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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第1章 ロブルタ王立魔法学園編
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第21話 ダンジョン探索【獣達の宴】② 隠し扉の先には

 罠を警戒して、わたしは毒と催眠耐性のある防布マスクで口元を塞ぐ。そして不意内に備えて盾を構える。最悪の場合、パーティーで一人は動けないと不味いからね。


 エルミィはエルフらしく器用に風の膜を作り、自分の身に纏う。ヘレナは気合で乗り切るつもり……というか状態耐性に効果ある魔法がないから、対魔物に備えてくれていた。


 ティアマトが仕掛けらしき扉の取っ手を見つけて、引いたり回したり動かしてみた。ガコッと何かが動き出し、石切り音とともに入口が開く。


「隠し扉だ」


 罠はなかった。問題は入った後、どうなるかだね。


「戻って来れる保障はないわね。どうする?」


 ダンジョンで消息不明となるパーティーが出るのって、自分達の強さを越える魔物だけじゃないってことを身を持って知ったわよ。


 五階層なんてまだ浅層なのに、死を覚悟して進む羽目になるとは思わなかったよね。行かなければいいんだけどさ。


「でも行ってみようか。仕掛けは元に戻るみたいだから。そうなると未踏破というわけじゃないかもしれないわね」


 ひょっとすると情報に上がっていないだけで、上級冒険者の抜け道って考えもある。


 ヘレナとティアマトが先頭になり、わたしとエルミィが後に続く。そしてさっそく魔物と遭遇する。


「獣でも毛皮でもないじゃないじゃないのよ」


「そんな事言ってる場合じゃないよ」


 エルミィが弓矢を構えて、矢の通りそうな魔物を狙う。奥の通路から出てきたのはミノタウロスとライノアーマーだ。わたしも招霊魔物君複式を取り出しライノアーマーへと投げつけた。


 エルミィの矢はミノタウロスの左肩の付け根に刺さる。中層クラスの魔物だけあって簡単に矢を通さないわね。急所も避けたようだ。


 エルミィはもう一射放つがこれは弾かれた。しかし牽制を兼ねた矢だったので、隙を突いてティアマトが懐に潜り込んで魔力拳を叩き込んだ。


 不意をつかれ氷と炎の拳を急所に叩きこまれたミノタウロスは、強さを見せつける前に撃沈する。動きの重いライノアーマーはというと、ヘレナが一人で牽制していた。


「あれ、わたしの招霊魔物複式君はどうなった?」


 無双してボコボコにしているはずが、獲物を探して空中でウヨウヨしていた。


 手の空いたティアマトがライノアーマーの背後に回り、魔力の籠もった飛び蹴りを膝裏に入れて崩す。


 倒れ混む隙をついて、ライノアーマーの開いた口元にヘレナが剣をぶっ刺して仕留める。


「ティアマト、強いね」


「ヘレナこそ、冷静に対処してた」


 どちらもエルミィの牽制の矢がうまく支援の役を果たしていた。わたしだけ何もしてない。いや、したけど役には立たなかった。


 どうも設定でオークのような毛深い魔物をイメージし過ぎたようだ。ミノタウロスは体毛はあるけど薄いし、どちらかというと筋肉な印象だ。


 ライノアーマーはその名の通り鎧のような、厚い鱗状の皮で毛はうぶ毛。


「こんなはずじゃなかったのに」


 そもそも五階層まで毛深い魔物すら出て来なかったので、活躍の場がなかったのだ。


「カルミアの付与が凄いから戦えたんだよ」


 天使なヘレナが慰めてくれる。でもニコやかな微笑みの裏に、ライノアーマーの鱗剥がし大変だから遊んでないで手伝えって、脅しが入っていた。


 ミノタウロスはエルミィが角や牙を回収し、魔晶石化していた。たまに魔力のある斧を持っていたりするけれど、わたし達に斧使いはいないからいらないわね。斧とか棍棒とか、どこで手に入れるのかしら。


 わたしは複式君を収容して、ライノアーマーの鱗や角も回収する。ヘレナが私を慰めてくれた言葉に嘘はないようだ。ヘレナもティアマトも自分の武器の性能にかなり驚いていた。


 ヘレナの剣はライノアーマーの鱗にも傷を与えていたからね。今までの剣だと傷どころか、折れ曲ってしまったんじゃないかな。


「ミノタウロスやライノアーマーが出るって情報はなかったから、この隠し通路の先は似て非なるダンジョンと思った方がいいね」


 回収作業のあと、みんな休息がてら集まって簡単に会議を行う。眼鏡を外してもエルミィはエルミィで、情報を集めたり分析したりするのは好きなようね。


「戻るなら今よ。入って来た隠し扉は、一応こちらからも使えるみたいだから」


 魔物達が来る前に確認したところ、扉の仕掛けは表側と同じだった。退路が確保されているので探索には余裕が持てる。


「時間と荷物もまだ余裕があるから、進めるだけ進みたいかな」


 ヘレナはダンジョンに入ってからはハキハキして積極的になる。わたしと同じで稼ぎに敏感なのよね。


「だって、魔物相手ならやり過ぎても怖がられないでしょ」


 ティアマトが同レベル以上に強いのも要因の一つね。あの娘の戦い方は、魔力消費を極力抑えた理想的な戦い。かなり上級者の扱いだもの。


 器用に氷系を使って凍らせてから炎系を打ち込むとか、誰に教わったのかしら。戦い方が、どこか懐かしい感じだわ。

 

 鍵を壊したのも急冷加熱を上手く利用したようだったし、魔法の発動の円滑な様子からして師匠みたいな人はいそうだ。


「その言い方だと、脳筋扱いされるから気をつけなよ」


 エルミィがヘレナとわたしを見て言う。得意の分析能力で、わたしが無双してドヤろうとして失敗したのがわかったのかしら。 


「学校では気をつけてるんだよ」

 

 まぁ確かにヘレナは抑えてる方だと見ててわかる。やり過ぎもそうだし、自分が暴れ格上相手だった時に巻き込む事を極度に恐れている。


「ボクがみんなを守る」


 フンッと両手の拳を打合せてティアマトが請け負った。ほんと男前な言動するわよね、この娘は。


 そのティアマトの戦い方を見てヘレナは学んでいた。ライノアーマーの鱗の切り口が見事に裂けていたのは、剣に上手く魔力乗せるやり方がわかったからよね。

 

 ヘレナの身体の負担が減るのなら、身体強化するより武器への魔力付与の方がいい。


 わたしの錬成によって、ヘレナは自分が覚えたかった付与術が出来るようになったみたいだ。


 方針を決めたわたし達は奥の通路へ入り、先へと進む。わたし達にとって王都のダンジョンは初めて潜る所なので、正規ルートを進んだ所で情報はないに等しい。


 ありがたいのは魔物情報だけど、異常事態(イレギュラー)はよくある事だ。伝える側と受け取る側のレベル差や、戦いのスタイルが違うと推奨階級やランクもあてにならないもの。


 だからと言って、ヘレナ達のように情報のない緊張感、ダンジョンの醍醐味を味わいたいわけでもないわよ。


 わたしがほしいのは、あくまで素材やお金になる珍品だからね。

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