私は彼の後を追いかけました。
しかし、そこで彼を待ち受けていたのは「うえはらぁ~w」と片手に偽ラブレターをはためかせながら、にやにやと嗤うなぎの姿でありました。
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