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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第40話 指名依頼 ⑤ 生やすものと失うもの

 わたし達は無事に指名依頼を達成して、王都まで戻る事が出来た。帰りの馬車はノヴェルの魔法のおかげで、みんな快適だとはしゃいでいた。


 仲間から褒められてフンスッするノヴェルは飾っておきたいくらい可愛い。


 わたしも馬車に使えそうな発想をもらえたので、ノヴェルの頭を撫で回した。


「────お前たちだけか」


 冒険者ギルドへ行き依頼の報告と、素材の買い取り手続きをしていた所にガレオン(ギルドマスター)がやって来た。


 雰囲気出して、すっとぼけた探りを入れてくる。キッと睨んでやると、目を逸らして退散した。


 はい、これで有罪確定ね。ガレオン(本体)の責任は、頭髪(分身)にとってもらいましょう。

 

 管理課の職員さんも、品薄の素材が納品されてホッとしていた。わたしは他の学科の授業で使う素材のリストをもらい、今回のように授業で困る事のないように気をつけると約束した。


 職員のおじさんは研究熱心なのは良い事だと、笑って許してくれた。

 

 また授業に関係がなくても実験に必要な素材や、珍しい素材などは、予算が余れば入手してくれると言ってくれた。


 貧乏な庶民のわたしにはありがたい話しだわ。職員のおじさんには、ちゃんと効果のある毛生え薬を作ってあげようと思う。


 後日、わたし達が行った農村で調査をしていたメネスさんにより、有毒の(もや)の発生騒ぎが起きたそうだ。


 随行していた村人たちの話しによると、オーガが三体もあらわれ絶望的な中で突然異臭が発生し、オーガは逃げ出し農村付近では見かけなくなったという。


 情報が届き、ギルドでも逃げたオーガの討伐依頼が出されたので、農村付近の安全は確保されそうだ。


 あのとき情にほだされてメネスさんに付き合っていたら、わたし達も事件に巻き込まれて学校へ来れなくなっていたかもね。


 メネスさんはオーガにびっくりして気絶しちゃったみたいだ。薬師のおじさんと衛士の人は、異変に備えて対応出来るようにしていたそうな。


 ゴブリン退治にも入念な準備を(備えあれば憂いなし) を実践してみせる薬師のおじさんは流石ね。ギルド期待の若手斥候(シーカー)と言っても、経験不足は否めないわね。


「よし、これで手続きは終了ね。急いで寮に帰るわよ」


 ギルドの食堂で打ち上げがてら、少し贅沢に外食しようとしていたみんながキョトンとした顔をする。


「お風呂よ、()()()。快適スマイリー君の刑にされても良いなら、飲んで食べていっても構わないわよ」


 ヘレナがビクッと身体を震わせ、ヤレヤレと言った感じでエルミィとティアマトが肩を竦めた。ノヴェルはお風呂好きの良い子なので、お風呂の歌を唄って御機嫌だ。


 早朝に農村を出て、今は昼過ぎなのだ。ゆっくりと汚れを落として疲れを癒やして、それからご飯をみんなで食べに行こうと決まった。


 ────ギルドから帰る間の有象無象は全力無視。どうして冒険者共(こいつら)は、急いでる時や楽しんでいる時ばかり邪魔するのよ。


 他人が楽しんでいるのをみると、悔しい病にでもかかってるのかしら。


 とりあえず寄って来た男の口に試作で余ったくさい玉を放っておいた。実験体に志願してくれるのなら、いつでも歓迎するわよ。


 寮に戻って部屋で旅装を解く。寮に住んでいても、みんながみんなお金のない人とは限らない。


 エルミィやティアマトのように、親に資産があっても宿屋より安心だから寮に行かせる事もあるし、貴族でも伝統的な慣習で寮に入る事もあった。


 だから休みなのに寮にこもって過ごす学生はそれほどいない。まして昼の食事時なら尚更だ。


 ────勝ったわ。わたしの予想通り、お風呂場に学生の気配は殆どいなくて貸し切りに近い状態だった。


「いつもお風呂開いてるけど、掃除とかいつしてるのかな」


「私達の授業中の時間や真夜中にお湯を抜いて、浴槽を磨くんだって聞いたわ。洗い場は状況に応じて利用中でもやってるようだね」


 おぉ……流石物知り眼鏡エルフ、それは良い情報ね。たぶんもう少し遅れていたら、入れなかったかもしれないわ。


 入ろうと思って清掃中だった時には悲しいけれど、手入れをして清潔な状態を保ってくれるのはありがたいと思う。難しい選択だわ。

 

 わたしはこういう日には長くなると自分で良くわかってる。勘みたいなものよね。


「……先にご飯食べに行っていてもいいわよ」


 みんなでのぼせるわけにはいかないので、わたしは一応声をかけておく。


「打ち上げなんだから駄目だよ」


「おら待てるだよ」


 優しい娘たちだよね、まったく。


「わたしの棚に新作の紅茶氷菓子(レッドティーアイス)の試作の素があるわ。ティアマト、お願い」


 ……みんなはあっさりと、お風呂場から上がっていった。ご飯は待つけど、お風呂上がりの氷菓子の魅力には勝てないのよね。いいけどさ。

 

「────やっぱりお風呂はいいわね」


 ほぉ~っとして頭をからっぽにしてると、身体の毒が抜けていくようだ。


 このたっぷりのお湯の持つ魔力を知ってしまうと、あがらう事は難しいというのに。みんな簡単に抜け出せて凄いと思うわ。


「君は凄い馬鹿な事を、真剣に呟いているんだね」


 どこかで聞いた声がしたと思ったら、アスト先輩が素っ裸で仁王立ちしていた。


 男装(おうじ)の時は恰好いいのかもしれないけど、お風呂で後輩の前でする姿勢ではないと思いますよ。

 

「どうして先輩は、わたしがお風呂から出ようとすると来るのですか」


「それは人目をなるべく避けるためだよ。さっきまではキミの仲間がいただろう」


 ······なるほど、それは道理ね。人のいない時間にお風呂に行くと会えるとか、むしろ会いやすくなってるよね。


 秘密の事とかすっかり忘れていて、先輩の事も頭からきれいサッパリ毒素と共に消えていたわ。


「話しは聞こえてたよ。そういう話しを僕にしてくれるように頼んだはずだろう」


 なんか拗ねたような顔になる。えっと、面倒臭いわね。


「こっちも忙しいから、暇な先輩と遊んであげる時間はないんですよ」


 心の内を話せるような、同級生の友達を早くつくってほしいものね。心のない取り巻きは選り取りみどりなのに難儀なものね。


 でも……ぼっちの気持ちもわかるので、わたしの周りで起きた、ありきたりな出来事を話してあげた。探検心とか冒険心は強いようでなによりだわ。


 錬金釜に興味を持ったので、今度成分を抽出させてもらおうと思った。

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