表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
35/56

バリクパパン防空戦

新型機登場

 アメリカ軍のスラバヤ展開が確認されてから1ヶ月。遂にバリクパパン空襲が始まった。

 スラバヤ-バリクパパン間は800キロありB-17・B-24とP-38だった。ラエやマダン、ラバウルでおなじみさんだった。その高速と高空性能は厄介であるが、迎撃する側の鍾馗にとって対応に困る機体ではない。

 迎撃には新たに制式化された三式戦飛燕も参加している。川崎製R/Rマーリンを搭載した機体で良好な高空性能を誇っていた。超高空で襲来するB-17やB-24の迎撃に活躍している。

 電波警戒機はバリクパパンのみではなく、200キロほど南のセジャカにも設置。時間的余裕を持って迎撃できていた。

 問題は数であり、少数精鋭の日本陸軍迎撃陣に数で押し切る戦法を採ってきている。ラエもマダンもこれでやられている。ラバウルは今や防戦一方だ。

 日本側も戦時生産体制が整い、なんとか押されない数を確保出来ている。なんとかだが。敵がさらに高性能な機体を数量揃えてきたら危ないだろう。

 迎撃主体なので、被弾した機体や搭乗員がなんとか生還できているのも大きい。海を越えての進撃だったらあっという間に消耗するだろう。

 数が少ないのも攻撃できない原因だった。ポートモレスビー攻撃で数十機の戦爆連合では損害ばかり積み重ねることになったのが記憶に新しい。

 スラバヤ攻撃は100機以上の戦爆連合が可能になる頃まで待つことになった。往復1600キロは遠い。


 新型機が確認されたのは、セジャカ電波警戒機を狙った低空侵攻-低空爆撃-高空離脱攻撃の時だった。

 ネイビーブルーの塗装から海軍機と予想された。逆ガル翼の巨大な機体だ。

 数回の交戦が有り撃墜した機体はあったが海に沈んでしまい、ようやく地上に落ちた機体を手にした。

 名称はF4Uだった。ヴォート・シコルスキー・エアクラフト謹製。日本側搭乗員からはシコルスキーと呼ばれることになる。


 F4Uは最初、乗り手が下手くそなのか格闘戦性能が芳しくない鍾馗や飛燕に格闘戦を挑んできて返り討ちにされていた。中にはその高速を生かしての一撃離脱をする者もいたが少数だった。

 それが、18年9月頃から戦法が変わりP-38も含めて一撃離脱しかしてこなくなった。搭乗員の質も向上しているようだ。厄介な相手になってきた。


 F4Uという今次戦争最強の総合力を持つ戦闘機が登場した。



「新型機だと?」

「鍾馗や飛燕では振り切られることも多々あるようです」

「しかし、最高速度は660キロでる鍾馗がか」

「加速力が違うそうです。速度自体は大差ありません」

「困ったことだ」

「キ84はまだですか」

「制式化に先立ち、先行量産が始まった。試験部隊に配備される」

「独飛47戦隊ですか」

「そうだ」

「47戦隊の派遣先をバリクパパンにしてもらえるように働きかけていただけないでしょうか」

「バリクパパンか。ラバウルやマダンではなくて」

「マダンは押されてしまって、出撃もままなりません。ラエには敵が上陸して地上からの脅威もあります」

「マダンは無いな。ラバウルかバリクパパンとなるか」

「バリクパパンなら陸軍の管轄です。ラバウルは海軍さんに間借りしているようなものです」

「では、バリクパパンとして働きかけてみるか」

「お願いします」



 注目の新型機キ84は、開発期に若干の設計変更があったため当初予定よりも遅れていた。

 プロペラ直径を大きくしたため、各部の設計変更が起きたからだった。これは鍾馗の最高速度がキ84の予定最高速度と同じで、より高速を求められたからだった。

 初期のプロペラ径3.1メートルに対して、変更後は3.4メートルになっている。予定最高速度は680キロ(ハ45-11)になった。

 搭載発動機のハ45-22(誉二二型)は、ハ45-11の中島自家製キャブレターではなく日技研式電子制御燃料噴射装置に変わっている。これにより各気筒に正確な燃料供給が可能になり性能の向上や振動の減少につながっている。

 誉自体も設計開始時よりも直径が50ミリ拡大され、各部に無理のない発動機に仕上がっている。


中島キ84  四式戦闘機 疾風  量産試作型

全長     10.5メートル

全幅     12メートル

全高     3.75メートル 

自重     2.895kg

全備重量   4.100kg

発動機    ハ45-22  空冷2重星形18気筒

離昇出力   2160馬力  98/125グレードガソリン使用時

1速公称出力 2050馬力/高度2000メートル

2速公称出力 1800馬力/高度5800メートル

最高速度   685km/h/高度6000メートル

航続距離   1500km  増槽あり2600km 

武装

翼内左右   九九式二号四型20ミリ機銃 1丁 装弾数200発

胴体機首   ホ103 2丁 装弾数 350発  

爆弾     左右主翼下 各最大250キロまで各種

       増槽と排他装備


 疾風は、独飛47戦隊に20機配備されバリクパパンの防空を担うことになった。

 防弾にも十分配慮され、期待の新星と言って良かった。


次回更新 8月13日 05:00   


誉の直径が大きくなったのは日技研の入れ知恵です。プロペラ直径もこっそりと。プロペラガバナーは、フランスのラチェ。ちゃんと動きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ