表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
29/199

第29話 新・錬金釜 ① 金貨の輝き

「うふふ……いつみても良い輝きだわね」


 冒険者ギルドのギルドマスターからの依頼をこなして諸経費を抜いて配分した結果、一人当たり金貨二枚ずつもの報酬が得られた。


 情報の相場価値からすると桁一つ安いんだが、とガレオンが逆に心配したくらいだ。脅しをかけた張本人のくせに、何をいまさら。


 でもねダンジョンで当面の生活費を稼ぐ目的は果たせたわけだし、ギルドに恩を売っておいて損はないのよ。


 どこで覚えたんだと呆れられた。一応わたし個人商店の主だからね。────あれ、そうか。わたし商人に向いているんじゃなくて、すでに商人でもあったよ。

 

 王都で商いをする気はないので、別に商業ギルドに用はない。そもそも商店は生活の為にやってるだけで、研究で食べていけるならそっちを中心にしていきたいものね。


「カルミア、すごく気持ち悪い微笑みになってるよ」

 

 わたしがベッドで寝転がって金貨を眺めながらニヤニヤしていると、ヘレナが注意してくれた。


 休み明けの授業の後、わたし達の部屋のある廊下には壁が出来ていて扉もある。鍵は寮長から預かっていて、五人分と予備が一つあった。


 中に入るとノヴェルの為のベッドがデンッと置かれていたので みんなでわたしとヘレナの部屋に運び入れたのだ。


 快眠粉末(パウダー)を忘れずに撒いて、経費で買ったシーツを敷く。


 部屋の改装に伴い寝る場所を変更するか相談しようとすると、ヘレナからキッと睨まれた。なんかわからないけど、ヘレナなりにこだわりがあるらしい。

 

 エルミィとティアマトは、反対側の自分達の部屋で快適スマイリー君で成分を抽出中だ。


 なんかわたしが変な目で見られそうだから止めてほしいけど、ティアマトが真似したらエルミィまでやるって言い出した。


 なんというか、良くないわ。面倒事の予感がしかない。そうなる前に終わらせよう。


 わたしは顔を洗うための水を張る桶に、快適スマイリー君を入れる。そこへシトロンの実を絞り、小さな水玉君に混ぜる。


 簡易版の目潰し果汁型水玉君(シトラスボール)を四つ作った。


 果汁飲料なんかに使う酸味が目に入ると痛いので、水洗い用の洗眼水玉君(ピュアウォッシュ)も用意しておくのを忘れない。


「目がァ〜、眼がァァァ」


 ヘレナは気の毒そうな表情に、ノヴェルは面白そうな目でベッドでのたうち回る二人を見ていた。


 ────眼に張り付いている水玉君は、水だから手では剥がせないわよ?


 布切れに吸わせて取るのは抽出後にしたい。だから枕やシーツに水玉君を吸わせないように二人には我慢してほしい。


 薬効成分もほんの少し混ぜたので、洗い流せば目がスッキリするはず。ちゃんと後のお手入れも考えているのだ。


 しっかり泣かせた後に果汁水玉君(シトラスボール)を桶に入れて、それぞれ順番に回収した。


 快適スマイリー君は魔力を吸うよりも、体毛とか体液とかの方が質の良い魔晶石に変えるのよね。粘体人形(スライムゴーレム)なのに何故かしら。

 

 呻く二人の眼を洗わせて清潔なタオルをわたしてあげると、ぐったりしてしまった。でもおかげでノヴェルは楽しそうに見ていたし、綺麗な魔晶石をゲット出来たわ。


 あとはお風呂のあとで汗をかいた時に、快適スマイリー君で再び吸収する。ティアマトは短髪だしエルミィは髪を切るのは嫌がるので、ヘレナと違って成分集めに手間がかかって仕方ないわ。


 翌朝、朝御飯を食べたあとに早目に錬金魔術科に行って、ティアマトの錬金釜を作る。


 エルミィは自分で作りたがった。でもわたしの魔力を練り込むから、専用の錬金釜を作れると思うのよね。だから大人しく待ちなさいな。


 まずは鉱石を使って、ティアマトだからティアマタイトを創りだした。名前の響きが似てるからややこしいわね。


 ティアマタイトをもとに錬金釜を作ると、ヘレナの時と違い紫色の釜になった。


 何か作るのは後にする。エルミィのも作らないと煩いからね。エルミィだからエルミタイトでいいか。


「私のだけ愛がこもってない」


 眼鏡エルフがどっちにしても煩いわね。貴女は錬金を出来るから、わたしの気分が乗りづらいのよね。


 ブゥブゥうるさく言うので錬金釜を作る際にエルミィの手を取り、彼女の魔力を混ぜる。


 効果が弱まるかと思ったけれど、わたしの魔力の影響が強いのか、翡翠色の美しい錬金釜になった。


「青じゃないんだ」


「知らないわよ。今日はこれで錬金魔術科の授業に使いなさいな」


 エルミィが自分専用のものを使うと同じ薬での効果がどれだけ違うか調べておきたいのよ。


 貸し出し用の錬金釜、エルミィの自作のものと専用のもの、そしてわたしが使う場合とで効果の違いがあると思う。


 ヘレナの場合は思い入れもあって、かなり高い効果出たからね。授業前に何やらやっているわたし達に、エイヴァン先生から熱い視線が向けられる。


 作っていたのが錬金釜だとわかると興味を失ったみたい。わたしだって、毎回そんなに変な物は作らないわよ。


 エイヴァン先生は講師としては胡散臭い面が多いけれど、冒険者としての実力は高く評価している。


 依頼でギルドマスター達に聞いた所、冒険者としての評判は決して悪くなかった。


 ただ……エルフらしくなく目立ちたがり屋というのか、見栄っ張りというのが欠点で、迷惑を被ったものが多いそうだ。


「見て、カルミア。同じ回復薬(ポーション)なのに、出来が全然違うよ」


 エルミィの回復薬の作り方は、わたしと違い正統のやり方だ。三種類の錬金釜で回復薬を作ってみた結果、エルミィ成分の錬金釜で作ると一層出来上がりの青味が増したように見える。


 実際に使ってみないと効能はわからないけれど、エルミィが使っても効果が上昇するのは大きいよね。


 わたしが使うとさらに効果が上がったり、性能が追加されたりするのは相変わらずよくわからない。

 

 ティアマトの錬金釜も色々と試したい所だけど、授業中はエイヴァン先生の監視が強いので大人しく課題の薬を作る。


 錬金術とは言っても半分くらいは薬学魔術科と同じなんだよね。あちらは素材の種類や違いから、生息地域や成分まで細かい座学中心なので、学科をわけるのは正解よね。


 逆に基本知識はあるものとして、錬金魔術科は実験を中心にやっていくので、基礎の差が品質の差になってあらわれる。


 エルミィを見ればわかりやすい。元々薬学の知識が高いから、わたしより他者や他の器具での違いを比べやすくて助かるよ。


 いまも課題の解毒薬を三つの釜で違いを比較している。材料に余力があれば、特性魔晶石(エルミィの素材)をさらに加えてもう三段階の違いを調べたいのだけど、そうなると素材の入手方法がもう危険(アブノーマル)なのよね。


 わたしの考えが伝わったのかブルッとエルミィが身震いしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー用
 推理ジャンルも投稿しています。応援よろしくお願いいたします。↓  料理に込められたメッセージとは
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ