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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第39話 指名依頼 ④ 点数稼ぎは必要悪か

 わたしたちは、山中の薬草は根こそぎ採らないように気をつけて採取を行う。有用性のあるものは、次の機会のために手入れもしておいた。


 まあ……人手がすぐには入らないだろうから気休めなんだけどね。


 採取はわたし、ヘレナ、ノヴェルの三人で行い、エルミィとティアマトと村の薬師のおじさんには周りの警戒をしてもらった。


 おかげで猪が二頭に角兎が三羽捕れたよ。これは農村の人達のお土産にしよう。


 あとはゴブリンやオークに、昨晩とは別のブラッドウルフの群れが襲って来た。思ったより魔物がいるようだわ。この農村、大丈夫なのかしら。


 戦闘は何もしていないけれど戻ったら、オーガの件もあるので階級上げの交渉も必要ね。


 当然報酬も釣り上げる。ギルマス案件だからって、遠慮はしないわよ。


 みんなで日暮れ近くまで採取を続けて、依頼の分と自分達のために使う分を確保した。学園分は納めても、主に使うのはわたしなんだけどさ。

 

 ────久しぶりにがっつり採取出来て満足した。おかげで腰が痛いわね。採取依頼は比較的危険なのに子供向けな理由って、大人は屈んだり中腰の姿勢がきついからだと思うわ。ノヴェルが元気なのは、お子ちゃまだからかしら。

 

 馬車に揺られてお尻は痛いし、採取で腰まで痛いし最悪よ。でも遠慮なく高品質の素材を使えるのは大きいのよね。


 わたしとしては、定期的に採取したいところ。みんなもまたついて来てくれるかな?


 ────薬草の採取を終えて、農村へ戻ると馬車が戻って来ていた。学校の職員の方と衛士さんの他に、建築士のおじさんと治癒士のおじさん、それにギルド受付嬢のメネスさんがいた。おじさんだらけの中、ギルドの制服って目立つわね。

 

「……どうしてメネスさんがここに?」


 新人担当の受付専門らしいけど、暇なのかしら。


「魔物の出没が活発化しているから調べてこいって」


 人遣いの荒いギルドは朝の受付けラッシュでぐったりしていた受付嬢に、有無を言わさず調査依頼を命令したらしい。暇ではなかったようね。


「一人で調査? 探索者(シーカー)と言っても危なくないの?」


 わたしだってこれでも足の速さは自信ある方だ。でも大荷物を抱えて、狼達より早く走る自信はないわね。

 

「このあたりは大した魔物出ないから大丈夫なはずだよ」


「それって以前の情報だから、現状調べに来たんじゃないの?」


 探索者(シーカー)ってもっと慎重な性格だと思っていたけれど、この人は短気だし雑だから向いてないんじゃないかな。


「言いたいことはわかるよ。受付だって、事務処理がそもそも苦手だもん」


 ────向き不向き以前に、なんか色々あるのね。多少きつくても、お給金が良いみたいだから仕方ないのか。それなら仕方ないわ。お金は大事だもの。


「オーガの足跡あったから、村を襲ったのと別の個体がいるはずよ。だから気をつけてね」


 ティアマトが臭いが違うと言っていたので、間違いないと思う。あの娘の嗅覚は信頼出来るからね。

 

「……えっと、あなたたちは協力する気はないのかな」


 どうやら費用削減のため、現地にいる人間と協力して調査せよと言われたらしいね。いや、この場合は点数稼ぎした側に問題ありそうね。


「わたし達は採取依頼を受けて来たのに、何故か()()依頼を受ける羽目になったばかりなんですよね〜」


 メネスさんがス〜〜ッと、目を逸らした。わかりやすっ! 


 ギルドマスターからの無茶ぶりに、この人も一枚噛んでいたようね。何か軽いノリであの娘たち(わたしたち)に任せれば一石二鳥じゃない、とか提言してそうだ。


 わたしは仲間を見る。ティアマトとノヴェルは無関心、エルミィは肩をすくめている。ヘレナは少し心配そうに経過を見守っている。ヘレナ、こんな時まで騎士道精神を発しなくて良いのよ。


「仕方ないから、とっておきの品を渡しておくよ。いい? 囲まれたりして危機になったら、軽く魔力を流して握り潰すのよ」


 メネスさんに渡したのは、改良中の匂い玉ちゃん(くさい玉)だ。


 水で反応をはじめるタイプは、汗をかいた時や不意に雨が降って来た際に、意図してないのに発動してしまう欠点があった。


 改良型は魔力と手の平の体温で反応するようにした。素手で一度持つ必要があるけれど、危機の時に一々水をかけるよりは良いよね。


「ねぇカルミア、あれって前に作っていたヤバいくらい臭いやつだよね」


 エルミィが、可哀想な人を見る目でメネスさんの姿を追った。どうして危機を助ける品物を渡したのに、憐れみを込めた目をするのよ。

 

「──カルミア、恐ろしい子だ」


 ティアマトまで何を言ってるんだか。メネスさんはわたし達側だから、助けるだけだよ。含みはないわよ、ホントに。


 ちゃんとこの前のものより匂いを強く長く続くように、魔力での仕様変更にした時に再調整したんだから。


「カルミア本当に平気?」


 ほらぁ、ヘレナがまた心配しだしたじゃないの。

 

「大丈夫よ。あれはドラゴンだって逃げ出す代物だから、オーガなんか武器を投げ捨てて逃げ出すわよ」


「それならメネスさんも安心だね」


 ヘレナは本心から言っているのだろうけれど、エルミィやティアマトは凄く嫌そうな表情になっていたわね。ノヴェルは大人しい……というか眠たそうね。


 わたしたちは既に採取に行った後で疲れていた。明日は王都に戻っておかないと、学生の本分に差し支えるものね。


 ノヴェルが船を漕ぎ始めたのを見て、メネスさんも諦めたようだ。わたし達を案内してくれた村の薬師の人と、馬車の護衛をしていた衛士の方と組んで明日朝から調査する事になった。


 人の良い薬師さんと衛士さんに、わたしは鼻を塞ぐ栓を三人分と気付け薬を渡しておいた。薬師のおじさんは、何でそんな薬が必要になるか理解出来ないと首をひねっていた。


「危機を迎えた時に、すぐに栓は使って下さい」

 

 何も現れなければ問題ないから、わたしは三人の健闘を祈りながら眠りについた。

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