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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
38/56

MI作戦 索敵

「撃沈確認との報告です」

「重油と臭いパンツは定番だぞ」

「潜水艦乗組員とみられる死体を確認したそうです」

「そうか。それにしても密度が高い。奴らも警戒しているな」

「知られているでしょうね」

「当然だな。奴らは馬鹿では無い。こちらの居場所が分からないだけだろう」


「信号『敵潜水艦撃沈セリ』」

「しつこいくらいにいるな。これで2隻目か」

「我が方の潜水艦も連絡が無い艦がいます」

「ハワイから空母出撃後の動向が不明だ。思い切って索敵機を出すか」

「ミッドウェー基地の推定哨戒範囲まで後200海里あります。危険を冒すのは避けた方がよろしいのでは」

「新型の艦偵ならやれるだろう。敵空母の居場所が分からないのが一番の問題だ」

「ミッドウェー基地攻撃中にやってこられればたまりません」

「そうだろう。しかし、司令長官はうんと言うかな」

「大和は信号の届く距離にいます」


 いくつかの信号のやりとりを経て決まったのは、索敵機を発艦させない。だった。

 そして


『電波受信、至近です』

「位置分かるか」

『お待ちください。・・・司令長官からです。隊内電話の使用を許可すると』

「電波源への対応は。発艦準備に時間が掛かる」

『四航戦が急行中とのことです』


 先に見つかった。これは痛い。




「カッドより入電『敵大型空母複数見ゆ。位置****・*****』」

「良くやった。任務部隊は受信していると思うが、こちらからも転送しておくように」

「了解しました」



「ボーイズ達。喜べ、ジャップが見つかったぞ。ただまだ遠い。攻撃は明日になるだろう。今のうちに休んでおけ。以上だ」


 エンタープライズから負傷しながら脱出し復活したおっさんは、またエンタープラズ(エセックス級空母)に乗っている。顔がやけどの跡でさらに凶悪になっていた。


「Kill Jap Kill Jap Kill Jap」


(嫌だな。また言ってるよ。近寄らないようにしよう。しかし35任務部隊司令長官だし、近寄らない訳にはいかないな)

 世の中に不幸な奴は星の数ほどいる。




「発信した敵潜水艦は、どうなった」

「失探したと報告がありました」

「後方の輸送船団は大丈夫か」

「向こうは対潜の専門家が多数付いています。大丈夫なはずです」

「そうか。ならばよし。索敵機はいつ頃発艦する?」

「五航戦が発艦させました。この艦は、もう少しのようです」


 艦橋から見ると「彩雲」が発艦準備をしている。



「太田少尉、逆探に反応は無いか」

「機長、まだです」

「そうか。木村一曹。太田の代わりに電文の用意だ」

「機長。木村一曹です。電文は何を」

「そうだな『我に追いつく敵機無し』でいいだろう」

「機長、怒られませんか」

「このくらいはお茶目で許される。はずだ」


 木村一曹は、ニーボードの戦闘詳報欄に[機長の命令で『我に追いつく敵機無し』を発信]と書いておいた。

 機長、斉藤大尉の操る彩雲、翔鶴2番機は翔鶴から600海里まで前進している。扇状に設定された索敵線の1番北だ。索敵線の多くはミッドウェー島後方とハワイの間に設定された。

 そろそろ変針する頃だった。変針して30海里ほど飛んだ時。


「逆探に反応、方位がミッドウェー基地と違います。敵艦と思われます」

「太田、方位を正確に」

「測定中。針路前方50度からです」

「距離はさすがにわからんか」

「本機の逆探では」

「太田は電波受信に専念せよ。木村は電文用意『敵空母見ゆ』余裕があれば現在位置だ」

「木村了解しました」

「変針する」


「電探波発信源正面。電探波強度上昇。おそらく探知されています」

「当たりか。見張り注意。怠るな。木村、機銃は無しだ。風防を開けると速度が落ちる。こいつの命は速度だ」

「「了解」」


 斉藤大尉は増槽を切り離した。



「レーダーに機影。2時方向から接近中。単機。距離70マイル。速度270マイルで接近中」

「敵機か」

「味方機のいる方向ではありません」

「上空直衛機を迎撃に向かわせろ。敵が電波を出す前に撃墜しろ」

 

 

 斉藤大尉の目に敵機と思われるごま粒が見えた。


「木村、緊急電『我敵機の迎撃を受く』」

「了解」



「敵機、電波発信中。長文です。位置情報を含むと思われます」

「クソ。間に合わなかったか」




「翔鶴索敵2番、敵機と接触」

「何?どこだ」

「ミッドウェー島北東350海里です」

「そんな所か。索敵線を設定しておいて良かったな」

「全くです。ミッドウェーの陰かハワイ寄りだとばかり考えていました」


 従来の水偵や艦攻による索敵ではとても発見できなかった所にいた。彩雲の航続距離あってのものだろう。



「木村、敵機は」

「左後方、離れます」

「機長、4時上方から来ます」

「太田、よく見た」


 動かない機体で敵機を振り切るのは並大抵では無い。彗星の方がまだ動く。だからどこに敵機がいるのかどう動くのかを見張ってもらわないと、一人ではさばききれない。

 

「居た。空母だ。太田、緊急電『我空母見ゆ』位置情報もだ」

「『我空母見ゆ』打ちます。位置情報付けます」

「機長!2時上方敵機」

「南無三」


 スロットルを戻して機速を落とす。タイミングをずらせれば。

 射弾は前を抜けていった。あのまま進めば射弾に捕らわれていただろう。

 敵機は衝突を回避したのだろう。左へ捻りながら降下していく。あいつ、グラマンじゃない?F4Fとは違うみたいだ。

 

「機長、敵前方、上方に見えず」

「全て後方なら、追いつけんはずだ」

「機長、敵空母4隻を確認。全て大型で未確認船型」

「太田良くやった。電信を打て」

「打ちます」


 周囲に爆炎が拡がる。敵機が追ってこないのは艦隊防空圏なのか。変針しならがらで無いと当たるかもな。



「撃て、撃ち落とせ」

「敵機、速い。420マイル出ています。追い切れません」

「何でだ」

「こんな速度の敵機を追う訓練をしていません」

「何故だ。最新の照準装置だろ」

「訓練対象の速度がこれほど速くありませんでした」

「クッソ。今度は高速機を借りだして訓練だ」


 斉藤機は艦隊を抜け大回りで帰路に就いた。途中で敵機を振り切りながら。


「良し打電だ。木村いいな」

「機長、本気ですか」

「いいから打て」

「知りませんよ。・・-・・- 打電完了」



「翔鶴索敵2番より続報」

「読め」

「はっ『我敵空母見ゆ』以上」

「それだけか」

「司令長官、追われているのでは」

「そうなのかな」

「続報です」

「読め」

「はっ『敵空母4隻を確認。全て大型未確認船型』以上」

「何だと」

「レキシントンとサラトガを入れると6隻になります」

「困るな」

「さらに続報」

「読め」

「はっ『中型空母3隻と未確認大型戦艦2隻確認』」

「何だって?」

「もう一回読みます」

「いや、済まんな。電文綴りは通信参謀に」

「はっ」


 通信士官が出て行った司令室では


「大型6隻に中型3隻か。それに未確認大型戦艦2隻だと」

「司令長官。それだけとは限りません」

「そうだな。見えていないところにはもう少し居るか」


「続報です」

「読め」

「『はっ『巡洋艦5以上駆逐艦10以上。他に艦影見ゆも詳細不明。敵戦闘機は新型』」

「ご苦労」


「たまらんな」

「アメリカ海軍も待ち構えていたようですね。新型機まで用意して」

「それが狙いだが、多すぎるぞ」


「続報です」

「読め」

「はっ。読んでいいのでしょうか」

「何だ?何が送られてきた」

「ふざけているのか。自慢したいのか分かりません」

「かまわん。読め」

「読みます『我に追いつく敵機無し』」

「……」

「失礼します」


 機嫌が悪くなったのを察したか、さっさと退出していった。


「おい。翔鶴艦長に説教を命令しておけ」

「追いつく敵機が無いのはいいことですが、ふざけていますな」

「しかし、この位置ではな」

「攻撃隊の発艦が終わるのは日が暮れてからです」

「今日は攻撃しない。航空参謀。明日、夜明け前に索敵機を出す手配を」

「了解しました」



 斉藤大尉は大目玉を食らった。その後で饅頭をもらったが。



次回更新 8月16日 05:00

8月15日は更新ありません。お休みです。

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