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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
34/56

南方騒動

本日2話。

「敵の迎撃を受く」


 偵察機からの一報は、十六航戦に衝撃をもたらした。

 その後も状況を送信し続けていたが、突然途切れた。


「戦隊、180度回頭。サイゴンに戻る」


 十六航戦司令が命令を出した。全速で戻る。と言っても22ノット。4時間の全速航行を続け電探に反応が無いことから、巡航速力に戻した。その間にも、状況を発信した。

 昭和18年5月だった。



 衝撃を受けたのは十六航戦だけでは無い。連合艦隊や軍令部の受ける衝撃は大きかった。グラマンということは空母が出てきたということだ。お大事の空母戦力に余裕が出来たと考えられた。

 エセックス級空母が建造されているのは知っていた。1番艦が17年末に就役するだろうことも。予算要求で8隻建造予算の承認がされた空母だ。初期の3隻から4隻は18年末までに就役が予想されていた。性能は秘密だが、ヨークタウン級を軽く超える能力を持つのは確実と思われた。他にも開戦後に建造を開始した艦が有るはずなので19年中に就役してくるだろう。さらに追加で建造しているのは確実だった。


 対する日本の新造空母は、大和級戦艦の船体を基本とする尾張級装甲空母1番艦尾張がようやく1隻就役したところだ。姉妹艦紀伊(きい)は建造中であるが、その2隻で打ち止め。とても日本の国力で量産できる船では無い。戦時ならではの数だ。尾張級空母や翔鶴級空母は大型であり、アメリカならともかく日本では量産には向かない。

 戦時量産空母として、改蒼龍級ともいえる雲龍級が計画され、1番艦雲龍が18年末に進水する予定で後続艦の進水はいずれも19年夏以降だ。

 初めから分かっていたことだが、国力の差は絶望的だった。



 まさかオランダが植民地を他国軍隊に明け渡すとは思っていなかった日本。

 これでまた戦線が増えてしまう。ニューギニア北岸とラバウル周辺に戦線を限定させるという中期戦略は崩れた。

 パース経由のオーストラリア大回り航路を使われてしまうと、南シナ海航路が危険になりフィリピンをしたから救援も可能になる。

 イギリスを通じて何かしようと思っても、イギリスはアメリカ軍がヨーロッパに大規模な戦力を送り込めば一気に有利になると思って静観している。

 少し徴兵数が増えた。陸軍を増やさねばいけなかった。ただ、国内生産が順調なのはむやみな徴兵をしていないからだというのは理解できており、どこら辺を徴兵するのか議論もあった。



 

 再び一機艦の出番がやってきた。戦場をどちら設定するかが会議で話し合われた。

 再び珊瑚海に敵を誘引するか、スラバヤのアメリカ軍を標的にするか。

 目標設定のために二式大艇による長距離偵察が行われる。16機送りだして、帰還したのは10機。偵察に成功したのは8機という過酷な偵察任務だった。

 アメリカ軍も防空体制を強化しており、偵察の成功率はこれから悪化することが知れた。 


 ポートモレスビーは足の遅い機体で偵察可能な場所では無く、新司偵でなくては出来なかった。すでに戦爆連合数十機程度の攻撃力でどうにかなる場所では無くなっている。

 ポートモレスビーからのラエに対する攻撃が激しく、ラエは放棄されていた。

 ヌーメアは以前よりも防空体制が整っており、遠距離から戦闘機の迎撃を受けるなど危険度が増していた。深く踏み込めば危険だ。


 スラバヤには大小3カ所の飛行場が建設されていた。4発爆撃機、双発爆撃機、戦闘機各種が配備されていた。一六航戦が哨戒活動をした3ヶ月前には影も形も無かったのに。アメリカ軍の設営能力とアメリカの航空機生産量が恐ろしかった。


 

 しかし、何故スラバヤから北上しないのか。

 やはり空母が足りないのだろう。

 ならば、空母を減らせば足止めになるか。

 簡単には誘引できないだろう。


 議論を重ねている最中に硫黄島と小笠原がアメリカ軍機動部隊による空襲を受けた。まさかの本土近辺だった。空母が増えたのか。

 哨戒網に穴は無いはずだが、弱い方面はある。東から北東太平洋海域だった。島も無く、哨戒艇を貼り付けているが電探未装備の哨戒艇では、見える範囲は知れていた。ウェーク島は占領したものの、維持困難として放棄した。アメリカ軍が再度進出したが時々嫌がらせのように空襲をするので、アメリカ軍もあまり戦力を置いていない。

 ハワイから長躯やってきたことを考えると、本土も危険と考えられた。ハワイを監視できる場所は無いか。


 考えられた作戦は、ミッドウェー攻略。


 と見せかけて、敵機動部隊殲滅を図る。ミッドウェーは上陸しない。どうやっても長期占領できる見込みは無い。ウェークでさえも無理と放棄したのだ。

 ただ輸送船団を同行させて本気に見せる。もちろん積み荷を積んで喫水は下げておく。

 ミッドウェー攻略と見せかける努力が始まった。米豪連絡路の監視が甘くなるが、イ号潜多数を引き抜きミッドウェー偵察に向かわせた。積極的に敵艦を攻撃して良いと艦長に含めて。

 ハワイ方面に偵察にでていたイ号潜からジョンストン島が無人であると報告を受けていた。

 二式大艇の航続距離ならジョンストン島まで飛べる。そこで潜水艦から給油を受け、ミッドウェーを航空偵察するという案が出た。危険だがやる価値はあった。

 2機派遣され、奇跡的に2機帰ってきた。おそらく油断していただろう。あの航続距離を持つ機体は他に無い。また、ハワイ方面から飛んできたという事実も油断を誘ったのだろう。




 その間にもバリクパパンに対する空襲は繰り返されており、アメリカ軍が下からフィリピンを目指していると考えられた。





次回更新 06:00


硫黄島と小笠原を襲撃したのは、レキシントン、サラトガ、エセックスの3隻。

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