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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
22/199

第22話 ダンジョン探索【獣達の宴】③ ドヴェルクの唄

 隠し通路のルートは五階層までの正規ルートと雰囲気は変わらないけれど、魔物の強さが一段上のような気がした。


 王都のダンジョンは古い時代からあるご、いわゆる未攻略ダンジョンだ。深層に辿り着いた事のあるパーティーもごく僅かだそうだ。


 お喋りエルフは聞かなくても勝手に話してくる。眼鏡をかけると、見えないはずの背後の気配まで手に取るようにわかるんだって。眼鏡にそんな改造した覚えはないので、エルミィの能力が優れているのだろう。


 エルフって種族的に斥候向きよね。この眼鏡はさらに感度が、上がるみたいだから、喋って集中落とすくらいが丁度良さそうだ。

 

 だからエルミィが何を興奮して言ってるのか、よくわからない。きっと眼鏡の曇りが取れただけの話よね。


「止まって、この先に何かいるよ」


 ティアマトの鼻とエルミィの眼が、通路先の部屋の中の存在を捉えた。


 便利だわね。あとは耳でもわかるようになれば完璧ね。象の種族なら眼も鼻も耳も大きいし、熱だって感知しそうね。あとでエルミィに調べてもらおう。


 わたしが想像を膨らませていると、エルミィが仕方なさそうにわたしのお尻をはたいた。


 部屋には陽気な唄声のような響きと、一体の小人のような魔物が作業をしていた。耳の魔人でなくても聞こえる声よね。


 唄に夢中でわたし達には気づかず、作業の手も止まっているように見えた。


「ドワーフ? いえ地霊かしら?」


 地霊にはいくつか種族があって、魔物としてたまに集団で襲ってくるのがノッカーだ。


 ノッカーの親分的なものがノーム。ダンジョンに徘徊するゴーレムは、大抵ノームのいたずらの仕業だと言われている。


 この小人は人格を持っているから地霊とドワーフの中間のドヴェルガー、単体だとドヴェルクと呼ばれるものだと思う。


 なんでこんな所に……っていうまでもないわね。唄が終わるとドヴェルクの前に通路が出来た。


「海や川の魔物が歌うと、波を引き起こすようなものなのね」


 面白いリズムだったのでもう一度聞きたい。


「どうして人間がここにいるだ?」


 わたしの声で人がいることに気がつき、ドヴェルクが振り返る。


「それはこちらの台詞よ。ドヴェルクが一人でダンジョン構築してるなんて初めて知ったわ」


 ノッカーもそうだけど、地霊系は大概集団が多いのよ。


「へっ?」


 わたし達が怖いとか何者かよりも、自分が一人でいることに今更気づいたのか、みるみる目に涙をためた。


「カルミア、地霊に詳しいの?」


 さすがに眼鏡エルフも知らなかったようね。地霊というか大地の民の一族ね。実は小人から巨人まで多種多様な種族なのよね。


 見た感じ迷子っぽいから、新ルートを作る時に呼ばれてはぐれたのかも。

 

「知り合いの冒険者が詳しかっただけよ。それでギャン泣きしてるけど、どうするの? 仲間たちを捜す?」


 あまり友好的な種族ではなかった覚えがある。送り届けたところで、襲われる可能性もあるのよね。


 わたしの言葉にピクッと反応していた。懐かれて愛着わく前に、招霊魔物複式君の標的セットしておいた方がいいかな。


 会話が出来るけど、魔物も賊徒も冒険者(チンピラ)も信用しちゃ駄目な部分が多いからね。

 

 ドヴェルクって毛皮はないかわりに男は基本毛むくじゃらだし。まあ設定はミノ君たちよりやりやすいわね。


 でも……このはぐれたドヴェルクは女の子で子供だからか随分と薄毛でイメージがブレる。


 悲しいお別れ後の惨劇になるとか、辛いからここでサヨナラもありだと思うの。


「カルミア、待った」


 ティアマトが止めた。


「どうして止めるのよ。ダンジョンの規模を考えると、仲間の数はかなりいると思うわよ」


 いくらティアマトとヘレナが強くても、数の暴力って結構やばいのよね。招霊魔物複式君が今度こそ発動しても、フォローしきれるかどうか。


「ボクには上手く言えないけど、時間がおかしい」


 魔物が出没していたくらいだから、ずっと前に完成していないといけないのに、この子だけいるのは確かにおかしいかしら。


 わたしは、じぃっとドヴェルクの子を見る。


「エルミィ、地図を出せる?」


 エルミィはギルドの売り物の地図とは別に独自に地図を作成していた。


 仲間達とドヴェルクの子にはわたしが何を考えているのかわからず固唾を呑むように見つめてくる。


「ダンジョンって地形のタイプがいくつかあるわけだけど、目的も実はいくつかあるのよ」


 ここはダンジョンを使った脱出経路かなと思っていた。王都や帝都などにダンジョンがある都市は、ダンジョンを資源や観光に限らずとことん利用する。


 詳細は割愛するけど軍事利用したり、実験場にするものだっている。


 なかには監獄がわりに使うものもいたし、ここのように罠に嵌める気の利用もあり得る話しだった。


「この地図の行き先を予測したんだけど見てみて」


 わたしはエルミィの地図とギルドの地図を並べある地点を指す。


「これは火口?」


「予測だけど、新ルートってダンジョンエリアを遠巻きに降っているのよ。その予測ルートを立体化すると、深層にあるっていうマグマエリアの火口付近につながりそうなのよね」


 あくまでわたしの頭の中の予測なので外れてるかもしれない。地形通りに、すんなり行くわけないのがダンジョンでもあるわけだけどさ。地理や地形を排除して出現するのもダンジョンなんだよね。


「行ってみればわかるわ」


 嫌な予感しかしない。でも残酷な真実を知らなければ先へ進めないと言うのならば、行って知って涙を流すだけよね。


 わたし達のパーティーにドヴェルクのノヴェルが加わった。泣く事になるとも知らず、なぜかわたしの服の裾を掴んでご機嫌に唄う。

 

 貴女、仲間がいなくて泣いてなかったっけ。強制的に記憶が上塗りされてる?


 わたしの予測だとあなたのお仲間は裏切りに合って、たぶん火口にドボンしてるのよね。

 

 確率的には十中九くらいの確率で火口落ち、外れだとしても死因は別で生きてはいないの。


 根拠はこの娘自身が、精霊化(まほう)をかけられてるから。


 じっくりとよく調べてみてわかったわ。記憶は精霊化による障害、というかそれをわかった上での魔法のせいね。


「ねぇ、なんだかカルミアから、怖い独り言聞こえるんだけど」


 エルミィが青い顔をして、ニコニコ顔のノヴェルを見る。唄に夢中でわたしの言葉は聞こえていないみたいね。


 前をゆく二人もわたしの呟きが聞こえたみたい。


 ティアマトは匂いで判断していたのか、わたしの言う事に納得していた。


「たしかに魔力の流れが違うようだ。これってどういう状態なの」


 エルミィも眼鏡をかけ直して、ノヴェルをよく観察した。普通なら分かりづらいと思う。エルフの錬金術師なら見えると思う。


「招霊魔物複式君が何度やっても妨害されて使えないのは、そのせいね」


 加護的な形の何かがノヴェルにまとわりついていて、魔物が発生しても襲われないようにしてる。


 ずっと彼女を守って来たのか、ダンジョンで悪霊化しないでいるのも凄いわよね。


 ただそんな術師がどうして、っていうのが気になる。わたしが先へ行こうと思ったのはそのためだ。


「ヘレナ、ティアマト、また来るよ」


 基本一本道だけど、魔物の強さは一段上がった。中層域へ入った証しが魔物で判断とか危ないよね。


 出てきたのはタウロスデーモンとホースデビル。


 どっちも筋肉もりもりな魔物な上に、超重量の斧や槌を付与の魔法で威力を倍加させてる。攻撃に当たったのならば、わたし達はぺしゃんこになるわね。


「ヘレナ、まともに打ち合ったら駄目だよ」


 ヘレナがタウロスデーモンを、ティアマトがホースデビルを相手にしている。


 わたしはヘレナのサポートに入る。ノヴェルが引っ付いたままでも、いまは気にしてられないって。


 攻撃を躱すたびに大地が揺れ、振動で足元がぐらつくはず。それなのにノヴェルがいるせいなのか、デカい二体の魔物が暴れようと全く揺らぐことがなかった。


 吠えるタウロスデーモンの口に、わたしは特製辛苦粉(スパイス)を投げ込む。盾は別ルートに来た時点で、殆ど通用しない魔物ばかりになってしまったわ。


 口から刺激されて、タウロスデーモンが苦しみ悶えた。


「あれ、効くんだね」


 ヘレナからそんなものを冒険者達の口に放り込んだのかと、呆れたオーラが飛ぶ。


 戦闘中にずいぶん余裕だ事。悶えた時点で、ヘレナの剣はタウロスデーモンの急所を貫いていた。


 ティアマトの方もエルミィの弓矢のフォローで足元を崩し、地べたでのたうち回るホースデビルを冷静に仕留めていた。


 よし、今回はわたしもやれたぞ。

冒険者達で効果を試しておいて良かったよ。ノヴェルは一緒に喜んでくれるが、わたしは君の事を始末しようとしたのわかってるのかな。


 魔力の塊みたいな娘だし、快適スマイリー君で美容化(エステ)させてくれるのなら、仲間にしてもいいかな。


 ヘレナとはまた違った、濃い魔晶石化しそうだものね。

 

「カルミア、変態さんみたいだよ」


 ちゃんと回収作業はしていたのに、顔に出ていたらしい。


 本当に仲間になると言うのなら、ノヴェルは精霊化を解くことになるのかな。あとで本人にどうするか確認しないといけないね。

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