閑話 海防艦と駆逐艦と改装
本日3話。閑話のみ。
書いてあって入れ忘れていた話がありました。
閑話で追加。
艦政本部では、急速に高速化する商船への対応で頭が痛い。
新たに組織された海上護衛戦隊からの要求が厳しい。4号型は高速で良いが足が短い。5号型でも足りない。駆潜艇は安くて良いが小型で能力に限りがある。特に航続距離が足りない。
そこで900トン級の大型駆潜艇を考えた。海防艦である。艦種別で艇と艦では扱いが違う。艦なら艦長は佐官だ。佐官のポストが増える。守られる方も艇より艦の方が気の持ちようだが良いのでは無いかと。
予算はどうかと海軍省に問うと、陸軍が大陸戦力を大幅に縮小したので予算はある。大和は無理だが、小型艦艇なら回せると。
量産性を優先し、従来の占守級択捉級のような豪華な造りにはしない。使用場所は南方が主体であるので通風に配慮した船体設計となった。
第一弾が御蔵級だった。
940トン。最大速力23ノット。巡航18ノットで4800海里という性能は実用上問題なかった。出来ればもう少し速く足が長い船がいいが、対潜対空能力の強化と引き換えだった。主機と燃料タンクを大きくすれば良いのだが、対潜対空能力の強化で大幅な人員増となってしまい、居住性を確保するために大型主機と大容量タンクは選択されなかった。
御蔵級
排水量 940トン
最大速力 23ノット
航続距離 4800海里
主砲 短10センチ単装2門 前部1後部1
機銃 ボフォース40ミリ連装機銃2基
九九式三号一型20ミリ単装機銃4基
爆雷 対潜迫撃砲 1基 (ヘッジホッグ)8射分
投下軌条 1基 爆雷40発
Y型投射器 1基
電探 対空見張り 1基
対水上見張り 1基
射撃照準用 1基 高角測距儀は簡易型
水中測的 水中聴音機 1基
探針儀 1基
爆雷はヘッジホッグのみで十分とされた。しかし、後に投下軌条1基と投射器2基に爆雷40発が装備された。
戦時に入るとさらに量産性が叫ばれ、平均建造期間4ヶ月の鵜来級海防艦が出現した。御蔵級は11ヶ月である。御蔵級後期型は9ヶ月であった。後期型は日振級とも呼ばれる。
各種合計で80隻が就役した。
駆逐艦は、夕雲級が艦隊型駆逐艦の決定版とされ後続艦の計画は立っていない。対米戦を視野に入れると夕雲級量産は無理がある。夕雲級は平時に丁寧に作られる艦だった。艦隊防空の切り札といえる秋月級はもっと厳しい。量産など無理だった。超高速艦が試験的に建造されるが試験で終わるだろうという空気が強い。秋月級より高価なのだ。
そこで、そこそこの性能で良いので量産性に優れた駆逐艦をとなった。性能で揉めた。そこそことは?発射管は8射線確保か?主砲は?
検討を重ねた結果、出た答えが松級である。
基準排水量 1500トン
最大速力 30ノット
航続距離 7000海里
主砲 短10センチ 単装3門 前部1後部2
機銃 25ミリ連装機銃4基
魚雷 61センチ酸素魚雷4連装1基 予備魚雷なし
爆雷 投下軌条 2基 爆雷60発
投射器 2基
電探 対空見張り 1基
対水上見張り 1基
射撃照準用 1基
水中測的 水中聴音機 1基
探針儀 1基
初春級をいじってと思ったが、量産性の良い船では無い。やはり平時に手間をかけて作る船だった。
そこで、駆潜艇や海防艦の設計を取り入れた。想定図は帝国海軍駆逐艦にあるまじき、曲線の存在しない艦になった。曲線はそれなりに有るのだが、あまりに直線基調だった。
しかし、これでも戦時量産には大きいとされた。
基準排水量 1300トン
最大速力 27ノット
航続距離 5000海里
主砲 短10センチ 単装3門 前部1後部2
機銃 ボフォース40ミリ連装機銃4基
九九式三号一型20ミリ単装機銃8基
魚雷 61センチ酸素魚雷4連装1基 予備魚雷なし
爆雷 投下軌条 1基 爆雷30発
対潜迫撃砲 1基 (ヘッジホッグ)4射分
電探 対空見張り 1基
対水上見張り 1基
射撃照準用 1基
水中測的 水中聴音機 1基
探針儀 1基
これが最終要目だった。
九九式三号一型20ミリ単装機銃は、日本同様対空火力に悩んでいるイギリスがイスパノスイザHS.404を使っていることを知り、じゃあ九九式二号銃を艦載用にしようと。
単装で防楯付き。60発ドラム弾倉。マウントを付け初弾装填を電動では無く人力にした機銃だった。
実際に竣工して配備された時点では
基準排水量 1300トン
最大速力 28ノット
航続距離 4700海里
主砲 短10センチ 単装3門 前部1後部2
機銃 ボフォース40ミリ連装機銃4基
九九式三号一型20ミリ単装機銃8基
高射装置 零式高射装置 1基
機銃指揮装置 機銃指揮装置 2基
魚雷 61センチ酸素魚雷4連装1基 予備魚雷なし
爆雷 投下軌条 1基 爆雷30発
Y型投射器 1基
対潜迫撃砲 1基 (ヘッジホッグ)8射分
電探 十二号対空見張り 1基
二二号対水上見張り 1基
三四号射撃照準用 1基
水中測的 水中聴音機 1基
探針儀 1基
艦隊戦で水雷突撃は難しいが、艦隊戦でも戦艦や低速空母の守りには十分な性能を持つ。海防艦や駆潜艇の上位艦種としてなら十分すぎる性能だった。海上護衛戦隊でも配備を渇望したという。
この駆逐艦は通称丁型と呼ばれ、1000トンを超える1等駆逐艦で有りながら名前に植物名が付けられた。
この命名はヨーロッパ大戦で活躍した樺級にちなんで付けられたのではという億測もある。
終戦までに42隻が就役。
航空戦隊付属駆逐艦は秋月と照月の秋月級2隻を除くと、月は月でも睦月級という古豪だった。
主砲を全部降ろし、1番と4番主砲跡地に短10センチ高角砲を搭載していた。2番3番主砲のあった場所にはボフォース40ミリ連装機銃を搭載している。日本最初の電探連動高射装置を試験的に搭載するなど最新兵装のテストベッドでもあった。
水雷兵装も魚雷設備と機雷設備は撤去され爆雷のみとなっている。爆雷はイギリスから情報提供のあった対潜迫撃砲を前部発射管跡に搭載した。ヘッジホッグを搭載するのに都合良い場所がそこだった。ヘッジホッグ搭載と合わせて、音波探信義も最新の九九式になっている。睦月級と神風級は運用結果から全艦改装された。
その結果が、秋月級・夕雲級・阿賀野級・翔鶴級・大和級などにも反映されている。
練習艦に改造される予定だった5500トン級初期の球磨型5隻だが、大井と北上は対米戦の必殺兵器として改造された。九三式魚雷を片舷20射線。両舷40射線で敵艦隊に打撃を与えようという構想の下に。
船体に大型バルジを装着。4連装発射管10基と40本の魚雷は重い。機関は舞鶴合金と日本海技術研究所の重油バーナーを採用して最新型に換装された。7000トンまで増えた船体を34ノットまで加速させ7000海里の航続距離を得る。
実際に重雷装艦として運用されたのは1回で、今後は機会も無かろうと言うことから発射管を撤去。跡地に7番砲が有った場所に短10センチ高角砲を、発射管の有った場所にはボフォース40ミリ機銃連装10基を設置。艦隊防空力の強化になるはずだった。
次回更新 7月29日 06:00