ニューギニア西部航空戦
米豪分断作戦でラバウル・ラエ・マダンを占領した日本は基地の増強に励む。日本軍は更にブーゲンビル島ブインも占領。基地を作った。トラックを後方にラバウルを中心とした基地群で米豪分断を行うつもりだった。
出足が遅れたアメリカ軍はポートモレスビーに戦力を集めた。
1942年4月
日本軍のポートモレスビー攻撃からニューギニア西部航空戦が始まる。
当初は搭乗員練度の高さから日本軍が有利に進めていたが、最初から投入戦力で劣っており7月頃から日本側搭乗員が疲弊してくると様相は変わった。
連日に渡りアメリカ軍が行った各基地への爆撃も効いた。ラバウルへの爆撃は始めの頃数十機編隊の爆撃機のみだったが、台湾と同じ結果になり昼夜を問わない少数機の高高度爆撃に切り替わる。9000メートル以上の高度は迎撃が困難で排気タービンと4発の利を生かしたB-17の損害は減っていく。アメリカ側の戦果は少ないが、代わりにラバウル各地の兵士は焦燥感が増す。
ラエは当初から戦爆連合による空襲に晒され続ける。スタンレー山脈で見えない向こう側からいきなりの空襲だ。電探で補足しても邀撃をする時間的余裕は無かった。ラエの戦力は戦闘機だけだったが補充が続かずすり減らされてしまった。9月現在は緊急着陸用として運用されている。ここに降りて助かった搭乗員も多い。
マダンも戦爆連合だったが、ラエよりは迎撃対応する時間的余裕が有り互角に戦っている。こちらも昼夜を問わない少数機による高高度爆撃で精神を削られる。
ポートモレスビーをなんとかしなければという意見は当然だが航空戦力と航空機補充能力や飛行場回復力で劣っており、破壊しても他の飛行場から発進する敵機を止めるすべがない。
ここに至って連合艦隊と軍令部は艦隊を動かすべしと言う意見で一致した。これまでは、太平洋艦隊の動向を気にしすぎて動けなかったのであった。
だが、9月中旬にレキシントン級空母1隻にイ-6潜が雷撃成功をすると雰囲気が変わった。一番厄介な空母が1隻減ったのだ。
ポートモレスビー砲撃と敵機動部隊誘因撃滅の2正面作戦という、非常に都合の良い考えの下に作戦は発動された。時間が無いにしても詰めが甘すぎると言われたが、参謀たちが咲かせる頭の中のお花と時間の方が大事だった。
作戦名は南号作戦。
一航戦、二航戦、五航戦を主力に編成される第一機動艦隊を持ってアメリカ太平洋艦隊機動部隊を相手取り、三戦隊を主力とする臨時編成の第八艦隊がポートモレスビーを砲撃。これの双方とも無力化するというとてつもな都合の良い作戦だった。参謀たちは何故か成功を確信していたが、指揮官たちはどれだけやれるかと危惧していた。なにしろ今だけなのだ。アメリカの海軍戦力に対抗出来るのは。1943年冬以降は就役する推定艦艇数で引き離される。
作戦は、10月の終わりにサモア方面でアメリカ海軍の空母複数を発見したことで決まった。アメリカ海軍機動部隊がサモア方面からラバウルを狙うことが確実視され、先手を打つべく発動された。
第一機動艦隊のトラック出動が探知されたのは、不審電波発信が有り確実と見られた。
これも狙いのひとつであり、数回の発信を待ってイギリスから供与されたHF/DF装置により特定した海域にいた潜水艦を狩っていく。
アメリカ軍は開戦直後にあった日本の暗号書変更で解析が間に合っていないために、潜水艦の情報は大変重要だった。「雷撃よりも情報収集を」が潜水艦隊に命じられた優先任務だった。それでも無線使用量の増大により得られた解析結果と潜水艦情報によりトラックに艦隊が集結しているのと出動したのは知ることが出来た。
日本の暗号書変更はイギリスからどんな強固な暗号も解析される物と判らされたからだった。日本が強固と信じていたエニグマも解析するイギリスの言葉は力が強かった。
1942年11月06日日没前
ラバウルを出港した第八艦隊はロッセル島の西を航行している。ロッセル島からニューギニアまでは航行出来そうに見えるが暗礁地帯であり、地元の水先案内人がいなければ昼間でも航行など出来る場所では無い。ここを抜けるとか最初に言った参謀は馬鹿にされたらしいと聞く。
(貧乏くじを引いたか)
第八艦隊司令長官三河軍一中将は思った。敵機動部隊は一機艦が対応し、ポートモレスビーの基地航空機はラバウルとマダンの航空隊が全力を持って一時的に無力化する。そのすきに第八艦隊がポートモレスビーを砲撃する。
(全く絵に描いた餅とはこの事だ)
鳥海の艦橋から、日没前に特設給油艦から給油を終えた駆逐艦と阿武隈が本隊に合流し、特設給油艦は2隻の駆潜艇に護衛されてトラックに向かうのが見える。
贅沢なことだ。以前だったら、給油など受けずに予想戦闘時間を含めた航続距離ギリギリでの航行を迫っていたはずだ。
給油艦も単独で帰らされただろう。
前方150海里に居るはずの第一機動艦隊はそのままヌーメアに向かうようだ。
第一機動艦隊はヌーメアを攻撃目標として航行している。アメリカ海軍機動部隊は食いついてくるだろう。暗号でヌーメアを匂わせる符丁をちりばめておいた。ある程度解析出来るなら、ヌーメアを攻撃目標としているのは判るはずだ。
トラックを出た後で第一機動艦隊の行方が分からなくなっていたアメリカは「北部ソロモン海で日本海軍の大部隊を発見。空母複数と戦艦複数を含む大艦隊が南西に向け14ノット程度で航行中」という偵察結果を知った。
行き先はいくつか候補に挙がったが、暗号解析からヌーメアを攻撃目標としていると見られた。迎撃しなければろくでもない結果になるのは見えている。
サモアに居た機動部隊に出撃命令が下った。旧式戦艦に合わせた巡航速力では日本軍の攻撃に間に合わない。そこで鈍足の戦艦戦隊は置いて行く事した。これなら20ノットで航行出来る。駆逐艦の燃料はヌーメアを守った後でヌーメアで補給すれば良いと。
同時にタウンズビルとケアンズに居た艦艇も攻撃に参加させることにした。
次回更新 8月06日 05:00