閑話 水兵は夜戦の夢を見るか
暑苦しい時には夢見も悪くなるというもの。
丑三つ時更新。
ソロモン海
先手を打ったのは水雷戦隊だった。電波の反射を頼りに敵へと向かう。
「電探長。敵艦の艦種までは判らないのだな」
「はい。戦艦2隻を含む艦隊と言うことは判ります」
「ふむ。艦長、敵に指向出来る主砲全門吊光弾用意。最大射程で敵後方へ扇状に撃て。装填出来次第発砲して良し」
「はっ。吊光弾、敵後方へ最大射程で撃ちます」
「頼む」
5分後。第三水雷戦隊旗艦那珂から6発の吊光弾が敵後方に向けて発射された。
「那珂発砲」
「何?」
比叡艦橋では突然の発砲に驚いている。比叡は敵水雷戦隊との交戦で中小口径弾多数を被弾。通信も電探も作動不能だ。舵取り機室への被弾は致命的だった。舵がやや取り舵のところで動かなくなってしまった。現在は左右スクリューの回転を調整することでかろうじて直進している。速力も出ないし、もちろん砲戦が出来るような直進など出来ない。砲戦などしても弾がどこかへ着弾するだけだ。
オルジスでの通信は出来るが那珂は遠く、火災を起こしている艦の明るさで読み取れないこともある。
「敵戦艦は新型」
「新型か」
「比叡が逃げ切れません」
ブーゲンビル島南島海域からラバウルに向かって航行している。敵は針路の横から近づいてくる。
「霧島、増速します」
「霧島は何をする気だ」
「霧島よりオルジス。読みます『我、敵戦艦と雌雄を決せんとす』以上」
「勝手なことを」
「司令官。霧島に任せましょう」
「本艦がこれでは致し方ないか」
「信号手。霧島に返信「必勝を信ず」」
「参謀長。損傷艦を比叡が護衛する。比叡に続くよう信号を出してくれ」
「了解しました」
「敵戦艦乙、発砲」
「乙がか。甲はどうしている」
「発砲しません」
「参謀。何か故障でもしているのかな」
「あり得ますな。なら良い機会です」
「うむ。艦長。増速、前進一杯。進路このまま」
「機関、増速。前進一杯。舵このまま」
「信号手、通信。オルジスと無線で「我に続け」」
「「了解」」
(おい。そっちへ向かうと敵の魚雷が)
(ああ。霧島に砲撃が集中している)
ブハッ
ひどい汗だ。あれは夢か。ひどい夢を見た。
俺は駆逐艦の見張り員。1等水兵だ。
周りの奴らもハンモックでうなされている。
もうこんな暑い海域は嫌だ。
毎日暑いですね。
皆さん健康に気をつけて、悪夢など見ませんように。
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