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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
41/56

MI作戦 弾幕

 攻撃隊の旋風と彗星が敵迎撃網を突破したときには、混乱した陣形が見えた。

 旋風は敵新型艦上戦闘機よりも優速で有利に立ち回れたが、彗星の護衛もあり自由自在とは行かなかった。

 100機近いと思われた敵迎撃網を抜けたときには、旋風82機・彗星58機が旋風59機・彗星41機まで減っている。


「彗星隊全機。江草だ。多方位同時進入だ。訓練のようにやれ。目標は空母だ。掛かれ」

『『『了解!』』』


 俺は位置的に難しい奴だな。




『上空敵機、あれは…急降下!急降下来ます!』

「全艦回避自由」

「撃て。撃ちまくれ」




「新藤500だ。行くぞ。読み上げ開始」

『了解』


 江草は高度4000から左へ捻りながら降下していく。周囲には対空砲火の圏内だろうが敵戦闘機が居る。命令無視をしているのか、頭に血が上っているのか。どちらにしても厄介だが。旋風が相手をしてくれる。

 敵の対空砲火が上がってくる。OPLの中の飛行甲板が迫ってくる。

 クソ、右へ舵を切っている。少し右へ滑らせる。


『3000』


『2500』


『2000』


 まだ足りない。降下角を深くする。ぶっとい火の棒も通り過ぎていく。見えた。艦橋の前方海面がOPLの中心だ。これなら逃がさん。


『1500』


『1000』

『900』

『800』

『700』

『600』


 ここだ。 「てっ」『500』 投弾し引き機体を引き起こす。


『命中!命中です』

『続いて命中!』

「そうか」


 何機投弾したのか知らないが、2発命中か。50番だ。きついだろうな。今はとにかく高度を上げずに全速で逃げる。



 江草はやってくれたか。さすが艦爆の神様だ。煙を上げてのたうち回る敵艦が見える。

 第二次攻撃隊というか、旋風全機と彗星58機を抜いた残りだ。それを敵は100機を超える戦闘機で迎撃してきた。

 戦闘機隊は奮闘したが、100機では阻止は出来なかった。数十機の敵戦闘機に翻弄され手痛い損害を負った。おそらく50機以上の損害だろう。江草の爆撃隊を護衛していた旋風がやってくるが、敵戦闘機もやってくる。

 乱戦としか言い様がない。さらに損害が増えるだろう。何機投雷出来るのか。


 この時点で村田指揮下に残っているのは、零戦68機、彗星53機、天山72機。だが総隊長も村田も正確な機数は知らない。


『一航戦は手前の無傷とみられる空母2隻』

『四航戦と翔鶴雷撃隊は十一時方向で炎上中の空母3隻』

『蒼龍隊、瑞鶴雷撃隊は二時方向で炎上中の空母2隻』

『空母は大型を狙え。無理なら小型でも良い』


 総隊長から指示が来る。敵は3個機動部隊を編成していた。機数に余裕のある一航戦は無傷の奴を充てたか。


「各隊、目標は聞いたな。空母が最優先だが、射点の確保が出来なかった時は無理に狙うな。目の前の奴をやれ。高度を低く取れ。対空砲火に食われるぞ。帰投後、もう1回機会はあるはずだ。絶対に帰れ。いいな。では掛かれ」

『『『『了解』』』』


 上空は彗星が突進していく。

 俺の一航戦攻撃隊は手前の空母だ。

 空母の横に張り付いている巡洋艦がものすごい弾幕を張っている。クリーブランド級か。


「彗星隊は空母と巡洋艦をやれ。雷爆同時攻撃が理想だが、この弾幕ではそうも言っていられん。やれる奴からやれ」


 速度差から彗星が先に投弾した。程好い時間差が出来た。良し。命中が4発か。


『空母1隻に3発命中。1隻に至近弾。巡洋艦に2発命中』


 レシーバーから聞こえる声は落ち着いている。誰だろうか。しかし5発だったのか。


『大型空母1隻と小型空母1隻は攻撃失敗』


 上手くはいかんな。

 目の前には無傷らしい大型空母とそれを守るように巡洋艦がいる。拙いことに舵を切ってこちらへ正対しようとしている。

 今更突入やり直しは出来ない。針路を変えても射点にはつけんだろう。残念だが、あいつらは後続に任せる。ただ舵を切って傾斜している。あそこは対空砲火が届かない。


「鈴木二曹、何機付いてきた」

『4機です』

「上等だ」


 目標は煙を噴いている巡洋艦だ。空母には届かん。

 弾幕がきつい。高度を下げられるだけ下げている。これはきつい。


『中村機、墜落』

 

 4機になったか。4本ともぶつけてやる。巡洋艦は舵を切っている。だが、巡洋艦がこちらを向くよりも先に命中させる。


「用意、テッ

テッ

『木下機、投雷後海面に!』


 舵を押さえすぎたか。ほんの少しのミスで海面なのはこちらも同じだ。


『命中。続いて命中』


 2本か。4本当てるつもりだったが。今は浮かれていると海面だ。気を引き締めねば。

 敵艦隊から十分離れてから高度を上げる。周辺に零戦が見える。ありがたい。周囲を見ると、爆炎も見えない。どうやら終わったようだ。帰って降りられる飛行甲板が有ればいいが。





 クリーブランド級巡洋艦コロンビアは4本投雷された魚雷の内2本はかわせた。しかし、2本が届いた。

 艦首で水柱が上がり、激しい衝撃が2回艦を揺する。


「舵戻せ」

「アイ」

「機関後進だ」

「アイアイ」

「応急班は艦首水線下へ急げ」


 拙いところに2本も当てられたか。


『こちら前部弾火薬庫。CIC。応答せよ』

「CIC、艦長だ」

『今の衝撃で浸水が有ります。止まりません。応急要員を』

「今送る」

「応急長、前部弾火薬庫浸水。人員を割け」

『応急長、了解』


 駄目かな。先ほどの急降下爆撃の1発で4番砲塔が爆砕され、弾火薬庫に注水している。もう1発は艦尾に命中。艦内で爆発した上にカタパルトとクレーンなど航空艤装を吹き飛ばした。艦尾船体に損傷でそこからも浸水している。持たないかも知れない。





 一機艦が息災な訳も無かった。災厄は平等に襲いかかる。


「左舷雷撃機複数」

「取舵用意」

「取舵用意ヨーソロ」

「雷撃機目標は本艦の模様」

「取舵一杯、急げ」

「取舵一杯ヨーソロ」


「敵機投雷」

「雷跡3本近づく」

「雷跡近い。当たります」


 ドーン。激しい衝撃で被雷を知る。1本で良かった。


「翔鶴に敵機突入!」

「何?」

「翔鶴被雷。2本です」


 翔鶴は心配だが先にこの船だ。本艦蒼龍は機関室横に被雷1。爆撃は回避した。報告によると、機関室に浸水無しとのこと。隔壁はしっかりしていると言う。左舷の浸水により、右舷に注水。バランスを取る。命中で吹き上がった水柱で、左舷機銃座が2カ所損壊した。当然乗組員もやられた。




次回更新 8月18日 05:00

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