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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第57話 問題児たちの親衛隊

 わたしたちの部屋の新しく作った倉庫内に小部屋を用意してある。非常口はその小部屋に設置した。


 先輩の部屋に非常口を直接設置すると目立つので、ノヴェルに頼んで倉庫をもう一つ作ってもらう事にした。先輩の部屋の倉庫から、わたし達の部屋の倉庫へとお互いに移れるようにしたのだ。


 倉庫の入口は一応飾りの垂れ幕などで隠し、鍵付きの扉にしておく。探索者なら簡単に見つけてしまうかな。でも、ないよりマシだからね。


 倉庫の設置はわたし一人では無理だ。良い機会だからと、顔合わせがてらみんなで先輩に挨拶をしに行く事になった。護衛に関しては、その時に決めようという話しになった。


 みんな王子としての先輩の姿は見ているのよね。本来の姿はわたしの話しを聞いただけだから、不安なのだと思う。わたし……先輩のことは正直に伝えているよね。


「よく来てくれたね。僕がこの国、ロブルタ王国の第三王子アストだ」


 ────本名は知っているので割愛したみたい。

 

「カルミアと同室のヘレナと申します。お会い出来て光栄です、アスト第三王子様」


 おぉ、ヘレナが格好いい挨拶で名乗ったよ。騎士の修行がこんな形で役に立つとはね。

 

「初めまして……ではないですね。エルミィと申します」


 エルミィはエイヴァン先生絡みで王子と会っていたからね。


「ボクはティアマトだ」


 ティアマトなりに丁寧に挨拶しようとしていたけど、伝わるかな?


「おらはノヴェルだよ。よろしくするだよ」


 ノヴェルは誰にも知られていないけど王女だからね。かわいいけど挨拶もきちんとしていた。


「わたしはカルミアと申します。改めてよろしくお願いします、アスト王子様」


 なんとなくみんなに釣られて挨拶をしたら先輩だけでなく、仲間達にも冷めた目で見られた。なによ、庶民だって挨拶くらい出来るわよ。


「王子……いえアスト先輩。私、すごく先輩を尊敬していたので、そう呼ばせてもらいます」


「構わないよ。でもそんなに尊敬されるような事あったかな」


「アレです。あんな恥ずかしい事を王族の方に強いるカルミアもおかしいのですが、アスト先輩も危ない人だと思われるので注意して下さい」


 おっと、尊敬しつつもヘレナの注意が先輩に向かったよ。ヘレナの指差す所には、男子寮から持ってきた貴人の嗜みが山のように積まれていた。


 いきなり危ない人呼ばわりだったけれど、ヘレナの事を聞いていた先輩はむしろ注意されて嬉しいようだ。


 先輩はともかく、ヘレナがわたしをおかしいと言った事には、抗議したいけどね。


「私も先輩と呼ばせてもらいますよ。もうご存知でしょうが、カルミアは頭は良いけれどおかしい娘です。絶対にバカな事を仕出かすので、何かあればすぐに言って下さい」


 眼鏡をクイッと直して、エルミィがわたしへと釘を刺すように言う。おのれ眼鏡エルフめ、ここはわたしじゃなくて先輩を言葉で刺しなさいよね。


「ボクは困ったら駆けつける」


 ティアマトは、簡単だけど直接的でわかりやすい。わたし達の中でも一番頼りにされているのは、彼女だからね。


 環境がきな臭くなり、危ないようならティアマトには先輩の側にいてもらう方が良いと思う。


「おらも頑張るだよ」


 天使の槌鉾(エンジェルピック)を取り出してフンスッとする姿に、先輩の目がキラキラしてる。


 ヘレナと並べてみてよ、二人が愛らしくて心がどうにかなっちゃうわよ。


 ここには連れて来てないアルラウネのルーネも可愛いから、早く先輩に紹介したいわね。


 顔合わせは人見知りの先輩が大人しいのと、ほぼ悪役なわたしをダシに会話したので上手くいったと思う。


 わたしがなんだかんだで先輩の醜態を晒していたので、先輩に同情の目が集まったのだ。

 

 七不思議騒ぎに乗じてわたしを始末すべきだったのでは……と本人を前に議論するのはやめて欲しい。そもそも何故みんな先輩の肩を持つのよ。


 倉庫と非常口のチェックをして、問題ないか確認する。倉庫には扉が見つかれば誰でも入れてしまう欠点はある。


 一応、非常口にはわたし達が共通で持つ首飾り(ネックレス)と、合言葉が必要になるようにしてあるんだけどね。


 ────合言葉の調整をしている時に、涙を流したメネスがやって来た。ギルマスの書状を携えて、泣きながら愚痴るので思わず叫んだ【うるさいよ、ハゲ】 が鍵になってしまったわ。


 もちろんメネスの涙は、毎回しっかりと回収してるわよ。この娘は泣きながら愚痴るわりに腹黒くてたくましいのよね。だから最初は成分抽出は失敗したかと思ったわ。黒ずんでくすんだ灰みたいな色だったから。


 笑顔でギルマスからの召喚状を破り捨てると、またネチネチ怒られる〜と泣いてくれた。


 わたし的には成分抽出がはかどるので、呼び出しには応じる気はないのよね。むしろ、ガレオンを応援してるわよ。


 ────仲間からの視線が痛い。あなた達の装備にメネスの涙も欠かせないのよ?



「……これは楽しいな」

 

 先輩が非常口を行ったり来たりしてはしゃいでいた。宮廷魔術師なら、転移の魔法くらいは使う人がいそうな気がするのに隠しているのかな。

 

 移動には魔力が少し必要なんだけど、先輩は魔力あるからまだまだ余裕そうだね。おかげでいい罠を思いついたよ。


 わたしたち以外が通る時は、魔力を大量吸収されるって罠ね。先輩の錬金釜は吸収能力付くのでちょうどいいし。


 この罠を壊すとさらに別の魔力吸収の罠が、発動するようにしておこう。


「先輩。出来るだけ外されにくい場所や、見つけにくい場所に、装備出来るものを錬成して付与しますよ」


 候補は髪の毛の中、下着の上下、靴下や足の爪や指の間などだ。もちろん普段着る制服や私服にも仕込むのを忘れない。細かな付与でも、強化があるのとないのとでは違うからね。


 相手の留学生達は、この国を奪いに来る尖兵だもの。戦うにせよ、逃げ出すにせよ、仲良くするにせよ、出来る準備はしておきたいわ。


 先輩が逃げて来た後に、さらに別の場所に逃げられるように、わたしが選んだのはダンジョンの中だ。


 おじいちゃん先生から本を貰った時に、術師の記憶で思い出したのよね。


 深層へ向かう隠し扉にはあったけれど、ダンジョンへ侵入する抜け道はまだ見つけられていないな、って。


 ノヴェルに確認したところ外部からの入口は、もう時間が経ちすぎてわからないようだ。でもダンジョン内の出入り口は覚えていた。

 

 早めに脱出口を確保しておきたいよね。 次の休みの前に延期されまくっていた、久しぶりのダンジョンへ行くとしますか。

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