前世
転生者登場
2話目
学制についてご指摘をいただいたので、書き換えています。
ストーリーには関係ありません。
俺は飯野適斗
良いか?[てきと]と読め。てきとー等と読むなよ。悪友達はテキトーと呼ぶが。適材の適に北斗七星の斗だ。胸に七つの傷は無い。
俺が生まれたのは、明治32年。前世の記憶が蘇ったのは、尋常小学校3年の秋。登るなと言われていた柿の木は、生り年でよく実がなっていた。色づけば美味しい。カラスにつつかれる前に食うのだ。
ボキ
折れたがな。柿の木は弱い。
いい歳したおっさん共は登るなよ。確実に折れるからな。
落ちた。痛い。額の向こう傷は、地面と戦って付いた名誉の傷だ。顔よりも柿を守るという、アホなことをしたのだ。散々怒られたのは記憶から消去する。帰省するたびに「お前が折った柿の木は、アレで枯れてしまった」と言われる。俺の記憶には無いことを思い出させるな。
それから俺の怪進撃が始まった。中の下だった成績が雨後の竹の子とまではいかないが、ニョキニョキと。高等尋常小学校にも行けた。それ以上は、経済状況がよろしくない。実家のだ。
未来知識でリバーシをと思うが、多分目立つ。それも良くない。
各種交渉の結果、高等学校(旧制高等学校)受験で合格すれば、地元名士に学費や生活費を援助して貰えることとなり頑張った。前世の記憶から勉強を絞り出し知恵熱も出た。
結果、見事合格。経済支援をして貰えることとなった。地元の期待に応えるには、帝大に入ることだな。
この時点で、海軍兵学校や陸軍士官学校も期待されたが、前世の記憶がある以上、死地に向かうのは嫌だった。俺ひとりが頑張っても歴史の大筋は変わらないだろう。だから、前世で機械好きで若干?のミリオタだった俺が取る道は、民間会社の偉いさんになって生き延びることだ。仕事は化学関連会社の現場勤務だったがな。
なので東京帝大は外せない。頑張った。いくら前世の記憶があるとは言え、前世の俺は平凡な成績しか取れていなかった。学友達は苦学生も多いがボンボンも多い。けれども皆優秀だ。地頭も俺よりは良いだろう奴も多い。だが、それでも皆頑張っていた。彼ら以上の頑張りが無いと東京帝大は無理だ。
現実は厳しかった。東京帝大は無理と言われ他の受験生を見ても自分よりも上と思える。他に受かりそうな大学を受験し受かったので、そちらに入学する。それでもギリギリだったわけだが。
前世で成績が並級だった人間の転成者ボーナスなど、本物の秀才や努力家の前にはさして役に立たないことが分かった。
浪人する金など無い。援助先からも「浪人不可。現役合格なら学費を出してやる」と言われていた。
それでも、大学に現役合格し留年も無く無事卒業した。学生時代には、未来記憶による特許を取得。学生発明家の登場だ。特許申請料は援助先に出して貰った。特許と言っても、目立つものでは無い。コレが有ったら便利だなくらいの特許だ。
卒業したものの、希望就職先である三菱重工には袖にされ、第4希望くらいだった企業に就職。特許取得の実績を三菱は評価しなかったようだ。それはもっともか。三菱の業績に結びつきそうな特許でもないしな。帝大出で無いとかなり無理らしく、希望が難関の航空機部門だったせいも有るかも知れなかった。
その企業でいくつかの重要な開発を行い、ちょっと揉めたが退職。揉めたのは「止めないでくれ、給料は増やすから」「いや、好き勝手やりたくなったので。仲間達と会社立ち上げます」だった。
経営に口出ししないことを条件に、その企業からの出資を多大に受け退職。仲間達と企業を立ち上げた。
俺の主な仲間達。
当然、日本海技術開発研究所の重鎮である。
俺事、飯野適斗 30才 前世 昭和32年生まれ
金田香音 30才 昭和33年生まれ
中井幸司 33才 昭和38年生まれ
太田昭博 35才 昭和23年生まれ
斉藤一 30才 大正元年生まれ
袴田才蔵 34才 大正5年生まれ
鶴田浩一 22才 大正11年生まれ
金田香音は女性。なんと前世では2級簿記と言う資格を持っていた。勿論経理担当。
香音は「かね」とも読めるねと言うと、止メレと言われる。前世ではちょうどあの頃貯金に目覚めカネゴンと言われたそうな。
「料理は得意だったのよ」と言うが、あの人がいるからね。
中井浩二は、体操が得意。前世では社会人チームでやっていたがレギュラーには成れなかったと。
今世では、前世の経験を生かし土木建築分野で活動している。具体的には会社社屋の設計から建設まで関わって、この時代にしては結構進んだ構造の会社建屋になった。
太田昭博は、飯が美味い。金田が反則だという程の腕前を持つ。趣味でやっていて、前世で現役を引退した後は自分で店を出したそうだ。
前世では司法書士をやっていたそうで、交渉はおまかせの部分が有る。
斉藤一は、剣道が得意。名は体を表すか。親が新撰組関係者で斉藤だから一と名付けられたという。
前世でもやっていて、県大会で3回戦くらいまで行ける腕前だったと。戦前戦後と警察官だったそうだ。
色々警察の裏表を知っており、重要な技術が眠る当社の警備担当で有る。
袴田才蔵は、前世陸軍士官だったが、ビルマで病死。何としてもあの惨事を変えようと、再び陸軍士官になったそうな。しかし陸軍士官だったが体を壊し退官。夢は潰えた。この会社で少しでも変えることが出来ればと言っている。鶴田と並び一番切実な人だ。
鶴田浩一は、前世では予科練上がりの搭乗員だった。ただ最後は特攻だったという。絶対に阻止すべく軍人になろうとしたが、身体検査に通らず泣く泣く断念。切っ掛けが有り当社に参加。
身体検査で落ちた理由は、骨折治療後、腕の可動範囲が狭くなっていたことだった。左腕が横方向は肩から上に上がらないということだった。これは軍の徴兵検査でも落とされるという。
我が社では、貴重な搭乗員として飛行機の操縦資格を取って貰うつもりだ。
戦後生まれと成人で戦争体験者が混じっている。当然、戦後生まれには戦争体験を聞かされても完全に理解は出来ない。
ただ、日本を多少でもマシな負け方に持って行こうという考えは同じだった。
この時点で全員が対米戦不可避と思っている。
既に満州事変は起きた。しかし、事変が始まった後の経過が今まで知っている歴史と違う。今までは知っている歴史にに沿って色々な事象が起きていた。自然災害も戦争など国際関係もだ。だからそれを利用して優位に立ち回れた。ウォール街を震源とした世界恐慌も利用できた。
これはどういう意味だろうか。
次回更新 7月23日 07:00