表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
6/199

第6話 付与魔術科

 付与魔術科の授業は、同室のヘレナと一緒なので気分が上がる。入学試験は誰でも受けることが出来て、誰でも入れるのが魔法学園の売りでもある。


 その代わりに受験料も入学費用も、貴族学院に次いで高いというだけあって、庶民の割合は実際は殆どいないに等しいのよね。


 昨日会った眼鏡エルフのエルミィだって、臨時講師に落ちたとはいえ魔法学園の講師を務める兄がいる。エルフの貴族出身らしいからね。ヘレナの話しでは、揉め事をおこした娘も他国の富裕層の子だ。おそらく高位の冒険者の子と言われている。


「わたしの心の安寧はヘレナだけよ」


「また、そんな事を言ってる。魔法学科には冒険者志望の子もいるし、治癒関連や薬師にだって一般人は多いみたいよ」


 選択科目の問題で、研究にも多額の費用のかかる錬金術は商売に向かない学者向けの学科という事だ。


 わたしのように個人商店をやっていて、錬金術師になろうなんて考える人はあまりいないわけなのよね。王国専属の研究室だって、新人を簡単に入れる余裕はないからね。


 錬金術に手を染めるよりも、やるなら商売にもつながる調合関連に行って、薬師の資格を取る方が主流というか現実的だ。


 では何故少なからず錬金魔術科に人が集まるかと言えば、ダンジョンや魔物の存在が大きいとわたしは思っている。


 例えば討伐証明となるゴブリンの角も、錬金術を知り鍛造のために錬成術に昇華させれば鉱石と混ぜて質の高い金属へ変えられる。まさに錬金術の醍醐味というもの。


 いらないものを有効活用出来るようにするのが錬金術の利点よね。


 魔物の素材の大半は魔晶石なのだけども、錬金術で使いやすい結晶に変えて初めて効率よく使える。 


 寮で使っている魔晶石の欠片もそうして出来た産物で、腕のある術師なら再結晶化も可能だ。手間や魔力にかなり余力がなければ、購入する術者ばかりだけどね。


 錬金術の名前の示す通り、錬金術を極めれば金の錬成も可能になる。ただの石ころが金になるかもしれないなんて、一攫千金を夢見るものが後を立たない魔法なわけだわ。


 ────成金術と卑下された呼び方をされるのも、致し方ない面もあるわね。


 でも実際に金を生成するには、超高温をつくり出す魔法と、その温度に耐えられる魔導鉱炉や特殊な結界が必要になる。


 魔法を知らない素人ならいざ知らず、錬金術に少しでも足を踏み入れたものなら既に常識として知られている。


 そんな学者的な錬金魔術科と違って、付与魔術科もヘレナの言うように

一般人が目立つくらいはいる。


 冒険者も銀級くらいになれば高額報酬の依頼もあって稼ぎがいいものね。

 金級なら貴族扱いになるので一般人や庶民呼ばわりするかどうかは微妙になるけど。


 付与魔法は特殊な魔法の一つで、ヘレナのように自分自身に使うタイプが大半だ。能力を高めたり耐性を上げるものと、わたしのように道具に使うものがいる。付与師は職人が多くて、最近はなり手も少ない。


 付与は下手な魔法攻撃よりも、実は使い勝手は良いのよね。筋力を上げれば大剣だって軽々振り回せる。脚力を上げれば馬より早く走れる。


 視力を上げて遠目の魔法がわりにつかうなど、個人的に活用法の幅が広いのが特徴ね。


 わたしのような物への付与は剣に魔法を付与して魔法剣にしたり、装飾品などに付与して、毒を防ぐとか補助的な効果が得られる。


 効果や持続時間は術師の力量次第なので、半永久的に装飾品に付与するとなると大量に魔力を消費する。


 便利だけど市場に魔道具が溢れていないのも、そういう理由からというのがわかりやすい。


 そして、悲しい事にわたしの付与のタイプは人気があまりない事情がそこにある。


 何故かって?


 それは魔導回路や刻印を用いた、魔道具ならぬ魔導具を用いた生活用品が今の主流だからだ。


 魔晶石があれば半永久的に使用出来る魔導具と、術師の力量次第で量産の難しい魔道具となれば、職人は食べていくために魔導具を作る方を選ぶ。


 魔力付与は回路をつくる時と刻印を刻む時に軽く流すだけで済むし、失敗が少ない。早い話し沢山作って沢山売れる方を選ぶだけだ。商人も仕入れの関係で売れる方を選びがちだから。


 壊れる事が前提にある武器や防具などは、まだまだ魔道具の方が需要があるんだけどね。


 わたしが受験料を稼いだように、ダンジョンへ帯同してその都度付与するっていうのもアリだ。装飾品なら魔力も消費が少なく済むので、これも魔道具がいいかな。


 まだまだやれるよわたし、と考えていた所でヘレナから肘でツンツンされた。一人の思考の世界に入りかけたのを気にかけて止めてくれたのだ。


「ありがとうヘレナ」


「どう致しまして。昨日の錬金魔術科では大丈夫だったの?」


「うん。あっちは同じ初心者向けの講習でも実技ありで飽きさせないように工夫してたからね」


 錬金魔術講師のエイヴァン先生は胡散臭いし、いけ好かない。


 でも流石に高名な冒険者の講師だけあって、授業がまあまあ面白いのだ。初日の授業こそ、エルミィに話しのネタを一つ潰されて泣かされていたけどさ。

 

 最初の方は退屈な授業が続くかもと思っていたのに。


 エルミィのお兄さんはきっと付与魔術科のこの講師の先生みたいな感じだったのかな。


 ……教科書通り教えるって悪い事ではないにしても、本当に教科書読むだけっていうのはどうかと思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー用
 推理ジャンルも投稿しています。応援よろしくお願いいたします。↓  料理に込められたメッセージとは
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ