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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
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フィリピン

 バリクパパンに拠点を築いたアメリカの次の目標は、フィリピンだろう。通商破壊戦は片手間にしか過ぎないと思われた。

 だが海軍戦力が足りない。ミッドウェーで主力新鋭艦が大量にやられてしまった。フィリピン救援を急がないのは、日本海軍主力に対抗は出来ないからだろう事は事実と考えて良かった。

 日本はアメリカ海軍が19年秋以降に再建してくると予想している。恐ろしいことだ。あの規模を1年も掛からずに再建してくるとは。もちろん建造中だった艦が主力だが、それだけの規模で造船しているのが恐ろしい。

 だが、練度はどうなのだろう。ミッドウェーで大勢戦死したはずだ。そこにつけいる隙があるのかも知れない。


 今から協定を無視してフィリピンを占領しようという声もあるが、戦後のことを考えるとそんな恥知らずなことは出来ない。

 第一陸軍戦力がない。

 アフリカの戦いは終わったが、派遣された陸軍戦力がトルコ方面でソ連の侵攻に備えることになった。トルコは紆余曲折有ったが、イギリス陣営に加担することにしたようだ。もうドイツには侵攻する力はないが、ソ連が問題だ。

 満州は一時的に敵戦力低下が認められるがソ連のことだ、ドイツが弱体化した途端に極東軍事力を増強するだろう。満州の警戒はしておかなければならない。


 国内生産を維持するためにも、極端な徴兵は出来ない。控えめな徴兵だから陸軍の強化はすんなりといかない。控えめな徴兵で生産力と品質を維持してかろうじて対抗できていた。陸軍の大幅な強化と生産力や品質の低下を天秤に掛けることなど出来ない。

 つまり、海軍がアメリカを押さえ続けなければいけない。そんなことは不可能だ。対米戦はどこかで見切りを付けなければいけない。

 その見切りをフィリピンとした。フィリピンに上陸され戦力を展開されては、もう勝ち目などない。


 再びミッドウェーのように勝たなければならなくなった海軍が感じるプレッシャーはすさまじいものがある。もう一回同じ状況になれば、さすがのアメリカも講和の席に着くのではないかと期待もしている。



 19年夏の時点で日本とアメリカは戦力の積み増しに余念がない。


 南シナ海での通商破壊戦は双方とも損害を積み重ねるが終わることがなかった。最近はアメリカも護送空母を投入してくるようになった。機体はF6FとTBFとSB2Cだった。初期は少数の艦載機によ襲撃だったが、特設空母と海防艦や駆潜艇の対空能力が想定以上だったのだろう。損害を積み増ししてからは、少数の艦載機による襲撃はなくなった。


 日本海軍も戦力の積み増しをしているが、アメリカには到底かなわないだろう事は自明の理であった。

 ミッドウェー以降に就役した巡洋艦以上の大型艦は少ない。これは、元々大型艦建造が出来る施設が少ないのと、建艦計画(予算)の都合だった。開戦後に計画された大型艦は懸命に建造しているが、施設の空きを待っての建造開始だから建造開始が遅いことも多い。

 小型艦も対米戦において商船の損害が多いだろうという予測で、商船の造船を増やしていた。しかし、商船は建造量が戦没量を上回っており、船復量は増加する一方だった。これはうれしい誤算だった。途中から商船の建造量を減らし、特設空母と松級駆逐艦、海防艦、駆潜艇の大量建造に切り替えた。

 

 19年の秋が終わる頃になってもアメリカ海軍の動きは鈍かった。準備が終わらないのだろうか。まさか無線を使わずに連絡機でやりとりしているのだろうか。疑問は尽きない。

 長距離偵察でも、ハワイ・オーストラリア方面は警戒厳重で偵察に出した潜水艦の未帰還が目立つ。


 

 そんな中、突然の通信が入った。

 セレベス海の哨戒を行っているロ-56潜から


「セレベス海にて、敵輸送船団見ゆ」


 つに来たかという感じだった。その後ロ-56潜からの追信はなく消息を絶った。

 フィリピン政府と駐留アメリカ軍に問い合わせるが返答なく、フィリピン休戦協定は破棄されたと判断。

 ここに捷1号作戦を発動した。

 アメリカ軍がフィリピンに展開を終えるまでが勝負だった。



 しかし、アメリカの手は多かった。


「発 メジュロ監視隊 電探に機影多数 方位120より接近中」

「我空襲を受く」


 以降の通信は無い。

 パニックになった。


「せっかく発動した捷1号作戦をどうする」

「海軍戦力の全てと言っていい戦力の投入だ。今から中止か」

「とにかく現状把握だ」

「そうだな。偵察だ」


 トラックから二式大艇を出し偵察を行った。

 4機出して偵察出来た機体は1機だけだった。3機は未帰還である。

 その偵察結果は驚愕のものだった。

 メジュロ環礁に大型浮きドック複数と中小浮きドック多数。輸送船多数と護衛艦艇多数というものだった。

 セレベス海でも輸送船多数と護衛艦艇多数だった。これとは別に正規艦隊がいるのだ。本国から遠く離れた海域でこれだけの物量を展開できる。改めてアメリカという国のデタラメぶりが良く分かる。

 

 どうするのか会議は紛糾した。

 フィリピンをやってから返す刀でマーシャルをと言う現実離れした奴もいる。

 結果は、フィリピンが台湾からの空襲と1個航空戦隊で時間を稼ぐ。幸い大規模な機動部隊は付随していない。

 艦隊を向ける本命はマーシャルとした。



次回更新 8月25日 05:00


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