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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第35話 新・錬金釜 ⑦ お揃いのものが欲しい

「そんなに難しいことじゃないんだよ。キミの目から見た学園の様子や友人からの話しを、僕に聞かせてくれるだけでいいんだ」


 何を要求されるのかと、冷や汗が出たわよ。アスト先輩はそれが一番知りたいらしい。


「キミは研究熱心(バカ)だろう? 腹の内も隠せないような」


 逆らえないと思って喧嘩売ってるのではないようね。庶民的な目で見た感覚を真面目に知りたいらしい。


「王子として頼むと、見たままを伝えてくれないのだよ。不遜というのなら、命令通りに遂行しない事が不遜だと理解してないからね。いや、していたとしても出来ないのだな」


 たとえ王族への不平不満が上がってようと、正直に伝えてくれさえすれば改善や対応のしようがあるものね。


 でも不安になって事実を隠されたり、嘘をつかれたりする方が後々に問題になる。


 ただ……後輩のわたしじゃなくて良いわよね。


「アスト様はもしかして友達がいないんですか」


 初対面に近い後輩を呼び出して、わざわざ頼むような内容ではないもの。


 先輩の表情が曇る。怒らせたかな?


 でもね、王族の先輩権限で何かと面倒事を押し付けられるのは嫌なのよ。


「キミのその遠慮のなさは爽快だな。だが、気をつけたまえよ。王子としての僕は面識のない君を助けてやれないからね」


 求められる対応としては正解なのだけど、先輩は何故かグフッと呻いていた。


 ぬっふっふ、自慢じゃないけどヘレナと会うまでは、孤独を満喫していたわたしには同類の匂いはわかるのよ。


 先輩の警告はたぶん本当になりそう。しつこい貴族令嬢が癇癪起こさないように、わたしが気をつけるしかないわね。


 厄介事付きだけど、先輩の言うように王族とのつながりは将来的には大きい。


 ────ただし沈む船でなければの話なのよね。


 沈むどころか追放とか処罰されかねないから、この先輩とは迂闊に仲良くなれないのよね。


 先輩もそれをわかっているみたい。一度に踏み込まないくらいには、庶民の友人を大事にしようとして精一杯考えてくれてるようだった。


 わたしが帰る前に、先輩からお土産にお茶をもらった。ヘレナが喜ぶわね。

 

「……君は僕と仲良くなるの嫌がってなかったか?」


 わたしがあっさりと物には釣られるので、アスト先輩は自分の対応に自信が揺らいでいた。


「王族のくれるお茶だもの、庶民にはお高くて手に入らない物に決まってますよね?」


「────残念ながらこれは、少し高いが、君達にも買える程度の値段のものだよ」


 でも高い事は高い。値段が高いから美味しいとは限らない。でもこれは香りが良いから当たりだわ。


 先輩が少し嬉しそうにしていた。薦めたお茶が褒めらたからかな。


 わたしは部屋に戻って戦利品をヘレナに渡す。ヘレナは香りを嗅いで、ロブルタ産の物だと教えてくれた。


 お高いお茶の香りが庶民の部屋から漂えば、余計な詮索されるからね。自国の物なら問題なさそうね。


 ────流石は先輩、正しい判断だよ。本当は最高級品でした〜って期待したのに、騙されたわよ。


 わたしが先輩と会った事を、みんなには内緒にするように伝えた。いらぬトラブルを招く事になるからね。


「先輩の事はなるようになるでしょうから放っておきましょう。そんな事より続きよ」


先輩(おうじさま)をそんな事って」


 わたしはヘレナとエルミィが、昨晩丁寧にしまってくれた錬金道具を机に広げる。


 ノヴェルの借りた魔本を眺めていたエルミィとティアマトが、自分たちの部屋から出てきて観察に加わる。


「おら大事に磨いただよ」


 虹色の鉱石(カルミアタイト)はノヴェルの手で磨きがかかって、作成時よりも輝きが増していた。


 自分の成分とか改めて見ると恥ずかしいわね。あとノヴェルが気にいったのか、両手で握りしめて離さないんだけど。


 ちょっと待って。この流れ……嫌な予感がするから、貴女達いい加減やめようね。


 虹色の鉱石(カルミアタイト)造りを眺めていたよね?


 あれ一つ作り出すのに、わたしの魔力が殆ど全部持っていかれるのよ? 


 全員分作っていたら四日もかかるし、素材が足りないのよ。


 ヘレナとエルミィからはウルウル期待に満ちた目で見られ、ティアマトは早くも快適スマイリー君を使って自分の成分作りしてる。


 やればいいんでしょ、やれば。そのかわり、あなたたちの抽出成分も増加します。対価を貰わないとやってられないからね。


 それと、わたしの魔力が枯渇しちゃうから、みんなの魔力も使わせてもらうわよ。


 ……子供だから危ない抽出方法はしないけど。


 ────なんでこんなことになったのかわからないけれど、その日からわたしは虹色の鉱石(カルミアタイト)作り職人と化した。


 授業でも実験などで魔力を使う。だから錬金釜を使うのは、お風呂に入ってゆっくり浸かり、夜食を頂いたあとになる。


 歯を磨いて眠るだけにしないと、朝までぐったりだからね。

 

 作る順番で、わたしを介抱する係も決まったようだ。最初がティアマト、次にエルミィ、その次はノヴェルでヘレナは最後になった。


 鉱石の輝きも、わたしが魔力供給を沢山したものが一番輝くみたいね。ただノヴェルがにぎにぎして磨くと完成度がかなり上がる。


 魔力がもとになってるから、ノヴェルの精霊力に反応しやすいのかな。まだまだ研究不足だと、考えさせられた新鉱石作りだったわね。


 泣きながらようやく全員分作ったので、わたしは自分用の装飾品作りに取り掛かる。


 武器だと学校に持ち込めないから、身に付けて装備しておける指輪や腕輪なとがいいわね。


 わたしの場合、魔力の底上げ重視なので首飾り(ネックレス)にした。


 作業の邪魔にならないのと、服の中に隠せるからね。


「おらのもお願いするだよ」


「ハイハイ、わかってますよ」


 首飾り(ネックレス)を全員分作る。素材のある状態で、錬成するなら魔力消費は少なくて済むのだ。


 問題は付与ね。わたしは魔力増量と、筋力増加をつける。筋力がほんの少し魔力で上がっても、この中でまだ最弱なのが悲しい。


 でもこれで大剣だって振り回せるはずだわ。


「危ないからやめようね」 


 ヘレナに駄目出しされた。筋力の問題ではなく技量的に、ド素人が武器を振り回す方が危ないからだ。


「付与はなんでもいいの?」


 エルミィが付与効果について聞いてきた。 


「あくまでわたしの習得状況や魔力量が基本になるわよ。苦手な魔法は微増、得意な魔法は倍増って感じね。あとは付与効果の相性で、わたしのように増量系なら二つ付けられるものもあるわ」


 数値化してやれれば、教えやすいしわかりやすいのよね。でも、わたしが苦手なのよね。


 付与科のお爺ちゃん先生みたいに、決まった効果量をピタッと貼り付けるように付与するのは、かなりの技量と経験が必要なわけ。


 系統の違うものだと、付与のイメージが難しくて失敗する事もある。こればっかりはやってみないとわからないのだ。


 これでも頑張ってるのよ。授業で習ったから付与の種類が増えた。効果や精度、それに成功率を高めるためにも奮闘中なのよ。


 修了後にはとんでもない魔道具が出来ているかもね。


 ぬっふっふっ〜、魔力全部乗せの付着率百%の魔道具なんて、伝説級の魔道具みたいで素敵だわ。


 うっとりしているとティアマトに肩をポンと叩かれた。ティアマトはわたしと同じ系統の付与が良いそうだ。


 首飾り(ネックレス)にして付与を加えて渡すと、いつも無表情なのにニンマリと微笑んでいたわ。


 ヘレナとエルミィは、魔力増強と魔力増量を選んだ。ヘレナはわかるけど、エルミィは魔力お化けにでもなる気かしら。


 魔力増量は持っている基礎魔力の底上げなので、魔力増強とは確かに相性はいいのだ。眼鏡は伊達じゃない、賢いエルフよね。


 ノヴェルは魔法耐性と物理耐性を選んだ。耐性付与同士なので、これも相性が良くてわたしがイメージしやすい。

 

 あらためてみんなでお揃いの首飾り(ネックレス)つけているとパーティーぽくていいわね。ぼっち先輩に見せつけてやろう。


 次の週末はまたダンジョンへ行って、効果もみたいものね。

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