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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
52/56

マリアナ沖海戦

 途中で敵索敵機と遭遇し電波を出されてしまったが、順調に敵艦隊に向かっている。一〇〇式司令部偵察機四型が電波を出してくれているので迷う事もない。

 敵も攻撃隊を発艦させているとのことだ。




「あいつを墜とせないのか」

「F4Uよりも高高度性能が良く戦闘機隊では無理です」

「砲術はどうか」

「3万4000フィートを維持して艦隊外周を旋回しています。こちらの射程外を飛んでいるのでマジックヒューズと言えども」

「クソッ」

「攻撃隊隊発艦準備完了」

「発艦始め」

「発艦始めます」


「ピケット艦アンソニーより入電「敵編隊探知。方位220。距離110マイル。速度250マイルにて接近中。推定機数300機以上」」

「直衛戦闘機隊を向かわせろ。我々がやったようにファイタースイープかも知れん。注意するようにと」

「直衛戦闘機隊第2陣発艦始め」

「後方には上空直衛機の要請は出してあるな」

「有ります。120機が急行中。100機を追加で出すそうです」

「そうだな。向こうも直衛機を残していないといかないからそのくらいか」

「レーダーに反応。速度、方位とも先ほどアンソニーから報告のあった編隊と思われます」

「戦艦戦隊をどうするのかな」

「キャラガン中将より「俺たちを無視してそちらへ行った」です」

「無視されたか」

「現代の主力艦は空母ですから」

「昨日の砲撃は凄まじかった。あれこそが海戦の主役だったのにな」

「空母も主役を降りる時代が来るのでしょうか」

「有るかもな」




 一機艦の第1次攻撃隊は遠距離邀撃に悩まされていた。追い払っても追い払っても、きりがない。

 第1次攻撃隊隊長、江草中佐はそう思った。

 こちらがやったようにレーダー誘導でチビチビとやってくる。だんだん戦闘機が減っている。

 350機中250機を戦闘機とした。100機は期待の流星。しかし、すでに戦闘機50機が引き剥がされ、まだ前には敵戦闘機の編隊がいくつかある。

 

「あと20海里です」

「全機増速。280ノットまで上げる」


 280ノットは80番を抱いた流星の全速に近い。流星は全機80番通常を抱いている。1発当たれば大抵の艦は大損害になるだろう。爆弾にも超合金が使われるようになり乙種を使う。弾体の硬さは十分とみられていたが、敵艦の損害が想定以下なのを研究した結果、装甲板を貫通せずに表面で破砕してしまう弾体が確認され超合金を使うようになった。どうせなら硬いのを使おうと乙種になった。これまでは普通の鉄系合金だった。


 信号弾が見えた。あの下か。


「全機突撃せよ。目標、一空母、二空母、三空母だ。忘れるな。多方位同時突入だ。逃げられたら、やり直さず適当な奴にぶつけてこい」

「斉藤一飛曹。ト連装だ」

「了解」


 今度の弾はひと味違うぜ。喰らって驚くなよ。機体自体にも新機能が採用されている。





「敵爆撃機、戦闘機隊を突破。高度1万8000フィート。速度330マイル」

「急降下か」

「高度が高いですが」

「航空参謀、どう考える」

「ジュディと同じ速度ですが、突入高度が高い。しかし、あの隙間の多い編隊の組み方で水平爆撃は無いと思います。あの高度から高速で降下してくると思われます」

「回避は難しいか」

「速い分難しいと思われます」

「艦隊。回避自由」

「全艦回避自由。Let's dance」

「艦長はどこだ」

「先ほど防空指揮所へ上がりました」

「そうだったな。タイムラグがあるから遅くなるとか言っていたな」




 選び放題だ。遅いのは何奴どいつだ。俺は早いのをやる。

 周囲では激しい爆炎が爆ぜている。恐ろしい精度だ。


「斉藤一飛曹。やるぞ。高機動服作動」

「高機動服作動します。用意、


 体が締め付けられて少し苦しい。嫌だが、これで思いっきり引きつけることが出来る。

 試作品で完全ではないが「無いよりはかなりまし」と言うのが搭乗員たちからの評価だ。流星全機は最初から、旋風や疾風には改良型から装備されている。


「斉藤一飛曹。付いてきているか」

「6機追従中」

「よし、行くぞ。斉藤一飛曹。前向け」

「了解」


 機体を捻り機首を下げる。




「敵機来ます。6機」

「面舵用意」

「面舵用意、サー」

「急降下」

「面舵一杯」

「面舵一杯、サー」




 あいつ、面舵か。やはり大和ほど小回りは効かないな。前回もやれた。今回もやる。


「大村少尉機。爆散」

「了解」


 もっと深くだ。


「1500」

「1200」

「1000」

「800」

「600」


 600の読み上げと同時に赤ランプが点く。


ッ」


 操縦桿を引き付ける。機速は350ノットを超えている。高機動服に締め付けられる。高度50で水平になる。もっと高度を下げないと。高機動服の締め付けが緩み、ほっとする。


「命中です。続いて命中。2発命中」

「全機無事か」

「4機追従中」

「そうか」


 特製の80番だ。今頃敵艦はどうなっているやら。




『1機撃墜』

『1機撃墜』


 歓声が上がる。残りは4機か。


『敵機投弾』


 振動がCICを襲う。当たったか。もう1回だと。


「損害確認急げ」

「レーダー。敵機はまだいるか」

「本艦を狙っている敵機はいない模様」

「舵戻せ」

「アイアイ、舵戻せ」

「艦長!舵故障。戻せません」

「何だと!」

『艦橋見張りです。被弾は後部に2発。火災発生』

「応急長は『こちら機関室。機械室に被弾。主機2基損傷』主機だ?」

「機関長。状況はどうか」

「機械室の装甲が破られました。浸水はありません。左舷主機が2基とも損傷。左舷は2軸とも動きません。排水ポンプ1基運転不能です。現在、蒸気放出中。人員は救助中」

「了解した」

『艦長。応急長。火災が激しく、舵取り機室に接近出ません』

「消火に全力を尽くせ。浸水はしていない。ただ、排水ポンプが1基動かん」

『アイサー』


 面舵一杯で固定された舵。動くのは右舷機のみ。停止した方が良いが、敵の2次攻撃があった場合はいい的だな。


「右舷機。前進半速」

「右舷機。前進半速」


 舵故障とは憑いてない。空母ランドルフ艦長は思った。



次回更新 9月01日 05:00

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