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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
28/56

珊瑚海海戦 索敵

 一機艦のヌーメア攻撃は成功だった。敵の航空戦力を最初に無力化出来たのが大きかった。一航戦・二航戦・五航戦は従来の機種比率だったが、六航戦は試験的にほぼ戦闘機で固められていた。これは電探の発達で遠距離から迎撃を受ける事が予想されたからだ。戦闘機を先に削られれば、後は無力な艦攻と艦爆だ。これを防ぐために、戦闘機の数を増やしてみた。

 ヌーメアからは戦闘機が続々とやって来たが、六航戦戦闘機隊にはばまれ本隊に近づけた戦闘機の数は多くない。それも、手練れの集まりで有る一航戦・二航戦の戦闘機に翻弄され攻撃隊の損害は僅かに2機のみだった。

 1次攻撃隊は飛行場を集中的に攻撃し、滑走路と格納庫を破壊。飛行場としての機能を失わせた。2次攻撃隊の目標は港湾施設だった。

 1次に続き2次攻撃も成功。ヌーメアは一時的に拠点としての機能を失った。


「航空参謀、損害集計は出たか」

「はっ。我が方の損害は、未帰還機が戦闘機12機、艦攻6機、艦爆8機です。損傷して使用に耐えない機体が、戦闘機4機、艦攻3機、艦爆2機です。戦闘機の損害は六航戦に集中しています「分かった。いい」」

「はっ」

「龍驤一隻分の航空機が失われたと言うことだな」

「機数的には」

「さして大きくない基地への攻撃でこれだ。敵空母部隊との戦いではどれだけ損害が出るか」

「しかし、避けられません」

「そうだ。第一目標だ。通信参謀。この結果を南洋艦隊へ送信。どうせおおざっぱな位置は知られている。敵を引きつけるためにも通信を出す」

「了解しました」


 俺には荷が重い。山口よ、替わってくれんか。角田覚治は思った。


「角田司令長官は電波を積極的に出すのか」

「山口司令官。敵をこちらへ引きつけるのでしょう。南洋艦隊の防空は四航戦の2隻です。予想される敵空母は4隻。四航戦では守り切れません」

「そうだな。分かっている。闇夜の提灯とか言って電波の発信を渋る連中が多い中で、良く出すと思っただけだ」

「失礼しました」

「意見は言え。独善になるのは怖い」

「分かりました」



「敵の電波を補足しました。発信源から言って空母部隊と思われます」

「なあ、敵はバカなのか。それとも誘っているのか」

「バカであって欲しいですな」

「まったくだ。誘っているとしてもやらなければいけないのだ。誘われてやろう」

「しかし、敵空母は6隻以上と予想されます」

「お馴染みのアカギ、カガ、ソウリュウ、ヒリュウと、なんだったけな。最新の大型空母だ」

「ショウカクとズイカクです」

「それだ。ソウリュウとヒリュウは中型空母だ。戦力的には2隻でサラと良い勝負だろう。他にはあの小さい奴か」

「おそらくリュウジョウかと。ただ小型空母数隻が戦力化されたという情報もあります」

「小型か。ロング・アイランドくらいの奴なら空母部隊に随伴できん。後方の戦艦部隊の護衛程度ではないか」

「そう思います」



 一機艦の電探は装備艦全艦が使用している。電波管制はしていない。敵の早期発見を艦隊位置秘匿よりも優先している。昨日電波を出しておおよその位置は推測できるだろう。電探波をキャッチされるのは当然だと考えている。日本も敵電探波を捉えられるのだ。アメリカに出来ないわけが無い。

 問題は敵艦隊の位置が不明なことだった。昨日の午後行った多段索敵では、敵影を見つけられなかった。

 今日は見つかるとよいが。



「四谷大尉。3時に何か見えました」

「安室二曹。なにかだな」

「今は雲で見えませんが、なにかです」

「安室君、索敵線からどのくらい外れそうだ」

「大尉。そんなに離れません。10海里程度でしょう」

「ならば行くか。3時だな」

「3時です」

「航空チャートに記載を忘れるな。電信の用意だ」

「通信機。正常の模様。受信は出来ています。チャ-トに何かあっても、みんなの呼ぶ声が聞こえます」

「信じていいのだな。その可能性を」


 四谷大尉は機体を90度変針させた。彼らの乗機、二式艦偵は次期艦爆である彗星の実用試験も兼ねていた。マーリン発動機の性能は高い。

 10分ほど飛行するといきなりひねりが入った。


「大尉。何するんですか」

「敵機だ。平文で良い。「我敵機と遭遇せり」打て。送信した後でヒ連送用意。最悪、敵艦隊を見つけられなくても敵機と遭遇したことがわかればいい」

「「我敵機と遭遇せり」送ります。・・・・・・・次いで位置情報送りました」

「上出来だ。後はこいつらをなんとかしないとな」

「左上方来ます」

「むん」


 動きの悪い(九九艦爆よりも動くが)機体でよく躱す。安室は思った。


「喰らえい」

「え?」


 タタタッタタタタタタタタ

 軽快な機銃発射音が響く。


「大尉」

「少し振り回すぞ。機体の性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる」

「こいつ艦爆です」

「敵はグラマンだ。戦闘機だがこちらの方が速い。包囲を突き破ればいい」

「敵機は視認出来るだけで4機です」

「当たらなければどうという事はない」

「大尉~」(何故、そんな自信満々でクサい台詞吐けるのー)


「安室君、受勲だな。見えたぞ。空母だ」

「打電します」

「まず一報を」

「打電完了。敵機後ろから来ます」

「追いつけんよ。空母は3隻か。もっといるはずだ」

「3隻ですか。打電」

「もう少し踏み込む。対空砲火に注意」

「はっ」

「3隻はヨークタウン級に見える」

「3隻はヨークタウン級。打電」

「「新型戦艦を伴う」もだ」

「「新型戦艦を伴う」打電」

「安室君、どっちだと思う」

「後ろだと思います」

「戦闘機がもう少し増えるな」

「帰りませんか。戦果としては十分だと考えます」

「そうだが、行きがけの駄賃という言葉もある」


「む、深入りしすぎたか」


 6機近い戦闘機に囲まれている。彗星の方が優速であるが、進路を塞がれれば迂回するしか無い。その間に他の戦闘機が近寄ってくるという具合だ。いささか面倒になっている。


「・・ぁぁ(だから帰りましょうと言ったのに)」

「何か言ったか」

「いえ、何でもありません。状況は発信しました。今はヒ連送を打っています」


 ヨークタウン級3隻の後方にもう1群の機動部隊がいた。レキシントン級1隻とおそらくワスプとみられる空母の2隻を中心に輪形陣を組んでいた。


「安室君。ヒ連送は止め。機銃の用意だ」

「キャノピーをずらせば速度が落ちます」

「こちらの機銃が豆鉄砲と気がつかれた。撃ってもろくに回避しない。そこで後部機銃だ。使っていなかったから驚くだろう」

「その隙にですか」

「道が空けば、動力降下で振り切る」


 ちくしょう。やってやる。やればいいんだろう。キャノピーをずらし機銃を用意する。


「用意できました」

「少し食いつかせる。隙を見て撃て」

(勝手なことを言ってくれる)

「何か」

「隙が出来ますか」

「作る」

(はあ?)

「今だ」

(??見える!そこー) タタタタタ

7.7ミリの細い火線が敵機の機首に向かっていく。チカチカっとした。敵の様子がおかしい。ふらついて降下していく。

「上手いな。もう1機やれるか」

「無理です。警戒しています」

「では降下に移る。機銃は出したままで良い。動力降下と言っても緩降下だ。読み上げは必要ない」

「後方警戒続けます」

  

 警戒して近寄ってこない敵戦闘機を動力降下で引き離し無事離脱に成功した。


「安室君。生きていると発信しろ」

「はっ。最大出力で打ちます」



次回更新 8月06日 05:00

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