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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第49話 学園七不思議 ① 金切り声の正体

 先輩用の変声器は、上下の歯型に合わせた魔力浸透型の入れ歯にしてみた。取り外し可能な薄い膜のような歯型のカバーを作り、歯を磨いた後に装着する感じね。


 先輩の使っていた変声器と違って、極微量の魔力で地声の発声を変質させる。慣れれば舌にのみ魔力を乗せて発動出来る。

 

「ヘレナ、試してみて」


 ヘレナが珍しくわたしにまとわりついてうるさかったので、歯を磨いて待機させていた。歯型も取ったので、声の調整はヘレナ自身にやってもらう。


「あ~あ~っ──これ私の声?」


 甘えるヘレナは珍しいのからいいんだけどさ、ハスキーな声のヘレナは聞きたくなかったよ。本人は凄く喜んでいる。


 先輩と違って急に声が変わったらおかしく思われるので、普段の使用は禁止よ。それにまだそれは試作だからね。


 声の種類は地声を元にいくつか調整出来るのはわかった。どうせなら口内へ設置する利点を最大に活したいのよね。


 ありきたりだけど毒耐性や解毒や毒への探知とかかな。睡眠や麻痺なんかも必要よね。先輩の置かれるであろう状況を考えると、変声よりも重視されそうだ。


 付与に関してはわたしの後付けも出来るので、先輩の専用釜で出来る付与の浄化をまずはつけておくことにしよう。


 予備は催眠無効化にでもしておこうかな。耐性にしようとしたのに無効化にまで上昇したからね。

 

 わたしの魔法能力の限界はどうしてもある。しかし先輩の新しい専用釜は、吸収能力が高めだ。劣化とか状態異常攻撃に対しての能力が上がりやすいのね。


 上昇しても悪い能力でもないから、状況に応じて後付けの付与で選べるようにした方がよさそうだ。


 先輩は立場的に利用されがちなので、催眠系魅了系耐性があると良さそうだわ。悪い魔法使いに操られないから、いいわよね。

 

 この錬金釜の作成でもう一つわかったのは、わたしと相性が良いというか、気の合う人は錬金効果が上昇しやすい事だ。


 だって以前に職員のおじさんの、頭皮のお手入れで得られた魔晶石があったのよ。それで作った毛生え薬の効果が通常より効果あったのは、見ればわかるものね。

 

 冒険者ギルドのメネスもよく泣くし、あの涙を採取すれば良い成分が取れそうだわ。今度彼女を泣かせて、相談してみよう。


 先輩も早めに道具はほしいと思う。わたしは朝のお風呂場へ行き、お風呂に一緒に入りながら完成した魅惑の美声君(ボイスチェンジャー)の説明をして、二つとも渡した。


 試して気にいった声に徐々に近づけていけば、周りに悟られる事はないと思う。あとは今までのように、基本沈黙の姿勢で喋り過ぎないことね。


 そうした加減は先輩も心得ていると思う。わたしはとやかく言わないわよ。付与は次に納品する時にまで、決めておくそうだ。


 先輩への緊急案件が終わり、わたしもこれでようやくひと息いれられる。



 ────お風呂に入りのんびりと湯船の中でぼ〜っとしていると、他の寮生から噂話が聞こえてきた。

 

「また夜中に聞こえたんだって」


「去年も騒ぎになったやつでしょ」


「今年は校内で前より数が増えたみたいよ」


 真夜中の校内で、金切り声のような叫び声が聞こえるらしい。念のため、そばにいたヘレナ達へと視線を向ける。


 とくにヘレナは変声器を気にいっていたからね。私じゃないと、首をフリフリしてる。違うって言ってるのね。まぁ去年はいなかったから、ヘレナじゃないのわかってるけどさ。

 

 あとは去年も学園にいて、変声器を持つ人の心当たりは先輩にしかいない。ただあの人は精神的に病んで叫びたくなって、夜の校舎を走り回る人でもないのよね。


 知っている人ではないのなら問題ないかな。でも今年は増えてるっていうのが気になるわね。



 次のお休みの日は久しぶりにダンジョンへ行こうって、みんなで決めていた。しかし学園内にいる冒険者ギルドの登録者に、学校側からの緊急依頼が入る。


 夜の学校内を巡回する警備の衛兵さんが、魔力など吸われ衰弱した姿で見つかったからだ。生徒限定の指名依頼なので、わたしたちも受けることになった。


 ────皮肉にも犠牲者が出たおかげで、学園七不思議などと呼ばれた金切り声の正体も判明する。


 マンドラゴラと呼ばれる植物が魔力の多く含まれている土壌や、何らかの理由で男の精気を得て魔物化したと考えられた。


 複数の金切り声は繁殖し、増えたマンドラゴラの魔物化したものだろう。


 昼間は人も多く、魔物達も広大な学校の敷地の何処かに潜り込んで見つけづらい。そのため討伐は夜になってから行われる。


「学校側はギルドに依頼をかけることで、学校とギルドの双方で評価が上がる形にしてくれたようね」


 呼ばれたのはわたしたちのほかに、イキリ男子達の侯爵家の子を中心とするパーティーや、ヘレナやティアマトと同じ魔法学科の先輩後輩パーティーなど、三十名近い人数が集められた。


 講師の先生方も、エイヴァン先生を筆頭に三名のパーティーを二つ作っている。エイヴァン先生達が戦闘を、もう一組は回復役で生徒達の補助にも動くそうだ。


 ダンジョンではないけれど、夜の校舎は見慣れて来た学校と別の建物に感じる。魔力の流れも、魔物化したマンドラゴラのせいなのか、流れがおかしく見えるわ。


 わたしたちがいることで、貴族の坊ちゃまパーティーがビクついて敵意を向け直して来たけれど、睨む相手を間違えないでほしい。

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