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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
発火する太平洋
24/56

熱い南洋

 アメリカ海軍はレインボー計画に従い、対日戦を進めるべく準備をしている。

 既にグアムは落とされた。グアムは捨て石のような物だ。最初から防衛出来るなどと思っていない。ウェークも近いうちに落とされるだろう。

 フィリピンが落とされたのは、陸軍がバカだったせいだ。B-17という巨大爆撃機を何十機も失ったあげくに、フィリピンのみの休戦状態と言う状態に押し込められるとは。*

 大統領からフィリピン救援を行うように指示されたのは先日だ。フィリピンには日本軍が居ないという。なら急がなくてもいいだろうと思うが、政治的ななにかだろうか。「助けてやったぞ、マッカーサー」フッ、皆マッカーサーに恥を掻かせたいのかも知れないな。そうか、ただの嫌がらせか。俺もあいつは嫌いだから丁度良い。


 キング作戦部長は、実現可能な範囲で修正したオレンジ計画実行案を持ってホワイトハウスを訪れていた。


「フム。マーシャルで決戦なのは、計画通りなのだね」

「はい。プレジデント。補給出来る場所がないので、フィリピン救援ならば必然的にマーシャル付近で日本海軍との決戦になります」

「補給が出来れば、マーシャル付近で無くても良いのかな」

「はい。ですが、現実にはありません」

「出来たとしたら?」

「は?」

「君にはまだ届いていないのか。何、新しい世界情勢だ。複雑怪奇極まるよ。私もオーストラリア大使の挨拶を受けたところだ。オーストラリアがイギリスを蹴って我が国と共同歩調を取るそうだ」

「?オーストラリアがイギリスを蹴って…」

「そういう事だ。オーストラリアを使える。これは大きいだろう」

「それならば大変大きいですな。しかし、そうなると作戦計画に若干の変更が必要です」

「作戦要領は軍の専権事項だ。任せるよ。陸軍とも相談の上でやってくれ」

「陸軍ですか。海兵隊があれば必要ないように思えますが」

「ヨーロッパ戦線が拡がらない。オランダ支援だが、オランダの兵力がアジアにしか存在しない。やつらは自国を取り戻すよりも植民地が大事なようだ」

「おかしな奴等ですな」

「だから、オランダ植民地に我が軍を投入して安定化を図る。そこでオランダ軍をヨーロッパの戦場に送る。我が国はヨーロッパに大手を振って乗り込める」

「そこまでお考えでしたか。ならば、陸軍と調整し新たな作戦案を練って参りましょう」

「頼むよ。キング君。悪いが陸軍にはもう言ってある」

「では、失礼します」




 酒田 日本海技術研究所


「んなバカな」

「驚きだわ」

「総督がいるから完全な独立国ではないよな」

「でも、ほぼ独立国よ」

「そ~か~。そうきたか」

「マーシャル決戦よりも、オーストラリアを策源地に出来ればアメリカは楽だろうよ」

「困るのは日本と」

「そうすると、ソロモンだな」

「米豪分断作戦か」

「他に出来る手は無い。まさかガダルカナルは無いよな」

「そこまでやるとも思えないけれど。シンガポール方面はインドネシア周辺の海軍艦艇を追い払ってしまえば良いだけだから」

「オーストラリアなら、パースから出撃出来るぞ」

「近いな」

「インド洋が拙い」

「ではパース撃滅か」

「イギリスがどう思うかな」

「あぁ…」




 某所

「それは本当なのかね」

「はい」

「困ったものだ」

「まことに」

「アメリカの方が良いと?」

「あそこの有色人種蔑視は酷いですからな」

「そんなに?でもアメリカにも大勢有色人種は居るではないか」

「あからさまに差別していますな。そこがオーストラリアのなにかに触れたのでしょう」

「なってしまった物は仕方が無いな」

「はい、では、引き続き慰留工作を続けます」

「頼むよ」

「Yes, Your Majesty」




 国内某所

「なんでオーストラリア」

「白豪主義という奴だろう」

「人種差別か」

「イギリスはインド人が大勢居るからな。差別はあるが、アメリカよりはマシだと聞くが」

「それにしてもオーストラリアよ」

「遠いの一言だな」

「どうする。下手に攻撃出来ないぞ」

「イギリスか」

「アメリカと分断すれば根を上げるんじゃないか」

「分断はもちろんだが、アメリカにニューギニア北岸を策源地にされるとトラックやサイパンが拙い」

「パースだとインド洋も拙いぞ」

「回り込めばブルネイまで来れるだろうな」

「イギリスがあるから無理はしないと思うが」

「日本船だけ狙うということもある」

「独航船は危険か」

「船団形式で護衛を付けるしかない」

「面倒臭い事態にしやがって」



 斯くして、日本の米豪分断作戦は泥縄式に発動された。

 最初にラバウル占領。次いでニューギニアのラエとマダンを占領する。


 アメリカ軍よりも日本軍の方が立ち上がりが早く、ラバウル、ラエ、マダンの占領は成功した。オーストラリア軍は弱小で相手にならなかった。ただジャングル深部に潜り込み諜報活動に移ったようだ。この排除に成功しなかった日本軍は、戦力情報や出撃情報等ががかなり漏れてしまった。


次回更新 8月05日 05:00


* B-17は日本の軍用機政策という溜め池に特大の岩を投げ込んでくれました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 史実と同じならこの頃の英国はまだ男性の王なのでは?
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