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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第3話 ヘレナは腹黒?


 ロブルタ魔法学園と呼ばれる魔法研究学校。この学校の授業は、教科書で学ぶ座学、実験器具を使う実技、現場での実践と大きく三つに別れている。


 受ける学科によって内容は違うようだけれども、ヘレナの受ける魔法学科などは、大広場で魔法による実演練習や地下にある学園専用のダンジョンなどにも行くらしい。


「ダンジョンか⋯⋯興味あるわね」


「うん。でも学園のダンジョンって、魔物は少ないみたいだよ」


 ヘレナは自分の受ける学科の説明をあらかじめ調べていた。安全性を保つために、学生専用ダンジョン内は定期的に魔物が間引かれているのだとか。


「ちょっと覗いてみたい欲求にかられるわよね。学園専用ダンジョンなんて、卒業してしまうと入れないでしょうし」


「気持ちはわかるけど、カルミアの学科だと、ダンジョン探索はないと思うよ」


 そのためだけに魔法学科に入るわけにもいかないので、慣れて来たら教員に相談してみよう。


 わたしの選んだ錬金魔術科は、座学と実験が中心になる。素材の調達は現場に行くか購入する必要があるが、授業で使う分は学校が用意してくるそうだから、お金はかからないで済む。


 錬金術師になりたいのならば、野山を歩き回ったりダンジョンに潜ったりは、冒険者に任せて依頼をかけろという事だそうだ。


 わたしとしては調合まがいの事をしていたため、冒険者達にくっついて素材集めをした経験もある。だから戦闘能力の低い者を連れてダンジョンや森林探索する危険をよくわかっている。


 戦闘慣れしていない人間を連れて移動して回るのって、わたしが思っているより大変なんだってさ。魔獣の剥き出しの殺意に恐慌で動けなくなったり、予期しない行動をしたりするから。冒険者たち(あいつら)人の事を拉致っておいて、言い方が酷いのよ。


 わたしのような貧乏調合士だと、自分自身の研究用の依頼は費用が高くつくので、欲しい素材を集めてくれる冒険者チームの探索費用なんて出せっこない。素材にも入手ランクがあるものだからね。


 素材の価格って希少さよりも、結局は仕入れもとになる冒険者パーティーの、依頼額に左右されているものが多いとわたしは考えている。


 Aランクに依頼するような品は依頼料もかかるから高い、Eランクでも簡単に手に入るようなものは安いに決まってる。危険度や入手何度で、嘘みたいに高くなるものがあるのよね。


 そこでわたしは考えたわけよ。いちばん手っ取り早いのは、貴族院に入り出資者(パトロン)を募ること。


 まあ⋯⋯これは夢、実際ありえないわね。田舎領主街の平民が、貴族院なんてまず入れるわけがないもの。


 次が騎士学校か、ここ魔法学園になるわけだわ。騎士団も能力的に無理。だから魔法学園に落ち着く。そこで貴族がいれば上々、騎士団や上ランク冒険者になりそうな同級生と仲良くなるのが目的だ。


 早い話しが出資は無理でも、仲良くなった伝手で提携を結ぶわけ。治療薬など必要な品を用意するかわりに、任務ついでに素材を集めて来てもらうのが目的だ。


 ここでヘレナという知己を得たのは幸先良いと思う。お友達のため価格万歳ってやつ。ヘレナは見た感じお人好しで向上心があって思いやりがあって、現実的で将来の有望株だもの。


「その⋯⋯友情を自分の野望に利用するのはどうかと思うよ?」


「えっ? あれ、なんで?」


「会った時もそうだけど⋯⋯カルミアって考えていること全部声に出てるよ」


 ヘレナがじっとり冷めた目を向け呆れている。わたしの悪い癖で、独りでいる時のように声に出していたようだ。


「その、本当に利用してやるってわけではないのよ?」


 うぅ、不味い。本音がだだ漏れとかありえないでしょ、わたし。一人で長いこと暮らしていた弊害だ。ひとりぼっち症候群だわね。


「クスッ」


 わたしを見てヘレナが笑う。また漏れた?


「はじめは怖い人かと思ったけど⋯⋯カルミアがどういう娘か、よくわかったよ」


 ヘレナが、ちょっとだけ怖い。会ったばかりの人間に、都合良く扱われたら気分悪いわよね。冒険者パーティーと組んで、探索に出た時もやらかしたのに。


「カルミアが私をあてにするならさ、私も貴女を頼りにしてもいい?」


 ヘレナがここぞとばかりに条件を出してきた。流石は騎士位とはいえ貴族様の娘ね。


「いいわ。何をすればいいの?」


 わたしには断る理由はどのみちないのだ。


「私も付与魔術は習うの。でも私の場合は魔法的な付与だから、カルミアと使える魔法の種類が違うでしょ?」


「確かにそうね。ヘレナの付与魔法は、いわゆる強化(バフ)だもの」


「私としては、剣や鎧に付与してくれる、付与魔法錬金術師が友達や仲間が一緒にいたら助かるかな」


 まさかの付与術師としてのお誘いだった。錬金術師の魔道具も買ってほしいな。


「お互い利用価値があったってことかしら」


 ヘレナはいい子ちゃんではなかったということね。オドオドしていたのは演技半分で様子見ていたとか、わたしはすっかり騙されたわよ。


 なんてね。そういう事にしてわたしとヘレナは握手する。会って間もないけど、わたしもヘレナの性分はよくわかったわ。


 ヘレナの瞳から、虚勢を張っているのが見えた。うまく同室の者とやっていくにはどうすればよいのか考えた言葉だった様子がわかる。


 少し震えながら貴族の真似事までしてさ。まぁ貴族の子は事実なんだけど。


 勇気を振り絞って、気まずくないように振る舞ってくれちゃって、いい子というよりも、かわいいじゃないの。


 ただわたしが男の子なら、同性目線では、あざといとか可愛い娘ぶりっ娘に見えるかもしれない。だから無理させたくないと思う。友達欲しいし。


 わたしの野望の為にも、ヘレナに余計な嫌がらせ(トラブル)入る前に守らないとね。



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