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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第51話 学園七不思議 ③ ややこしい先輩

 ────わたしを狙う者の心当たりならある。イキリ男子君といた取り巻きの一人、メガネ男子生徒だ。あの時、叩けばいくらでも埃が出る身だと啖呵切っちゃったからね。


 恨みを買った覚えはないのに、最初から敵意も高かったし。先輩に不毛な恋をしてそうだもん。


「カルミア、さすがにそれはこじつけ過ぎるよ」


 もともとの的にされていたヘレナが首を振った。メガネ男子生徒が、しゃしゃり出てきたわたしに敵意を持ったにしても、抹殺しようと本気で思っている感じがしなかった。


「じゃあ……誰がわたしを狙うのよ」


 全然身に覚えがない人から狙われるのは、さすがに嫌だわ。


「それは────アスト先輩しかないでしょ」


 エルミィが何をいまさらとばかりに、呆れたように断言した。


「せ、説明してもらえる?」


 わたしを殺すつもりなら、丸裸の時にいくらでも狙う機会あったよね。


「あくまで君の言動からの予想だからね」


 エルミィも、直接会って話したわけじゃないので確信はないそうだ。


「別に簡単に利害を並べただけさ。取り巻きの人たちは、君がいようといまいと実質関係はないだろう?」


 いれば目障りなだけで、いなくなれば「ざまぁっ」て思うだけ。たぶん、あちらから見れば、わたしなどすぐに忘れられる程度の存在だ。


「管理のおじさんは君がいれば利益を、いないと害を受ける事になるよね」


 ある意味互いの利益が一致して、強固な信頼関係にあるのが職員のおじさんだ。


 わたしを排除すれば損をするだけ。だから排除しようなんて考えないだろう。()の絆は強固だわ。


「この三者でアスト先輩だけが、どっちに転んでも利益があると思わないかい?」


 うぐっ、言われてみれば先輩だけがわたしがいてもいなくても利益を受けられる状況じゃないのよ。


 わたしがいれば役に立つものをせっせと運んでくるし、始末しちゃえば秘密が保てる。


「何度か誘いを受けてるのをかわしてる気でいたんでしょ。人族の貴族って執念深いし歪んでるって聞いたよ」


 そういえば、それっぽい事は言ってたよ。逃がす気はないとか、利害の一致で仲良くしているわけじゃないとか。

 

「……王族って面倒くさいわね。頭が完全に病んでるでしょう」


 中途半端に権力もあるから、性分が悪い。わたしが助けを求めれば手を差し伸べ保護してくれるだろうし、逃げ出せば亡き者とするだろう。手に入らないものは壊すとか、王侯貴族って怖いわよね。


「────解決策ってあるかな」


「ないと思うよ」


「ないと思うね」


「やる?」


「おらもやるだよ」


 打つ手はないと、仲間達が声を揃えた。ノヴェルまでやる気になってるし。

 

 うまい話しには罠がある冒険者(チンピラ)の教え通りだったよ。王族に関わった時点で負けが決まっていたなんて理不尽過ぎるわ。


「だいたいダンジョンの(ボス)だって最奥部にいるのが決まりなのに、なんだって王国の頂点が簡単に会える所にいるのよ。素っ裸でさ」


 吠えた所ですでにアリゲーターの沼の巣に落ちてるので、喰われるだけなのが悲しい。


「どっちにしても、アルラウネを討伐して被害を減らす事が先ね」


 アルラウネを使って操る輩を捕らえれば、先輩の追及をかわすためにも手札になりそうよね。


「ほら、いった通りじゃない」


 メガネ男子君と、下級貴族の先輩がアルラウネを使ってイキリ君達を催眠洗脳している所に出くわす。


 上手く誘導したのか、先生方や実力の高い魔法学科の魔剣使いの生徒たちは、貴族館のある庭や講師の居住塔などへ向かったままね。残りの生徒達は校舎内にいるはずだ。


 わたしたちが戻って来た事に、メガネ男子君と旧取り巻き隊が慌て驚いていた。


「なぜ貴様らがここに?」


 そっちが本性なのね。驚いたというより、手間が増えたくらいにしか思ってなさそうね。

 

「その三人を操ってけしかけて、どちらが勝っても処罰するつもりだったのね」


 ────嫌なヤツよね。貴族魔術科での時は、わざと情けないやつに扮して油断させたんだもの。ヘレナとは別の事で、ドヤってほくそ笑む奴がいたと思うと恥ずかしくて記憶を消去したいわ。


 アスト先輩がどこまで気付いてるのかわからない。でもこの問題をややこしくしているのは、間違いなく王子様(アストリア)だよね。


 メガネ男子君は、ムカつく笑みを浮かべてわたしたちを見る。イキリ男子君達を殺せばもちろん処刑もので、傷を追わせても処分を免れない。


 イキリ君達が勝っても騒動の責任を押し付けられて処罰され、わたしたちはついでに始末されるわね。逃げてもメガネ男子君は三人を殺してわたしのせいにするだけだ。


 そうさせないために急いで来たんだよね。おかげでアスト先輩の思惑に乗っかる事になるのは、この際しかたないよね。


「カルミア、終わったよ」


 わたしが一人でブツブツ言ってる間に、ティアマトが操られたイキリ君と女子二人を拳で落としていた。


 ヘレナも一人で旧取り巻き隊を制圧していた。エルミィはメガネ男子君の眼鏡を矢で落とし、鏃のない矢を無防備な額に撃ち込み気絶させていた。


「おら捕まえただよ」


 ノヴェルはノヴェルで、アルラウネを魔力の檻であっさり捕まえていた。わたしはどうせ何もする事はないからね。一人寂しく独り言を堪能させてもらったわよ。ええ、どうせわたしは戦闘ではお荷物ですよ。


「カルミア、君はその──冒険者のチンピラみたいな戦闘思考をどうにかした方がいいと思うよ」


 わたしを狙って来てる相手なのに、戦おうとして怒られるのは釈然としないわ。メガネ男子君なんかは、わたしにもっと話したかったし、ざまぁって馬鹿にしたかったはずよ。


 嫌味に笑顔を歪めたまま、美味しい部分で気絶とか、悲しいわよね。

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