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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
53/56

マリアナ沖海戦 幸運は続かない

 ランドルフに命中した2発は、江草隊の2発だった。8機で突入する予定が、邀撃で1機墜とされ、対空砲火で2機墜とされた。

 1発は機関区上部装甲板を貫通。後部機械室を破壊した。1発は艦尾に命中。舵機室で爆発。舵機故障となった。


 ランドルフはまだ運が良かった。

 フランクリンは上部装甲を貫通し前部ガソリンタンク内で爆発。ガソリンが誘爆し艦は爆発炎上している。上級士官のほとんどがやられてしまったために、各自判断で脱出している。

 ハンコックは1発が艦首艦底まで届いて爆発。浸水が止まらず、大きく艦首を沈めている。

 レキシントンは、1発が後部缶室で爆発。ボイラーが破裂し沈んだ。轟沈に近い。

 ベロー・ウッドは2発を受け転覆した。

 アラスカは左舷両用砲数基を吹き飛ばされ、両用砲用弾薬が誘爆し今なお燃えている。

 アレン・M・サムナーは見えない。


 突入した急降下爆撃機は80機と推定された。そのうち投弾した機体が60機前後。10発前後の命中と見られた。問題は奴らの爆弾だ。これまでの500ポンドから1000ポンドクラスとは違う。桁違いの威力だ。

 一瞬で空母の数が半分になってしまった。





 アメリカ海軍42任務部隊が不幸に見舞われてから少し後。

 第一機動艦隊も不幸になった。珊瑚海、ミッドウェーと続いた幸運は尽きた。





「敵編隊依然として接近中。方位60。距離20海里。推定機数300機から400機。高度3000。速度180ノット変わらず」

「前衛の分遣隊は無視されたか」

「脅威度はこちらの方が高いですから、まともな指揮官なら。ただ三式弾はかなり効果を上げたようです」

「敵編隊に撃ち込めれば効果が高いという前提で前提通りか」

「そういう兵器は少ないんですが」

「何回撃てたか聞いたか」

「2回です」

「2回か。まあそんなものだろう。分散されたのだな」

「そうらしいです」

「直衛機第2陣迎撃開始」

「直衛機3陣も続けて向かわせろ。本隊の上空援護は特設空母の戦闘機隊に任せる。補用機の組み立ては中止。発艦準備できた機体だけ上げる」


 第2次攻撃隊が発艦を開始するという時に接近する敵編隊を確認した。第2次攻撃隊はそのまま発艦。

 残った戦闘機隊で守ることになった。後方から50機呼び寄せたが、合計で200機程度。それで一杯だ。

 ミッドウェーは近かったから編隊をまとめて大集団としたが、距離が少し開いているので今回は普通に2回となった。

 盾よりも矛を取ったが、どう出るか。



 

 第1次攻撃隊司令のマーク・シュミット中佐は驚いた。唖然としたというのが正解だ。

 戦艦部隊から10マイル離れて通過しようとした。高度1万フィート距離10マイルまで届く対空砲は無い。

 無いはずだった。

 戦艦が発砲したという報告に「悔し紛れだろう」と思った。

 まさか、編隊の中で爆発するとは。対空弾ではないか。

 とっさに「散開」と叫んだが、それが良かったのだろう。もう1回発砲したが、損害は無かった。

 それでも20機が撃墜され、34機が損傷で帰還を余儀なくされた。戦艦部隊を通過する前にも戦闘機の迎撃を受け20機程度減っていた。まだ300機以上いる。必ず成功させる。




「左舷前方雷撃機4機。投雷」

「舵このまま」


 今更舵を切っても間に合わない。このまま面舵で逃げる。加賀艦長はそう考えた。飛行甲板は敵弾2発を受け空母としての能力を失った。だが船としての能力を失った訳ではない。


「雷跡4近い」

「1本前方を通過。3本当たります!」

「衝撃に備え」


 酷い衝撃と轟音が3回続いた。


「左舷被雷3」

「舵戻せ。機関前進原速。右舷注水」

「戻ーせー」


 気持ち左舷に傾いている。


『艦長。機関室です。左舷缶室に浸水。止まりません。左舷缶室放棄します』

「機関長か。艦長だ。左舷缶室は無理か」

『復旧はおそらく不能です』

「分かった。機関長の判断を認める」

『ありがとうございます』



「やられたな」

「酷いものです」

「翔鶴はどうした」

「翔鶴は沈むことはないと言うことですが、いかんせん推進器2基が吹き飛ばされています」

「加賀に総員退艦命令出ました」

「加賀か」

「傾斜が止まらないそうです」


 一機艦の損害は、

喪失

加賀 雲龍 秋月 葉月 天雲 初夏

大破

翔鶴 瑞鶴 赤城 清月

中破 

青龍 初秋 宵月


 雲龍は片舷に4本被雷し転覆した。秋月は狙われていた。空母直衛駆逐艦を狙ってきた。翔鶴は飛行甲板に3発命中、艦尾に2本被雷。艦尾の2本は推進器2基を吹き飛ばし、大量の浸水も発生した。赤城は装甲甲板が爆弾被害を防いだが、魚雷3本を受け傾斜してノロノロと進んでいる。瑞鶴は飛行甲板後部に1発命中と魚雷2本を中央部に被雷。青龍は爆弾2発で発着艦不能。

 超合金使用艦の打たれ強さは相当だ。



「分遣隊からです。水雷戦隊と巡洋艦を合流されたい」

「どうするかな」

「敵上陸船団が近いです。補足可能と考えているのでしょう」

「艦載機も多数失った。空母は半分だ。後はやってもらうか」

「では」

「行ける艦は全て付けてやれ。我々は後方に下がる」


 第2次攻撃隊は成功しなかった。

 第2次攻撃隊が敵艦隊に突入するのは困難だった。400機近い戦闘機が待ち構えていた。第2次攻撃隊250機中戦闘機120機では対抗できなかった。十数機が攻撃したが命中はわずかだった。

 後は託そう。マリアナを守れば勝ちだ。


次回更新  9月02日 05:00

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