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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第92話 竜の翼と怪光線

 みんな靴に関しては喜んでくれた。そして靴を履くなら腕も‥‥ということになって、手袋や腕全体を護るためのものを作りまくった。


「この素材で服のように作れないか」


 ティアマトは軽装というか、重たい装備を嫌がる。だから肌にピタッと吸い付く柔らかな生地の長袖のシャツと、同じ生地を使って少し厚めに生地を重ねた長ズボンをわざわざ作ったわよ。


 ティアマトはわたしたちの中では前衛で前に出る事も多いからね。上から着る服には、斬撃や衝撃を吸収する素材生地を追加する。急所に貼り付ければ、鎧なしでもいける。もちろん防虫対策も忘れてないわよ。


 お出かけ用と派手なおしゃれ服と洗いがえ用に普段着を二枚ほどあれば、この娘は充分ね。足りなければ言うように伝える。そしてその服の他に、腕貫(サポーター)と拳を守り強化した手袋をつけた。


 動きやすいのと、通気性もよくて防虫効果と火竜の鱗による耐火性もあるので、みんなも欲しがった。


 つい刺激されてティアマトのを先に作ってしまったせいで余計な作業が増えたわ。


 フレミールと復活したノヴェルから魔力は使わせて貰えもらえるにしても、わたし自身だって魔力操作や仕上げに魔法を使う。靴を作った後に全員分はとても無理で、わたしは魔力切れで結局ぶっ倒れたのだった。


 目が覚めると、メネスを抱えて寝ていた。倉庫の方でワイワイ声がするから、みんなは先に起きて食事をしていたみたいね。


「──って、くっさっ。この娘、お酒飲んで来たわね」


「起きたのカルミア。昨夜はメネスが泥酔して帰って来て大騒ぎだったんだよ」


 わたしが目を覚ました事に気がついたエルミィが、魔力切れでぶっ倒れた間の事を説明してくれる。


 どうやらギルマスのガレオンに持ってゆく薬を間違えたようで、ギルマスの頭が再びツルツルになってしまったようだ。


 あれは施術の前の薬だもの。スマイリー君の前に先に使い、それから神の雫(かみのいのち)をふりかけるって言ったのに。


 昨日は慌てて逃げて行ったから、肝心の本命の薬を持っていくのを忘れたのね。


「それで……お酒臭いのは何故かしら」


「メネスも以前のやり取りを利用してうまく立ち回ったんだって。そうしたらギルマスの機嫌が直って、前祝いだと──ね」


 なるほど、はしゃぐギルマスに無理やり付き合わされたのね。一瞬メネスの幸せそうな寝顔を見て、黒パンの検証をしようと思った。でも、そこはわたしのベッドなので止めた。仕方ないのでメネスはそのまま寝かせて、お風呂へ向かう。


「ご飯は?」


「お風呂が先よ」


 即答にエルミィが手振りで行け行けって仕草をする。わたしのことがよくわかって来たわよね、エルミィも。


 それにしてもよ。授業がない方が忙しいっておかしいわよね。わたしが朝風呂に行くなら一緒に行くと言って、先輩とルーネ、それにフレミールもついて来た。


 先輩も今日は宮廷での会議はないそうだ。ただ先輩と一緒に国王陛下と、王妃様の所へ行く予定になっていたので気が重い。


「先輩の靴は、王宮での儀礼用の覆いもつけられますから。試用がてら、出掛ける時に履いてみてくださいよ」


 なるべく予備の魔銃は軽く作ってある。予備なので軽い分、耐久性は低い。足の重さのバランスも何度か合わせたはずなんだけど、不具合がないかを試しておきたいのよね。


「僕も飛べる靴が良かった」


 わたしの靴の性能を知ってからずっとこれだ。先輩がそんな目立つ真似したら、新米冒険者にも射殺せますから駄目なんです。


 もっとも新人のヘロヘロ弓矢のダメージが通るような装備じゃない。そもそも先輩のお尻の重さが重心を狂わせるから、運用は難しいのよね。


「──グエッ」


 背後から先輩に首を狩られた。心の声が聞こえたようね。


「聞こえたよ。戦場はともかく、あの巨大牛人(アルデバラン)のような魔物を相手にするのなら、高さは僕の武器と相性が良いのだろう」


 先輩に限らずエルミィもそうよね。遠距離攻撃で、相手の上を取るのは大きく強い。先輩の装備は、暴発が怖いので一番気を使っているのよね。色々と付属を付けると重くて動けなくなる。


 魔道具や付与魔法などは、便利だ。でも、あくまで後付なのよ。


 当人の基礎体力は変わらないのだから、恩恵をあてにつけ過ぎてしまうと、使えない状況や失った時が危険になる。


 この世界は魔力は豊富でも、そういった事態を結構考えている。異界から来た人の中には、高度な魔法文明が滅んだ世界から来た人もいる。そうした人たちの警告を、どの国も素直に受け入れていた。


「妄想から戻りたまえ。予備の銃を外せばいいではないか」


 先輩に再び首を締められる。先輩ともあろうお方がわかってないわね。あれは浪漫なの。魔銃使いはこうあるべきっていうね。

 

 先輩は基本的に司令官の立場なので、後衛に留まってほしいのよ。本心では、わたしのように長い距離を放てる組み立て式の魔銃を仕込みたかった。エルミィに恨まれるからと断念したのだ。


 予備の魔銃の弾丸には、視認した相手まで超高速で飛んでゆく魔法弾を開発したから眼鏡エルフに文句言われそうね。


「竜翼の破片があったろう。あれで胸当てでも作って、背に盾がわりの翼を仕込めばよかろう」


 首を狩られてわたしが湯船で気を失う前に、フレミールが助言をくれた。おぉ‥‥その手があったわね。


 考えてみると、空中で先輩一人が暴発する分にはみんな迷惑しないわね。────痛いっ、首を絞めながら頬をつけるのはやめてぇ。


 密着する先輩の胸の当たり具合を考えると、急速に膨らんでるのがわかる。背中に柔らかいのが当たる圧が違うからね。


 わたしが男子なら発情ものよ。年齢的に、成長期なのもあるかな。メガネ男子君なら鼻血噴き出していたわね。たぶん男のふりをしなくてよくなって、精神的な抑圧がなくなったからだわ。


 でも男装を続けるのなら、胸の形が崩れないよう気を遣う必要があるわ。優しく形を整えつつ、竜翼もつけてあげようじゃないの。


 服も考え直さないといけない。翼を出す際に破れないよう、長袖シャツを上から着て翼部分を出すのか、先に着てその上から胸を包むのか、シャツごと作り変えるのがいいのか‥‥‥‥。


 わたしが悩んでのぼせる前に、フレミールが湯船からわたしの身体を引き上げてくれた。お世話かけますね。


 お風呂から戻ると、さっそくわたしは先輩専用胸当て(ブラジャー)と長袖シャツを作った。ちゃんと胸から怪光線も出るようにしたわよ。


 ────予備の魔銃まで失ったと思いきや、本当の切り札はここにあった……ってなるようにね。


 怪光線はルーネも起動させられる上に、双丘に挟まれた形で発射可能だ。怪光線は閃光付きと、胸だけに盛りだくさんな仕様にしておいたわ。


 だから先輩。嬉しいからって、わたしの頭を両こぶしでグリグリするのやめてくださいよ。


 先輩の服の基本は胸当て(ブラジャー)を付けて、その上から長袖シャツを着る形にした。怪光線や、竜の翼は飛び出すとシャツが破れるけれど、戻すと自動修復する。


 ノヴェルの専用釜で仕上げたので、シャツの再生効果が高まった。同様に翼の目的も飛翔だけじゃなく、防御を重視している。


 みんなにいま披露すると、収拾がつかなくなるので先輩には試用を控えてもらった。


 わたしの靴は実際は空中を浮揚するように歩くものだけど、先輩の竜の翼は本当に飛ぶ。爆発力のある魔法の玉でも持たせて特攻させた方が強いんじゃないかしら。王族が特攻要員とか、どうかという問題は出るけど。


 エルミィが留守番がてらメネスと、王女さまの面倒を見ることになった。フレミールが変なことを言うから気になったじゃない。


 

 王宮では見違えた姿の国王様が出迎えてくれた。先輩がいてくれてよかったわ。庶民を国王陛下が出迎えているなんて噂が立ったら不味いもの。


「待っていたわ、カルミアちゃん。陛下に負けないよう仕上げてくれるのよね」


 異様に明るい王妃様に背後から抱きしめられた。先輩の背後から抱きつく癖は、この人の真似なのね。抱擁にほんの少し違和感を覚えるのは、気にしないようにしましょうか。


 さっそくわたしは王妃様の施術に入る。部屋には王家に仕えるメイドの子と、先輩にシェリハがいる。


 仲間たちは国王陛下の私室で、騒動後の学園の様子や先輩の話しをしている。陛下もかなり気さくなのよね。先輩の美貌も性格も、良い所ばかり受け継いだようね。


 冒険者ギルドのギルドマスターのガレオンと違い王妃様は先輩に伝えた用法をよく守っていた。快適スマイリー君を使い、美容液で浮き出た余分な老廃物を吸収していく。


 最初の手順を終えた所でノヴェル成分の、再生の込められた薬液を使う。保湿を保ちながら、ゆっくりと丁寧に塗り込み肌に浸透させる。


「終わりましたよ。あとは毎日夜に、身体を清めた後で気になる箇所に薬液を軽く塗り込むだけです」


 王妃様は先輩のお母様だけど、元から若々しい。一度お肌の土台を修復して保持し続けるだけで、充分な効果が得られた。


「シェリハ、鏡を持ってきてみせてあげて」


 王妃様のメイドさんはお茶を取りに行ったのでシェリハに頼む。鏡を見ると王妃様は起き上がり、素っ裸でわたしに抱きつき感謝していた。間違いない、親娘だわ。


 うまくいったし、お世辞抜きでお綺麗になられたので良かったわ。わたしも失敗を理由に首が飛ばずに済んだわ。


 王妃様には服を着てもらい、その間にわたしたちは、一息いれた。その後、陛下の私室でみんなと合流した。


 あの二人の勢いだと‥‥先輩はまた別な苦労をする羽目になるかもしれませんね。

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