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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
31/56

ポートモレスビー攻撃針路

少し長め。戦闘は無し。

 八艦隊がロッセル島近辺で遊弋している頃、オーストラリア東岸にいたアメリカ海軍とオーストラリア海軍の中小艦艇が日本艦隊の迎撃に向かっていた。南洋艦隊の迎撃に。

 時間的に間に合わなかったので、損害は発生しなかった。間に合っていたら全滅に近い損害が生じていただろう。

 根拠地に帰投しようとした彼らに新たな目標が現れた。ポートモレスビーに向かっている日本艦隊がいると。

 アメリカ海軍スコット少将指揮の元、迎撃に向かう。彼らにはほぼ引き分けで終わった海戦という報告が届いていた。ならばここで勝って勝ちにしてやると。

 スコット少将指揮の合同艦隊は、以下の陣容でポートモレスビーに向かった。


旗艦 * サン・ファン   米 アトランタ級軽巡   

   * シカゴ      米 ノーザンプトン級重巡

     ヴィンセンス   米 ニューオリンズ級重巡

     クインシー    米 同上

     アストリア    米 同上

     オーストラリア  豪 カウンティ級重巡

     キャンベラ    豪 同上

     ホバート     豪 ケント級軽巡

     パース      豪 リアンダー級軽巡 

     モンセン     米 リヴァモア級駆逐艦 

     ブキャナン    米 同上

     ラルフ・タルボット 米 バーグレイ級駆逐艦

     ブルー      米 同上

     パターソン    米 同上

     バッグレイ    米 同上

     ヘルム      米 同上

     ウィルソン    米 ベンハム級駆逐艦

     ウェンデッタ   豪 アドミラル級駆逐艦

     ヴァンパイア   豪 同上

 





「ポートモレスビー航空基地群の無力化は失敗か」

「残念ながら」

「日本にも3トンくらい積める爆撃機が欲しいな」

「一式陸攻も陸軍の重爆も1トンですから」

「重爆というなら2トンくらいは積んで欲しいと思うのは間違いか?」

「確かに1トンなら中爆でいいくらいです」

「愚痴はこのくらいにして、戦果不十分は八艦隊には伝えたな」

「通信済みです」

「マダンもラバウルも出撃可能機数が少ない。四航戦を借りたのはいいが、今どこだ」

「無線封止していますので、おそらくとしか」


 

 鳥海

            

「失敗か」

「効果不十分と言うことです」

「どのくらいの効果があったのか」

「ポートモレスビーの主飛行場は運用再開に2日程度。他の飛行場3カ所のうち、大きい飛行場が1カ所がやはり運用再開に2日程度。他2カ所は損傷軽微と言うことです」

「航空隊はもう一回来てくれんのか」

「損害が多く、有効な戦力を編成出来るのが明日以降になるそうです」

「四航戦を寄越したのだろう。どこにいる」

「四航戦は無線封止をしております」

「こちらも無線封止はしている。聞く訳にもいかん」

「今日、敵航空機の姿が見えません。それだけでもありがたいと考えます」

「そうだな。後200海里見つからなければ良いが」


 艦橋の外は日が落ちている。交代要員が上がってきた。寝るか。4時間は寝られるはずだ。


 鳥海船内時間 20:46


「航海士。無線に入電。遭難符号です」

「遭難符号だと」

「発信源は前方です」

「どこの船だ」

「現在受信中です。これは、オーストラリアです」

「この海域で遭難符号を出すのは怪しいが。艦長に判断をあおぐ。伝令。艦長をお呼びしてくれ」


 艦長がやってきた。艦長が来る頃には詳細が分かった。


「オーストラリア船籍の貨物船、グレートバリア3です。浸水中。エンジン故障で排水ポンプも動かないそうです」


 それを聞くとすぐに


「艦隊に関わる案件である。伝令、司令長官をお呼びするように」

「はっ。司令長官をお呼びします」

「航海士。ロイズの本は本艦にあったかな」

「残念ながら」

「そうか」

 

 ジェーン海軍年鑑なら有るのにな。

 平時だったらもちろん艦の進路を発信源に持って行くが、戦時で作戦遂行中だ。そんなことは出来ない。

 


 サン・ファン


「司令。救助要請です」

「眠いな。従兵、コーヒーを。しかし、救助要請だと」

「オーストラリア船籍の貨物船、グレートバリア3です。20:46に遭難符号受信。その後状況を発信しています。浸水中。エンジン故障で排水ポンプも動かないそうです」

「ロイズの一覧に有りました。グレートバリア3。1916年就役のレシプロ船です。総トン数2000トン」

「古いな。急がないと拙いか。場所は分かるか」

「進路の左。340度です。距離は推定50海里」

「近いな。良しウェンデッタとヴァンパイアを急行させよ。無視する訳にもいかん」

「了解しました。無線はどうしますか」

「隊内無線の使用を許可する」


 沈黙の時間に発信された救助要請は戦況を変えていく。



 あかつきひびきは本隊より先行し救援を求める貨物船グレートバリア3に接近していく。遭難符号の無視は出来ない。敵国の船でも。まだ戦争が始まったばかりで、心がすさんでいない。


「針路前方、光見えます」


 見張り員が報告する。かすかに明るいが、星では無く光か。手持ちの双眼鏡では識別困難だ。


「信号旗、2枚見えます。白地に赤い✕。ヴィクター。救助を求む。白地に赤い菱。フォックストロット。本船は操縦不能。本船と通信をせよ。以上」

「よく見えるんな、本艦の見張り員は化け物か」

「艦長。あと30分で本隊が来ます」

「航行灯点灯」

「艦長」

「アレは民間船だ。救助する」

「砲術。貴様、英語の点は良かったと聞く。交渉は任せた」

「はっ。不肖、砲術長。交渉役を仰せつかります」

「信号灯用意。無線電話が通じない場合は信号灯で交信する」

「艦長。無線電話、各周波数感無し。電信は受信中」

「無線電話は故障でもしているのか」

「そうかもしれません」

「電信は打てん。信号灯で会話だ。砲術。信号員の所に行って、アルファベットの用意」

「了解」



 その頃、ウェンデッタとヴァンパイアも近くに来ていた。


「前方、発光信号見えます」

「信号だと。我々以外にどこの船だ」

「同じ場所に航海灯見えます」

「航海灯だと?こんな場所でか。軍艦では無いのか?」

「艦長。どうします」

「こちらも航海灯を点灯。教えてやれ」



「9時に艦影らしき物」

「9時だと。味方では無いな」

「オーストラリアの船かもしれません」

「信号を拾って救助に来たか」

「航海灯見えます。いきなり点灯しました」

「軍艦か」

「どうしますか」

「砲術士、主砲。打ち方用意」

「やるのですか」

「向こうが撃ってきたらな。砲術士。いいか。弾は込めるな。主砲も定位置。測距儀で照準はしておけ」

「弾は込めず。主砲定位置。測距儀で照準のみ。砲術了解」

「艦長」

「砲術長か」

「浸水が酷く回復困難。脱出するそうです」

「そうか。信号長。作業灯。灯りを提供する」

「的になりますが、いいのですか」

「自国の船を救助作業中の船を敵艦とはいえ撃ってこないだろう」

「信用できますか」

「今は海の男として振る舞おう」

「了解です。救助作業に全力を尽くします」

「よろしい。甲板長。甲板作業灯点灯」

「響、反対舷に回り込みます」

「向こうに回ってくれたか」



「不審船。点灯しました。シルエットは、吹雪級と考えられます」

「オーマイガー」

「どこを照らしている」

「おそらくグレートバリア3です」

「救助作業中なのか」

「目標、さらに点灯。甲板灯点灯です。吹雪級です」

「救助中だな」

「どうしますか」

「こちらは見つかっているだろう。こちらも作業灯点灯。交戦する気が無いことを教えてやれ」

「敵艦は2隻。どちらも、航行灯と作業灯を点灯」



「こちらオーストラリア海軍ウェンデッタである。貴艦の所属・艦名を知らせたし」


 拡声器でがなってきた。分かっているだろうに。軍艦旗は照明で照らしているぞ。ご丁寧なことだ。


「こちら日本海軍所属駆逐艦暁。救難符号を発信した船の救援中」

「詳細を知らされたい」

「少し待て」


「艦長。どうしますか」

「かち合った以上は仕方がない。向こうも無線を使っている。無線封止解除。これ以上の対応は艦隊司令部に任す。船の乗組員は全員あちらさんん乗り込ませろ」

「了解しました」


「暁よりウェンデッタ。乗員は全員退避。ボートと当艦のカッターに乗っている。そちらで引き取られたい」

「了解した。少し待て」




 グレートバリア3の周りで救助活動をしている4隻の他は、ポートモレスビー攻撃に向かう八艦隊と阻止しようと目論む合同艦隊がいる。


「ヴァンパイアから入電『遭難符号発信海域に日本海軍艦艇2隻。先に救助を始めている。指示を請う』」

「何だと」

「スコット少将。どうしますか」

「日本の艦艇がいると言うことはポートモレスビーに向かっているのが確定だな。艦隊進路変更、ポートモレスビーに向かう。艦隊増速、第一戦速」

「「ウェンデッタとヴァンパイアはそこで救助活動継続。戦闘に参加せず、日本艦2隻の動向を監視せよ」以上だ」

「ウェンデッタとヴァンパイアに命令します」



「かち合ったのか?」

「司令長官。そのようです。向こうも2隻だと。指示を仰いでいますが、どうされますか」

「「そこで2隻を牽制していろ」と伝えよ」

「戦闘には参加させないおつもりですか」

「戦時といえ民間船の救助だ。向こうもそのつもりだろう。だから貼り付けておけ」

「分かりました。指示を伝えます」




 戦闘海域で交戦国同士の艦艇が民間船救助で協調するという、世界にもまれなこの事態は、後年【戦争海面で作戦遂行中、戦時にも関わらず民間船救助に訪れた敵国艦艇と協調した交戦国艦艇。という希有な事態】として有名になる。

 民間船救助の実例として取り上げられることも多く、各国海軍は取り扱いに困る事例となった。



次回更新 8月10日 05:00


*はレーダー装備艦 アメリカ艦艇はSC(対空)のみ SGは開発中

史実でも第1次ソロモン海戦の頃は装備していた艦が少なかったと思います。

さらにこの物語世界ではアメリカのマイクロ波レーダー開発が遅れています。

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