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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
45/56

バリクパパン強襲

 MI作戦は成功裏に終了した。

 敵に与えた損害と、我が方の損害。どう考えても大成功である。

 ミッドウェー海戦は「日本海軍、日本海海戦再び」と称されるほどの大勝利だった。

 一部では講和の足掛かりになるのではと、期待する向きもあった。



 しかし、その大成功を吹き飛ばすような事態が南で起こった。バリクパパン強襲である。

 スラバヤから出航したアメリカ軍がバリクパパンに強襲上陸したのが18年12月16日だった。MI作戦成功で沸き返る海軍部内を一瞬で静かにしてしまった。


 12月に入ってから偵察の成功率が落ち込み、未帰還の一〇〇式司令部偵察機が増えていた。高度1万でも630キロ出せる最新の三型がだ。帰還できた搭乗員からは敵の大型戦闘機が凄く高空性能が良いという。630キロでも追いつかれると。何枚か取れた写真があるが開発時点では開戦前だったのだろう。名称不明だった。

 海軍の彩雲も少数配備されていた。訓練目的で。海軍の手を借りたが、一番性能の出る高度には高速のシコルスキーがいて、数機撃墜された後中止となった。

 スラバヤ上空は偵察機の墓場になりつつあった。

 未帰還機が増えれば対策を取るまで偵察頻度の低下と成功率の低下は如何ともしがたいことだった。

 敵が何か大きな動きを見せるのは確実。しかし、偵察が上手くいかないので概要が分からない。バリクパパンの守備隊司令部は焦る。日本でも焦りの声はある。しかし、防空網が強力すぎて近寄れないのではどうしようもない。

 12月に入ってから空襲の頻度が減っているのも気掛かりだ。


 そして、アメリカ軍の大群がスラバヤからマカッサル海峡を目指しているのが分かったのは12月13日。

 その進路で目標となるのはバリクパパンしかなかった。

 その頃、バリクパパンの守備隊は陸軍2個師団と海軍陸戦隊1個大隊。それに航空部隊。艦艇を沈める攻撃力を持つのは海軍の陸攻と艦爆・艦攻。いずれも豊富なガソリンと広大な訓練空域を使っての錬成部隊だった。腕に不安はある。まともにやれるのは教官くらいだろう。陸軍の重爆は、航行中の艦艇攻撃など訓練でもやったことがなく水平爆撃で爆弾をばらまくだけになりそうだった。

 期待の海軍はミッドウェーに全力でこちらに居る艦艇は対潜艦艇ばかりだった。それでも、サイゴンに居る霧島が急行すると言ってきた。

 その霧島も、アメリカ軍の編成が明らかになると出撃中止となる。


 上空の戦闘機の傘をかいくぐって偵察に成功した一〇〇式司令部偵察機と彩雲によると


 戦艦     8隻

 巡洋艦    8隻

 駆逐艦   26隻

 輸送船   58隻

 小型空母   6隻


 と言う文字通りの大群だった。

 霧島1隻を主力の数隻でどうこうできる相手ではない。

 幸い、敵船団の航海速力が遅く10ノット出ていないと見積もられた。

 バリクパパン守備隊司令部は、入港していたタンカーや貨物船に軍属や民間人を乗せられるだけ乗せて緊急出航させた。対潜艦艇(海防艦・駆潜艇)が護衛に付き、行き先はパラオだ。

 航空部隊も錬成中の訓練生を詰め込めるだけ詰めた輸送機や重爆をマクノワリに飛ばす。護衛は錬成中の戦闘機が付く。航続距離に余裕のある海軍の陸攻はパラオまで飛んだ。

 海軍の陸攻と艦爆・艦攻は、ほとんどが訓練用の九七艦攻と九九艦爆であり、新鋭の彗星と天山は少数だった。陸攻などは九六中攻もいるくらいだ。

 結局、陸軍海軍とも戦闘機以外でマクノワリまで飛べる機体全てを退避させた。

 

 海軍中枢は慌てた。アメリ海軍の主力もミッドウェーに全力を挙げており、他で行動を起こすとは思わなかった。

 旧式戦艦は後詰めでハワイや西海岸に居るとばかり考えていたのだ。この艦隊の主力艦は旧式艦がほとんどだったが、それでも数の威力がある。

 海軍は素直にバリクパパン防衛は無理であると陸軍に打ち明けた。


 陸軍首脳部は考えた。海軍が無理というなら、孤立しているバリクパパンの維持など不可能だろうと。

 それでも強硬に死守を主張する者が居た。ではおまえ、今からバリクパパンに向かえ。何も言わずにだんまりを決めた。

 その間にも近づく敵船団。14日早朝から大規模な空襲が繰り返された。迎撃はするものの回数が多く、補給のための着陸後に襲来する。地上で撃破される機数も増え、15日には遂に稼働機ゼロとなり飛行場も破壊された。


 陸軍首脳部は「誠に無念なるが、反撃のための戦力無し。現地で最良の結果を考えるべし」と、判断を現地に放り投げた。



 12月16日 早朝

 艦砲射撃が始まった。陸軍の重砲など比べものにならない。


 12月16日 正午

 艦艇と艦載機の援護の下、上陸が始まる。一部で重砲や野砲の反撃があったが、あっという間に叩き潰された。


 12月16日 夕方

 市街地で歩兵戦があるが、戦車まで持ち出している相手にはかなわない。



 バリクパパン守備隊では、山岳に引いて反撃機会を待とうと言う声と後方破壊活動に専念すべしと言う声もあったが、山岳は熱帯雨林のジャングルで食べられる植物は少なく、水も水量は有るものの必ず煮沸濾過しないと危険な水だった。爆撃で倉庫がいくつか潰され、保存食携行食など補給品の数が減っているのも痛い。

 見捨てられているバリクパパン守備隊が選んだのは



 白旗を揚げた軍使を出すことだった。



 12月16日 深夜


 バリクパパン陥落


もっと粘ると思うのですが、物語上すぐに白旗を揚げます。


次回更新 8月23日 05:00

8月21日22日の更新は有りません。



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