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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第91話 フレミール先生のお勉強会

 靴を作るのを決めたのは良いの。でもせっかくなら軽くて丈夫、蒸れなくて快適、足を痛めず虫も来ない靴にしたい。


 どれだけ詰め込むつもりよ、って思うわよね。靴って足に履かせる鎧と思えば付属品でわりとどうにかなるのよ。重装騎士の靴とか靴の中に鉄板が入ってるって聞くし。分解すると部品ごとに違う役割を持たせられるかもしれないのだ。


 巨大牛人(アルデバラン)の皮はそのままだと凄く重くなるので、表皮を剥がし、皮の部分は細かくして別の素材と混ぜて固めるのが最良に思う。


「フレミール、あなたの鱗ってもらえないの」


 古竜級の鱗なら、最高級の靴に仕上げられるわ。


「剥がすのは嫌じゃ。オマエが欲しがるやつは自然に落ちたやつでも良いのだろ」


 ダンジョンへ探索にいった時に、落ちていた火竜の古い鱗をティアマトが集めていたらしい。


 自分自身が宝の山だと理解してないのよね、フレミールは。脱皮でもして火竜の身体まるごと欲しい。


 人化してスマイリー君を使うと、素材は回収出来ない。いつかフレミールの竜化クラスの部屋も欲しいわね。最初にダンジョンでデカブツと会ったくらいの部屋が理想ね。本人も気楽に出来るだろうからさ。


 そこで、みんなでフレミールの掃除をしたいとでも言ってみる。彼女には竜化してもらい、鱗を磨き上げがてら古い鱗を落とす……これなら問題ないかな。


 それにしても、いまは人用のベッドで寝てるのよね。でも重さとか普通なのよね。謎だわ。


 ティアマトの嗅覚のおかげで、鱗や爪の抜け殻みたいなものまで手に入っただけで良しとしましょう。


「暇なら魔力使わせてもらうわよ」


 相性や魔力の扱いやすさは、ノヴェルの方が断然上なのよね。これって当人が器用で細工好きだからかしら。


 ノヴェルはお手伝いも出来るから、おそらく根本的なものだ。素養の問題ね。


 その点フレミールは純粋な魔力が突出している。魔力の容量を比較すると、わたしの魔力がカップ一杯分。ドラゴン娘はこの倉庫三つ分はありそう。それも表面的な魔力だけで。参考にならないのが魔力の本質でもある。


 それでも普通に魔力差がありすぎる。はぁ、天才魔女って言われていた頃のわたしが懐かしいわ。


 フレミールの魔力で、巨大牛人(アルデバラン)の素材とフレミールの鱗、ハルミ竹の皮やソウキの枝と混ぜていく。


 ルーネからもらったマンドラゴラの根は細くて柔らかいので、水につけて泥を落としておく。


 羊やクロウラーの繭とか綿の沢山採れる地域なら安く衝撃緩衝材を作れる。


 靴用に素材の用意はしてある。でも、わたしは魔力を通しやすい理由もあって、あえてマンドラゴラの根を使う。だって、豊富な魔力源があるのに使わない手はないでしょ。


 それにあの子たちの根は植物由来だからか、水気を魔力に変える。蒸れない靴って快適なのだ。


 魔力提供の見返りに優先順位を変えて、フレミールの靴を一番先に作ることにした。みんなの足型は取ってあるものの、本物の足があった方が調整しやすいからね。


「くすぐったいのじゃが」


 くすぐってるんだから当たり前。人化してると言っても竜なんで、人化した際の足の感覚を知りたかったのよ。

 

「人化を解くと、着ている服とか靴はどうなるのかしら」


「壊れることになるのう」


 そうだよね。装備品は壊れるものだけど、人化を解く度に壊れていたら困るわね。

 

「ワレの魔法で仕舞えるようにする。その、虹色の鉱石(カルミアタイト)とワレの魔力を込めた金で首飾りを作れるか」


 この竜も、わたしの鉱石狙いだったのね。いや、貴女はもう魔力必要ないでしょ。


「ワレの魔力を持ってしても勝てぬものは結構おる。オマエの存在はワレの力を引き上げてくれると思うたのじゃ」


 騙されやすいくせに、計算高いドラゴンだこと。確かに一番高く売れる状況だったものね。いまも錬金術によって作り出せる収納術のコツを、首飾りを作る事を条件に教えてくれた。


 わたしが独自で開発した収納や非常口は、フレミールから言わせると不安定で壊れていないのが不思議なくらいだそうだ。壊れないのは多分‥‥ノヴェルの力のおかげね。


「オマエの魔力ではノヴェルの力を借りて、こうした空間を確保してから収縮した方がよかろう」


 わたしの魔力だけで空間をつくり維持する。ものを収容するために収縮したり拡大したり出入りさせる。そうやって、ものを損壊させずに行うとなると、リュック一つ分くらいの大きさで、簡単に魔力を使い切る。


 一度魔法収納具を作ってしまえば、消費魔力は減るけれど、魔力の維持と、使用時の魔力消耗が激しいようだった。


 ノヴェルと協力すれば少し不便さはあるけど、疑似収納が使える考えは間違いじゃなかったようだ。


 ルーネの鉢植君を指輪サイズにして、習った収納術を組み込めば魔力消耗も抑えられるわね。


「帰郷するのなら、こことアストの部屋の倉庫は閉じた方が良い。留守中に不心得ものが入りこまないと言えんのだろう?」


 留守中────というかいまも、わたしたちを探りに来る気配はある。誰かしらいると近づいて来ない。みんなが離れる時は、迎撃用風樽君がうろつくようにしている。スただ弱いので強行されると負けだ。


 長期の留守は鍵を寮長に預けるし、わたしの魔力供給が切れてさそまうので防犯上は確かに危険だった。

 

「どうしてドラゴンなのに、そんなに人の社会に詳しいのよ」


 ダンジョンの中に街でもあるのかしら。ドラゴンが徘徊する街とかどれだけデカくなるのよ。


「ワレが元々いた国にはドラゴンたちの巨大な都市もあったゾ。巨人共に、街のいくつかは壊されたがのう」


 あのデカブツのような大きさの、人族型の巨人もいるとの事。隣の大陸に巨人のつくる国があるようで、フレミールのいた国は、人の国を挟んでそのもっと東にあったという。

 

「話がそれたの。とにかくまずは収納をつくれるようになるのじゃ。それから靴と装備じゃな」


 なんか言葉を濁したわね。巨人は確かドワーフの国の海を越えた先にある国。いくら巨人でも、途中にいくつかある人の国を無視してドラゴンたちと戦うわけない。


 古竜だし、わたしたちの知らない歴史を知っているのは当然か。話したくなれば、またこうして勝手に教えてくるわよね。



 わたしはフレミールの首飾りをつくった後に靴と、靴用の下着となる足布を作る。いわゆる靴下(ソックス)と呼ばれるものね。靴下の素材はエルミィがくれたシーツだ。足も快適な生地に包ませたいよね。


 あの娘、高級なシーツを何枚持っているのよって思う。エルミィの故郷の特産品らしい。そりゃ、お金あるわけよ。あの高級シーツはわたしたちも重宝してるもの。


 靴には衝撃を緩衝する素材たけでなく、履き心地を高めて快適に保つ工夫はしている。靴下はより快適にするのと、中を汚さないための保護も兼ねる事になる。

 

「フレミールにはあまり必要なさそうだから、付与はヘレナが戻るまで待って。あの娘の方が強化魔法得意だから、魔晶石に魔法を取り込んで仕上げるわ」

 

 フレミールだけではなく全員、速度強化を施したい。あと、地揺れ対策に消音を兼ねた大地の魔法を靴底に貼り付け、溶岩帯での活動を考えて火竜の鱗で靴の外側を包むように覆った。

 

 先輩と王女さまとわたしの分は長靴(ブーツ)型にしている。仲間たちの中の体力の順位を考えた時に、わたしは論外、先輩と王女さまも基礎体力は一般人並なので付与効果を高め、脱がしづらくするためだ。


「自分たちが履くのも脱ぐのも大変ではないのか?」


 それは承知の事。それに三人の長靴(ブーツ)には別の仕込みがある。

 わたしたちの世界よりも魔道具技術の発展した、異界の道具について書かれていた本をおじいちゃん先生の所で見たのよね。


 あの本自体は各世界の異界人語録のようなものだけど。


「先輩の長靴には、予備の銃と弾薬仕込みナイフをつけるの。ナイフは自決用になるかも……だけどね」


 あまり先輩に持たせたくない代物だ。細身の剣もあるし、二丁の銃を持たせているので今更かな。


 王女さまには、鞭だ。魔力がなくても魔晶石でかなり自在に動かせる。なんか、そうさせろって声がうるさいのよね。


 刃物はわたしにプスッとして来そうだから、もう片側には回復薬などの収納にした。割れにくい小瓶に非常用の各種薬を常備させておく。


 すでに本国から見捨てられたとはいえ仮にも王女さまだ。この先、窮地に陥る可能性はあるとわたしは考えていた。だから備えておきたいのよ。


 残ったのはわたしだ。ぬっふっふ〜、わたしのは反重力装置を仕込んだ特装仕様よ。これを履くことで空を歩けるのだわ。両足の靴だけでわたしには実は重い。まともに歩けない。だったら、重さをなくせばいいのよね。


 靴に組み立て式の簡易投擲器を仕込んだせいなんだけど、わたしが戦いで役に立てる唯一の武器だもの、常に持ち歩きたかったのよ。


「ワレもおるし、戦おうとせずともオマエ達は飾りで良かろうものを」


 かぁ〜〜〜、ドラゴン様ともあろうお方が、戦いを否定しちゃ駄目じゃない。


 錬金術師の戦闘能力はね、万能であるべきなのよ。多様な戦いに対応し、回復までこなせるから強いのよ。


「じゃから、戦うから離れんかい」


「仕方ないわね。わかっていないようだから秘密兵器を見せてあげるわ」


 わたしはフレミールの眼前に小さな収納ケースのついたロケットを見せた。


「ほぅ、錬金釜か。小さいが、先程の収納術を応用したのじゃな」


「ヌッフッフ〜、これさえあればどこでもいつでも錬金術が使えるわ。大きさ限定だから、作れるものは大したものはないけどね」


 大きいものは、投入時に余計な魔力を持っていかれるから駄目なのだ。どこかの王女さまのせいで、色々考えさせられたわよ。


 フレミールには呆れられた。でも、みんな最初はそういう目で見るから慣れたものだわ。


 ヘレナやティアマトにシェリハのものはより軽く、偵察に出るエルミィやメネスのものは消音を強めた。


 ノヴェルのは本人の希望で水の上を歩けるようにした。川でも海でも渡れるようにしたわ。


 一番苦労したのはルーネの靴だ。あの娘の靴もちろん専用サイズ。鉢植から出ても動ける範囲を広げ、鉢植がなくてもわたしの靴のように空中を歩けるようにした。


 実際にはルーネに合わせて作るのは無理だったのよね。まず普通につくり、フレミールに収縮してもらって、サイズを合わせることにした。


 なかなか靴に関しては想像通りにうまく出来たと思う。魔力をフレミールから得られているので、わたしの地力を越えた素晴らしい装備品になったのだ。

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