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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
変わる世界
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触媒

別ルート登場。

本日も3話。


「ですから、ここに高強度の磁気回路を置いて触媒を配置して高周波の高電圧を流せば分子が励起状態になり、燃料の酸化反応が劇速に行われます」

「劇速な燃料の酸化反応というのは、燃焼のことだろう。普通の燃焼とは違うのかね」

「私は劇速と表しました。普通の燃焼は急速なあるいは爆発的な速度の酸化反応です」

「爆速とは違うのか」

「爆発的な速度での燃焼ですが、爆薬を作っているわけではありませんので、こう言う表現にしました」

「中身は同じだと?」

「そうですが、磁場の強度と高周波の周波数、それに電圧の制御で燃焼の制御は可能です。そこは爆薬と違うところです。一番効果が高いのは小型機関です。大型機関になると励起状態から着火までの時間が長く、励起状態が弱くなってしまいます」

「そこまで言うなら、試験は済んでいるのだな」

「勿論です」

「なら見せて貰おう」

「どうぞ。いつでもお待ちしております」


 そう言って男は退出していった。

 男は、いくつかのアイデアで金を稼いでいる。派手な目立つ技術では無いが、地味に役立つ技術が多い。色々なところから評価されている。現に外国企業からの勧誘も多い。

 開発した技術を元手に、仲間達と日本海技術開発研究所を設立。技術を切り売りして、結構稼いでいるらしい。話に聞くと地元では銅像建立話も有ったとか。若いのにたいした奴らだという評判だ。


「君はどう思う」

「自分としては、実現可能なら採用したいですね。彼の言うことが事実なら、発動機の出力が倍。最低でも3割増しになります。ディーゼルエンジンや蒸気タービン機関の出力や燃費に多大な恩恵が有るやも知れません。将来的にはガソリンエンジンも恩恵を受けるかと」

「問題も多そうだぞ」

「基本的に燃料噴射装置でないと威力を発揮しないと言うことですか」

「普通のキャブレターでも可能なようだが、資源と技術と金の無駄遣いとも言っておったな。それだけでは無い。制御装置が問題だ」

「キャブレターで使う場合は仕組みが大がかりになる上に効率が悪いから、使わない方がよいくらいだとも。制御装置は高性能な真空管多数が必要…ですか」

「現物を見る必要がある。視察に行く。日程を組んでくれ」

「畏まりました」


 昭和5年秋。川崎造船所応接室。そこに売り込みに来た男の名は、飯野適斗と言った。



 山形県酒田市の日本海技術研究所に川崎造船所の重役や技術者がやってきたのは雪が降る前だった。


「寒いです」

「東北だな」


 本楯駅前で神戸と違う寒さに震えていると


「ようこそおいでくださいました。さあ、こちらへ」

「お出迎えありがとうございます」


 驚いたことにフォードでお迎えだった。

 会社は本楯駅から2キロ程のことろにあった。さすがに新しいし、広そうだ。

 応接室に案内され、熱いお茶と羊羹が出された。寒いのと疲れているところに有り難い。

 一息ついたところで、懸案の試作機を見せて貰うことになった。

 係の社員に始動を命じている。既に一度暖気を済ませているのですぐに掛かりますといった。ディーゼルは一度冷えると厳しいからな。

 すぐに掛かったディーゼルエンジンは、エンジンベンチに繋がっている。もう1基有るが。


「アレは、改造していないオリジナルです。出力の違いを比較するために置いてあります」

「アレの起動は?」

「暖機済みです。こちらをご覧いただいてから、あちらも見ていただこうと」

「そういう事ですか」


 ディーゼルエンジンはトラックに使われるエンジンだった。さすがに大型ディーゼルは入手できませんから、と言って笑った。

 係の社員から「水温安定しました。油温・油圧も安定。問題ありません」と報告が有った。

 そうかと答え


「ではこのエンジンの諸元ですが、オリジナルはこちらです。そして、改造機の能力がこちらです」

「それは以前見た。エンジンベンチではどうなのだ。本当に出るのか?」

「問題ありません。君、2000回転まで上げてくれ」


 2000回転、了解です。と言う声で回転数が上がった。エンジンベンチの数字も上がっていく。売り込みに来た数字と同じだ。(このエンジンベンチ細工してないよな)


「怪しいでしょ。自分でも怪しいと思います。ですから、もう一台のオリジナルエンジンを載せ替えます。時間が掛かりますので、応接室に行きましょう」

「いや、いい。こちらで見学している」

「そうですか。作業中の社員に声を掛けないでください。緊張しているようです。事故が起こると困りますので」

「ああ、分かる。声は掛けない。大丈夫だ」

「では、私もここで見学しましょう」


 会話を聞いた社員達は、え?という感じだった。困ったような顔をしながら作業を進めていく。

 オリジナルエンジンはカタログ通りの性能を発揮した。これで、エンジンベンチの数字をいじっていないことが証明された。


 後日、川崎造船所と契約が交わされた。




 



架空戦記創作大会2023夏のお題1に丁度良く書いていた物が有ったので、別に書いていた超合金と合体させるという作者の技量を考えていない荒技。

こちらのルートで川崎造船が優秀船多数造船という話だったんです。

そして収拾がつかなくなり、架空戦記創作大会に参加せず。


ガソリンを磁場の中に通して燃費や出力を上げようという車用グッズは有ったんですよ。他にはインテークマニホールドとキャブの間に渦流を発生させるフィンを取り付けて馬力を上げようとか。インテークマニホールドとキャブの間に電流を流す網を付けてガソリンの燃焼を良くしようとしたりも、有ったような気がする。いろいろアイデア商品はありました。特許だったり実用新案だったりで、中には申請中というやつもありました、認められたのでしょうか。

歳が分かりますね。


次回更新 7月23日 06:00

7月24日から7月28日は1日1話更新。

7月29日と30日は1日3話更新。


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