第一話:破滅のラブレター①
上原、関口。
彼らと出会ってから3か月ほど経った頃でありましょうか。
私小林は、刺激に飢えていました。全く、退屈で代り映えのない現実です。
いやいやしてきた。もっとこう、ドカーンとワクワクさせてくれるような出来事が起きてほしい。そう思案に更けていた私は、ある名案を思い付いたのです。
しかし、それはワクワクと引きかえに人としての尊厳を失うほどに、姑息なものでありました。
だが、抗えなかった。その先にある光景をどうしても見たかったのです。
上原には悪いが犠牲になってもらおう。
そう決心した私は、授業で使用していたノートから一枚分切り取り、ペンを手に取りました。
当時、私のクラスにはなぎという女子がいました。いっては悪いのですが、これがあまりよろしくない。幼稚で鼻につくような態度に、デリカシーのない言動。その口から出る言葉はまさに電気。ビリビリちくちくと相手を小ばかにする発言には、私小林も辛酸を舐めさせられていたのです。そして、それは友人 上原も同様のようでした。
あぁ、私は何て恐ろしいことを実行しようとしているのだ。私の気分はこの日だけ妙に高揚していました。
ずばり、私は上原を騙ったラブレターをなぎに送り付けようと画策していたのです。彼がおそらく一番なぎのことを、嫌いに感じていました。
しめしめ、これは恐ろしいことになるぞ。私は柄になく興奮しました。
この先の結末を見届けたいと願う気持ちが、私の中に住むデリカシー、モラル云々を外に追い出し、私の身体にドスンと鎮座したのです。
その夜、偽のラブレターを渡す方法、内容を私は家でじっくりと熟考しました。
この時ばかりは罪悪感など微塵も感じることはなく、どうやって成功させようかという燃ゆる使命感、そして、どうなるのかという強烈なる好奇心。ただそれのみが、そこにあったのです。
その翌日作戦を決行する決心を、私は密かにしました。
ご愛読ありがとうございます。