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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
変わる世界
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変化

変わる変わるよ。歴史は変わる。

3話目。

「満州事変から歴史が変わりつつある。熱河事件?熱河作戦では無かったか?しかも、押し込んだはいいが押し返されて支配地域は変わっていない。満州との境界線まで押し戻されたのだ。歴史が変わりつつある?何故だ?」

「おそらく、我々の生きていた世界とは違うのでは無いか?5.15事件も細かく見ると少し様相が違っている」

「我々のような存在が起こした影響かな?」

「では、多少でも良い方向にという思いは無駄なのか?」

「無駄では無い。良い方向に持って行こう」

「そうだな。再びあの惨状を見たくない」

「俺もだ」



 困っていた日本海技術研究所の主要メンバーに思いもよらない所から声が掛かった。海軍だ。海軍と関係は無い。どうしたのだろうと思うと、川崎造船所の重役と共に海軍の偉いさんが訪れた。

 それは、貴社の技術をイギリスに売らないかというものだった。

 返事は後日届けることにし、前向きに検討すると言っておいた。


 いろいろ調べた。官憲に目を付けられない程度に。

 それで分かったことだが。海軍が秘匿技術をイギリスに供与するらしかった。うちの技術も含めれば凄い結果になるだろう。

 海軍が凄い合金技術を持っているというのは噂になっていた。鉄系合金のみのようだが。

 家(日本海技術開発研究所)の技術は燃料噴射装置に関する技術のことだろう。

 確かに合わせれば凄いことになる。今、川崎造船所と提携しているディーゼルや蒸気タービンの重油バーナー装置と海軍の鉄系合金技術が合わされば、機関出力が倍も可能だろう。今は3割増しだ。それでも凄いのだが。

 川崎造船所はバックオーダー多数を抱え、笑いが止まらないらしい。世界恐慌以降の景気低迷にも変わらず、新しい造船所の建設や景気の良くない造船所を買収したりしている。川崎造船所の船を買わないと、輸送効率と燃料代などの経費で負け仕事がなくなる。そんな雰囲気もあった。

 倒産危機もあったのにいい気なものだ。世界大戦の時に造りすぎてなったのを忘れたらしい。最も、その状態を利用して接近したのだが。


 海軍の要請とあっては断り切れない。どうするか。


「良いのではないか。海軍を強化すれば、南方物流危機への対応も可能だろう」

「海軍だぞ。正面装備だけ豪華にして喜ぶんだろ」

「経理としては儲けが増えるので賛成です。トランジスターにいくら掛けていると思うの?」

「申し開きも出来ません。ごめん」

 

 結局、受けることになった。ただし、海軍からも秘匿技術の提供を受けるという条件で。

 勿論お互いに全面的な開示はしない。



 家の秘匿技術は、主に俺と太田の記憶に有る技術がベースになっている。なので今の世では再現不能や理解不能な技術も多い。それは出さないにようにしている。

 今、真剣にこっそりやっているのは半導体のトランジスターだ。トランジスターが不確かな記憶によるものだから、上手く行くわけも無い。しかし、外部に出すわけにはいかない。東北大学から誰か引き込むか?等と話している。最初からシリコンでやろうとしているが、今の技術ではシリコンの純度を出せないし精密加工も無理だった。

 ゲルマニウムなら出来ると思うが、熱耐性を考えると最初からシリコンで行きたい。贅沢だろうか。



 昭和11年。あの事件は起こった。しかし、史実と違うのは、天皇陛下の決意と実行力だった。陸軍が身内をかばう姿勢を見せるやいなや、近衛師団を引き連れ陣頭に立ち賊軍の鎮圧に向かった。

 これで陸軍の面子は地に堕ちた。政治力も激減した。



「また違うぞ」

「どうなるの」

「予測が付かん」

「困ったのう」

「まさか、俺達が触媒なのか」

「思い上がりもはなはだしい」


「なあ、この技術を押さえたいのだが。金を用意できるか」

「なんですか。トランジスターのような金食い虫ですか」

「違う。世界最先端の技術だ。レーダーには絶対必要な技術だ」

「それなら良いでしょう。高くないですよね」

「高くない。八木アンテナは気が付いたら外に出て行ったが、コイツは日本に確保したい」

「良いでしょう」

「良し。スーパー・マグネトロン管確保っと」


「トランジスターだが、シリコンはやはり今の技術では無理だ」

「金ばかり掛かってね」

「…ぅん。それでだ」

「それで?」

「ゲルマニウムでと思う」

「出来るんでしょうね」

「‥多分」

「・・・・」

「出来ます。完成させます。ちょっとどこかを引っ張り込んで」

「目立たないようにね」

「はい」




 イギリスで新型戦艦が着工したという事を海軍経由で聞いた。海軍の合金技術と家の燃料噴射装置(重油バーナー)の技術が合わさって、当初計画に比べると遙かに高性能だそうな。

 日本では初春級失敗が有り、改良型の白露級では無難な設計になっている。ただ、機関には引き続き新技術を使った同じ機関が使われ38ノットという高速力が可能になっていた。航続距離も伸びている。失敗したのは、用兵側のごり押しと受け入れた造船側双方の責任だという。機関の責任は無いと。

 

 初春級の機関運転結果を見て、近代化改装する各艦に新型重油バーナー採用が決まった。

 妙高級4隻は機関の小型化と高出力化が同時に実現し、バルジ装着などで増えた排水量と抵抗にも関わらず35ノット発揮が可能になった。航続距離も1万海里まで伸びた。

 高雄級4隻は、船体は通常だったが装甲は当初より超合金であった。しかし機関への応用に時間が掛かり船体同様通常の機関だった。機関換装で35ノットを発揮。航続距離も1万海里と伸びた。

 青葉級と古鷹級の4隻も同様である。

 

 戦艦は扶桑級第2次近代化改装に家の技術は間に合わなかった。しかし、後日ドック入りの際バーナーを新型に交換。海軍の合金技術でボイラー・主機とも高性能になっており、速力は25ノットを発揮していた。バーナーを新型に変えた効果で燃料消費量がかなり減った上に1ノット増速できた。26ノットになった。

 伊勢級は間に合い、速力が27ノットまで向上した。 

 長門級は扶桑級同様で、近代化改装後のドック入りした際に扶桑と同じ措置を受け28ノット発揮が可能になった。

 戦艦で装甲の積み増しを行ったが、新型合金であり従来よりも強固だそうだ。


 空母は赤城・加賀とも近代化改装間に合い、赤城が32ノット、加賀が30ノット発揮可能になった。

 蒼龍・飛龍は元々装甲を含む船体と機関には新型合金が採用されており。機関の改修はドック入りの際に重油バーナーを交換したのみ。それでも速力で1ノットと航続距離が推定で1000海里程伸びたらしい。


 駆逐艦は初春級以前の各艦は、バーナーを交換したのみだった。缶が従来の材質であり蒸気温度と蒸気圧は変わらない。燃費が良くなり航続距離は伸びている。

 5500トン級は長良以降の各艦が近代化改装対象となり、機関の換装他改装された。長良以前のいわゆる前期型は大井と北上を除き兵装や機関を減らして練習艦となった。機関は重油専焼缶を残しバーナーを新型に交換した。15ノットも出ない艦になった。




「喜べ。トランジスターとダイオードが実用化できそうだ」

「海軍さんの隠し球か」

「凄かった。まさか地球外生命体とコンピューターとは思わなかった。バベル二世かよ。こちらに技術のとっかかりがないと情報や設備を開示しないそうだが、トランジスターとダイオードは認められたよ」

「重油バーナーやディーゼル用燃料噴射装置のおかげだな」

「うんうん」

「今度は航空機用と車両用でやってくれと言うが、航空機用だよな」

「戦車ならやってるだろ」

「場所を取り過ぎて使えんと文句を言われて流れたがな。小型自動車用は、TTLなどのICが作れないと大きさ的に積む場所が無い。無理だ」



 1936年

 トランジスターとダイオードの製造始まる


史実とズレが大きくなって来ました。

兵器や歴史を捏造するのは楽しい。グッヘッヘ

7月23日現在、8月05日まで投稿予約済み。チキン投稿の時期がやってきました。

投稿は間に合うのか。何故全話書き上げてから投稿しないんだ。自分でも不思議ですね。

次回更新 7月24日 05:00

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