MI作戦 発艦
18年12月08日 黎明
「発艦始め」
各空母はすでに風に立ち第五戦速で疾駆している。後方に下がっている六航戦は本隊の直衛機のみなので発艦はない。四航戦は速力が合わないために他の所から発艦している。
赤城飛行甲板では天山が発艦体制に入っている。
「滑走具接続確認良し」 青旗が上がる。
「牽引索接続確認良し」 黄旗が上がる。
「空気圧、油圧とも正常」 緑旗が上がる。
「射出機軌条、滑走甲板異常なし」 橙旗が上がる。
「搭乗員確認良し」 緑旗が上がる。
天山の周囲から人影が消える。
「機付き員、甲板員退避良し」 黒旗が上がる。
発艦士官の白旗が下がれば発艦だ。
「射出」 白旗が下げられた。
うなり音と共に全開にした火星発動機の爆音が飛び出していく。
すでに戦闘機隊は自力発艦で飛び立った。彗星も自力発艦をした。天山は重かった。魚雷装備でも手練れは自力発艦もこなせるが、若は見ていて不安(首脳陣が)と言うことで射出機使用となった。
赤城は、珊瑚海海戦での損傷復旧の時に2段格納庫を止め1段格納庫になった。時間節約のためだ。ただ、飛行甲板は甲種装甲板30ミリで90ミリ厚相当の装甲を持つ装甲空母になった。
搭載機数は減ったものの射出機の装備もあり、最新鋭装甲空母尾張に劣るものではないと乗組員は思っている。
攻撃隊は、ミッドウェー基地ではなく、昨日発見された機動部隊に向かっている。夜明け前と言うよりも午前3時に発艦した彩雲が見事敵艦隊を発見したのだった。幸い、まだ一機艦は見つかっていない。だが200海里という至近距離ではすぐに見つかるだろう。
敵機動部隊もミッドウェー基地も攻撃隊は出すだろう。六航戦が迎撃することになっている。ミッドウェー基地からの攻撃隊なら迎撃可能だ。だが、敵機動部隊からの攻撃隊を四航戦と六航戦で防ぐのは無理だろう。だから敵がこちらの位置を特定する前に敵最大戦力を叩く。
複数張り付かせている彩雲は迎撃と対空砲火が厳しく近づけないようだ。が、それでもできるだけ観測した敵の状態が次々入ってくる。
「Fuck。なんてことだ。先に見つかったか。こっちはまだか」
「まだです」
「参謀長。見つけるのと、敵がやってくるのはどちらが早いと思う」
「やってくる方ですな。下手すると発艦作業中にやってくる可能性もあります」
「どうするか」
「索敵機より入電『敵戦艦部隊発見。方位***位置****・*****。速力28ノットで航行中』」
「戦艦か」
「拙いですね、近いです。しかも速いし、こちらを目指している」
「だがまだ40マイル以上有る」
「攻撃隊出しますか」
「おまえは俺に馬鹿になれというのか。戦艦相手ならこちらにも戦艦が居る。攻撃隊の目標は空母だ」
「確認しただけです。発艦させようとしたら止めていました」
「悪いな」
「いえ、参謀長としての務めです」
珊瑚海の時は、攻撃隊を出した残りの直衛機では敵の攻撃を防ぎきることが出来なかった。そしてあの大損害だ。
う~ん。今は無理をするときでは無いか。ここを耐えれば、奴らにはもう後がない。そうするか。
「参謀長。攻撃隊は出さない。攻撃装備は全て戻せ。戦闘機は全力で出撃させ艦隊防空に当たらせる」
「よろしいのですか」
「かまわない。今をしのげば、奴らに後はない。最終的に勝てば良い」
「了解しました」
この決定で艦隊に戦闘機380機の傘が出来ることが確定した。
が、10分後。
『迎撃を受ける。位置****・****』
「そんな近いところか!攻撃隊、攻撃装備取り外しの命令は取り消し。取り外していない機体だけで攻撃隊編成。大至急、発艦せよ」
「司令長官!」
「見つけた以上やる。とにかく奴らが来るまで発艦は続けさせる。発艦前に奴らが来たら、海上投棄も認める。攻撃装備を外した機体は格納だ」
「戦艦部隊指揮官を出せ」
「戦艦部隊は敵戦艦の阻止。戦艦戦隊指揮官が指揮を執れ。巡洋艦は・・・・・・・・・・。そうだ。こちらはできる限り発艦を続ける。頼むぞ」
発艦が可能な機体は、260機。ただ、雷爆装機は120機。攻撃力が少ないが、やってくれると信じている。もう少し早く見つかっていればこんなに減らなかったのにと思う。
第1次攻撃隊は380機の予定だった。 260機が次々と発艦していく。発艦中に奴らがやって来た。全部発艦できるのか?
『レーダーです。敵編隊接近中。真方位270度、距離100マイル。敵速250マイル。推定機数100機』
「250マイルで接近中だと」
「速いですな。20分少々で来ます」
「全部戦闘機かな」
「どうでしょう、判断しかねます」
「上がっている奴を何機か偵察に向かわせろ。戦闘に入るな。敵情を報告せよだ」
「了解」
「発艦を急がせろ」
「了解」
「攻撃隊に真方位270に向かえと」
「了解しました」
『レーダーです。敵編隊。後続集団あり。真方位270。距離120マイル。敵速220マイル。推定機数300機』
「こちらは攻撃隊か。両方で400機だと」
「奴らの空母は搭載機が少ないという話ですが多いですね」
「奴らも甲板繋止で機数を増やしたのだろう。しかし直衛機で守り切れるかな」
「直衛機が攻撃隊の残りを入れて250機です。奴らが来る前に発艦できればさらに増えます。相当侵入されますが、侵入できる機数は少ないでしょう」
「奴らミッドウェーは捨ててこちらに全力か」
「太平洋艦隊司令長官からもそう告げられましたよね」
「ミッドウェー攻略は、主目的ではなく俺たちが主目標だとな。だが問題ない」
「攻撃隊発艦完了しました。直衛機発艦中」
「敵戦艦部隊30マイルまで接近」
「発艦中止。艦隊180度回頭だ。一斉回頭用意」
「一斉回頭用意、・・・発動」
このとき、命令の間隔が短すぎ艦隊が混乱してしまった。
「彩雲3号機より入電『敵は続々と発艦中』」
「戦闘機だな。守りを固めるか」
「どうしますか。総隊長」
相変わらずの総隊長呼びだ。もうすっかり定着して、今では艦隊首脳陣からもそう呼ばれる。
「尾張と五航戦の旋風隊と彗星隊で突入路を作ってもらう」
自分は天山の真ん中に座って総指揮だ。もう雷撃は出来ないのかと思うと悲しい。天山は通信機をこれでもかと積んだ指揮官機用特別仕様だった。
攻撃隊は敵艦隊との距離が200海里と近いことから、各機の航続距離を生かし空中待機で機数をまとめた。1次攻撃隊と2次攻撃隊に分けずに全機で突入する。つまりこれっきりの1回である。その1回が自分の肩にのしかかると思うと胃が痛い。
これだけの出撃機数を一人で指揮か。もう一人欲しいぞ。2次攻撃隊の隊長はブーツ村田だ。奴が次席指揮官だ。2次攻撃隊の指揮はおまえも専用機で執れと言いたい。しかし奴は魚雷を抱いている。うらやましい。紫電隊と彗星隊で突破口を開いた後が奴の出番だな。
尾張 53機 旋風20機 彗星18機 天山15機(雷撃)
赤城 45機 零戦22機 彗星18機 天山15機(雷撃)
加賀 86機 零戦36機 彗星30機 天山20機(雷撃)
翔鶴 62機 旋風22機 彗星20機 天山20機(雷撃)
瑞鶴 62機 旋風22機 彗星20機 天山20機(雷撃)
蒼龍 58機 零戦24機 彗星18機 天山16機(雷撃)
隼鷹 28機 零戦12機 彗星8機 天山8機(雷撃)
飛鷹 28機 零戦12機 彗星8機 天山8機(雷撃)
合計422機は日本海軍最大の攻撃力だ。即用機で残っているのは自衛用戦闘機に彩雲と対潜用の九七艦攻と九九艦爆だ。天山で魚雷の調定が間に合わなかった機体は置いてきた。もう少し発艦間隔があれば全部連れてこれたな。
母艦では今頃補用機を組み立てているだろう。
このうち、紫電2機、零戦1機、彗星1機、天山2機が発動機不調で引き返したので414機になったが。
眼下に高速で敵に突撃している戦艦部隊が見える。ウェーキが長い。敵機を引きつける目的も有るのだとか。
発艦前に昨夜からほぼ全速で敵目指していると聞かされた。速力が着いて行けない第二戦隊は空母部隊の護衛に残されたらしい。
敵の迎撃を受けたのは、敵攻撃隊とすれ違った5分後。敵は近い。
次回更新 8月18日 05:00
海空両面同時攻撃は成功するのか?
滑走具 シャトルのことです
牽引索 ブライダル・ワイヤーです
旗の色や手順は適当です。