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燃ゆる太平洋   作者: 銀河乞食分隊
変わる世界
19/56

砂漠の難敵

遂に出るか。

 1942年夏


『マルセイユ、ヤパーナ』


 レシーバーから戦友の声が聞こえた。とっさに操縦桿を横に倒しフットバーを蹴っ飛ばす。

 火線が機体の横を通り過ぎる。ありがとう戦友。

 横をでかい空冷エンジンに小さい機体というカッコ良くない機体が通り過ぎる。こっちをちっらと見た。残念だったな。

 スロットルを押し込みダイブアンドズームで上昇する敵機の後を追う。追う。奴の方が速いし上昇力も桁違いだ。くっそ。タイプツヴァイか。スピットファイヤならまだしもあいつはやばい。スピットも厄介だが、あいつほどじゃない。

 俺の撃墜スコアが伸びないのはあいつが現れてからだ。あいつが現れる前のファルケなら遅いし旋回しか能がないから、遣り様はいくらでもあった。*

 スピットファイヤやハリケーンなら左旋回に巻き込んでしまえば勝てる。だがヤパーナは誘いに乗ってこない奴が多い。*2




 この頃アフリカにあった二式単戦は一型乙で、機体各部が熟練工員によって作られており量産機でも額面通りを発揮している。発動機はハ41-23を搭載。離昇出力1400馬力で最高速度630キロを誇っていた。搭載機関砲のホ103の炸裂弾は13ミリとは思えない威力を発揮している。




「よう、マルセイユ。浮かない顔だな」

「ハインリヒか。またツヴァイだ」

「速い、堅い、よく上がる。うらやましい限りだな」

「ヤポーネにあんな機体が作れるなんて。アレには劣等民族と書いてあったぞ」

「そんな君に朗報だ。20機だが新型が来る」

「新型だと。109か。大差無いのでは」

「いや。フォッケだ」

「フォッケか。視界が悪そうだな」

「いや聞くには良いと言うぞ」

「エンジンがでかいじゃないか」

「乗ってみればいい」

「乗れるのかな」

「司令次第だな」


「惚れた」

「おい」

「旋回性能はともかく、他の性能はツヴァイをやれる」

「そうか」

「そうだ」

「だがまだ搭乗者は決まっていないぞ」

「司令のところに行く」

「頑張れ」

「ありがとう。愛してるぜ」

「止めろー」



「閣下」

「バイエルラインか。どうした」

「一部補給物資の在庫に不安があります。本国に要請をお願いします」

「今すぐ必要な物資なのか」

「今すぐということではありません。このまま戦闘が続けば不足します」

「それはいかんな。存分に戦えないのも困る。交渉はする」

「ありがとうございます」


 その結果がFw-190のアフリカ投入なのだが、本当に必要な物資が定数入ってこない。英軍の妨害が厳しい。機種が増えることで整備現場の混乱が激しい。液冷倒立V12と空冷星形ではまるで違う。

 他にも困ったことが起こった。鍾馗とFw-190のシルエットが似ている。おまえらだって似てるだろうと、Me-109とスピットファイヤに言う。




 川崎型高速貨物船で船団を組んだアレクサンドリア向け陸軍船団が紅海を北上している。一部に海軍の輸送船も混ざっているが陸軍船団である。護衛部隊は海上護衛戦隊だ。贅沢なことに衣笠が旗艦として部隊を率いている。

 その積み荷には鍾馗二型もあった。

 せっかく制式化した隼にヨーロッパ方面からの需要がなく、鍾馗は1機でも多く寄越せと言われる現実に陸軍航空本部は戸惑っていた。

 隼は陸軍航空隊の役割が迎撃主体のニューギニア方面でもいらない子扱いされていた。有れば使うが、隼よりも鍾馗を。それが現場の声だった。

 難物だったハ41発動機は、海軍の合金技術や日本海技術研究所やイギリスの技術・部品のおかげで劇的に稼働率が向上した。もちろん性能もだ。

 この現実に陸軍航空本部が折れ、中島に隼減産鍾馗増産の命令を出した。

 陸軍航空本部は鍾馗の評判の良さに、隼を推していたことを忘れることにしたようだ。

 

 鍾馗二型と零戦二二型を積んだ船団は無事アレクサンドリアに入港した。戦車もついでのように載せている。試製二式中戦車がそれだ。実戦運用試験をすべく載せてきた。

 零戦二二型は航続距離の長い戦闘機が求められたことから送られてきた。現時点で3000キロの航続距離を持つ単発単座戦闘機は、他に隼しか無い。

 しかし、隼はその13ミリ機関砲2門という打撃力不足と速度の遅さから求められていなかった。



「こいつか。最近フォッケにやられるからな。新型はありがたい」

「フォッケはそんなに凄いのか」

「組んずほぐれつの低速格闘戦になれば恐ろしい敵では無いが、それ以外だと手強い、と言うよりも強い」

「そうか。コレが新型の性能表だ。海軍さんの分も載っている」

「どれどれ。こりゃぁ。最近凄いな」

「本当だよ。発動機なんか始動車もイナーシャを回す必要も無い。進歩したもんだ」

「本当に」


 手元の性能表を覗いている。


鍾馗二型

全幅         10メートル

全長          9メートル

全高        3.4メートル

自重       2200kg

全備重量     2850kg

発動機      ハ109

離昇出力     1800馬力

一速公称出力   1780馬力/2200メートル

二速公称出力   1550馬力/5500メートル

最高速度     660km/h 5600メートル

航続距離     1200km 増槽2本使用時1600km

上昇力      5000メートルまで4分12秒

武装     

胴体       ホ103×2 各250発

主翼       ホ103×2 各250発 

等々 


「とんでもないな」

「こちらは海軍さんの奴だ」

「見ていいのか」

「見せて良いそうだ。共同作戦で他の機体の能力が分からんと問題だろう」

「それもそうか」


零戦二二型

全幅         12メートル

全長        9.3メートル

全高        3.6メートル

自重       2000kg

全備重量     2850kg

発動機      栄二一型

離昇出力     1400馬力

一速公称出力   1300馬力/2800メートル

二速公称出力   1150馬力/6000メートル

最高速度     605km/h 6200メートル

航続距離     2300km 増槽使用時3400km

上昇力      6000メートルまで6分12秒

武装     

胴体       ホ103×2 各200発

主翼       九九式20ミリ機銃二号三型×2 各100発 

等々


「なんだ?この航続距離と20ミリって。そんなでかいのいるのか」

「海軍さんだからな。我々には分からん」



 その向こうでは


「こいつが試製二式中戦車か」

「そうであります」

「ごついな」

「将来的に強力な敵戦車にも対抗できるようにと」

「少尉。諸元は」

「こちらであります。大尉殿」


試製二式中戦車 チヘ 

車体幅    2.75メートル

車高     2.85メートル

全長     7.3メートル

自重     27トン 

懸架装置   水平対向コイルスプリング+独立懸架

最高速度   52km/h

航続距離   300km

主砲     一式76ミリ戦車砲1門  砲弾65発

機関銃    一式車載機関銃2基    銃弾3600発  

装甲     丙種装甲板使用につき従来装甲の8割増し相当

         車体前面 60ミリ

         側面   30ミリ

         後方   30ミリ

         上面   15ミリ

       砲塔正面   80ミリ

         側面   40ミリ

         後面   30ミリ

         上面   15ミリ

エンジン   三菱統制型二式空冷4ストロークV型12気筒450馬力

乗員     5名


「う~~ん。凄すぎる」




次回更新 7月31日 05:00


砂漠回は今回のみかな。また書くかもしれません。

あいつが現れる前のファルケなら遅いし旋回しか能がないから、遣り様はいくらでもあった。*

マルセイユが隼と戦ったらどう思ったか。撃墜王の言い草です。隼ファンの方ごめんなさい。

だがヤパーナは誘いに乗ってこない奴が多い。*2

空戦訓練で九七戦とか隼を相手にしているから。それに比べればマルセイユの旋回は甘い。多分。


陸軍の動員が少ないので、日本国内の産業にしわ寄せが少ないです。生産数もかなり上がるのではないかと思います。


ホ103の弾ですが、信管に空気信管を最初から採用出来てしまっています。誰か入れ知恵をしたに違いない。

ヤパーナでも使い方はよかったかなと?

丙種装甲板と書いてありますが、ただの超合金丙です。

陸軍海軍とも予算の関係で装備の共通化や共同開発を進めています。

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[気になる点] 二二型ならヘルキャットの相手出来るよね?
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