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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第3章 星を造る 神の真似事編

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19 エピローグ 〜カルミアの夢〜 

 荒れ果てた大地に、ノヴェルとノエムが築いた正方形の四角錐の巨大な建造物が、いくつも建てられた。

 フレミールがいったん結界で保護し、光魔集束炉(フォトンファーネス)を頂上に設置し、地下への魔導線を繋ぐ。陽光を目一杯吸収出来るように建造物には熱で固まる粘土によって吸収板が張り巡らせれ、魔力を送る量を増やす。


「これ一基で都一つの魔力を生成できる感じね」


 耐熱加護をもらっても、蠍人の故郷の地表は暑いし、日に焼ける。汗だくになりながらわたし達は作業を進めては、休むの繰り返している。

 蠍人は干からびられても困るので、地下世界で、魔力供給の回路を繋ぐ作業をさせた。


 戦禍から正気に戻った蠍人がエドラに集まって来て、彼らも今や六万近い人数になっていた。魔力炉一つで丁度補える数だ。


「繁殖も考えて、最低十基は先に作っておきたいわね。それ以上は、ノヴェルの一族を見つけてからじゃないと無理ね」


 光魔集束炉(フォトンファーネス)を作るのも、ダンジョン化して地下世界を広げるのも、全部ノヴェルが中心になって行っている。


「おら頑張るだよ」


 いつも以上にみんなに頼られて嬉しいみたいなんだけど、魔力切れが続いて目を回している。いつも魔力切れを起こすわたしと違いノヴェルが魔力切れで倒れる事は本来は珍しい。ノヴェルが倒れる程にハードな作業現場なのよね。


 それでも大きな魔力炉がようやく一基、完成した。蠍人の故郷の再生の第一歩が刻まれた感じがするわよね。


「星の件が片付いたら、僕を抽出した成分で身代わり(ダミー)を造りたまえ。ロムゥリにはアミュラもカルディアもいるし、政務は問題ないだろう」


 わたしがノヴェルの同族を探しにロブルタから旅立つと聞いてから、先輩が毎日しつこく身代わりを要求して煩い。ヤムゥリ様の名前が出ないのは、彼女もついて来そうな気配があるので先輩なりに気をつかっているのだと思う。


 死滅した大地に光魔集束炉(フォトンファーネス)を建てた事で、地下空間に光が届く。魔力による擬似太陽の照明で地表に合わせて発光したり消えたりする仕組みになっている。


「地下空間の構想は、ルーネの浮揚式鉢植君(コスモテラリウム)を大きくしただけなのよね」


 光は地表から魔力にして取り寄せ、光源を使って植物を育て、淀む空気を清浄化する。また地熱を利用して、広げたダンジョン内に温度の変化をつけた。


「一番大事なのは温泉よね。地熱を利用する管と一緒に水の管も通して、温泉郷を造るわよ」


 ヌッフッフ〜、蠍人の星で夢の温泉郷がつくれるとは、まさに夢のようね。ロブルタの湯郷理想郷(ユートピア)計画はカルディアに取られたからね。あのまま泣き寝入りするわたしではないのよ。

 むしろ、蠍人の国を温泉だらけにするのもありよね。


「あの、カルミア様。われわれ蠍人は熱い温泉よりも水源の方がありがたいのですが」


 えっ、まさかの温泉苦手宣言。蠍人はお風呂より、綺麗な清流の方が良いらしい。お風呂にするにもぬるま湯程度。良かったわ、完全に否定されたわけじゃなくて。


 紅い太陽がなくなれば魔力供給も落ちるし、熱も引く。いずれ地表に出て活動することを考え、地下空間内部に魔晶石を貯めておくためには労力は少ない方が良い。


「星核は地下空間の中心の神殿に祀る形にして置いておくわ。太陽が一つになった時に、自然に大地に魔力が浸透して、蠍人の星が再び活動出来るようにね」


 それまでの必要魔力は全て自前で溜め込んでおく。星核と合わせて蠍人達の魂の籠もった宝珠も一緒に飾る。


「招霊君達は自由に動き回るからあまり意味はないけど一応ね」


 神殿の守りにはアクラブの蠍人戦士団を喚び出した。ロムゥリの防衛はロブルタ軍に任せ、故郷でかつてセルケトの騎士団として働いたように彼女共々守ってもらう。


 もう一つ忘れてはいけないのが魔女さんの魔力による魔力結界だ。ようやく芽を生やした弱々しい星に、悪しきもののようなものがやって来て破壊の限りを尽くされては堪らない。


 蠍人の地表への復帰の際には星核による魔力展開、蠍人達の魂の解放、侵略者への対魔結界が同時に行なわれるように調整をしておいた。


「出来ているものを使ってもこれだけ手間と労力と魔力がかかるんだから、ゼロからだと気が遠くなりそうよね」


 わたしの湯郷理想郷(ユートピア)計画と全ての素材が手に入る園沺(エデン)計画は着々と進んでいる。

 蠍人の再興計画のおかげで、星造りの規模の目安がわかった。あんなに大きな大地はわたしにはいらないもの。

 そうね、箱庭程度でいいのよ。錬生術師の箱庭(カルミアガーデン)なんてあれば素敵よね。


「結局キミは何者で、何がしたいのかね」


 ブツブツ独り言をつぶやくわたしの首に先輩が腕を巻き付けて来る。魔女さんに乗せられて神様の真似事までさせられているけれど、わたしはずっと変わらない。


「わたしは錬生術師よ。いつか先輩やみんなとずっとこうしていられる星を造りたいわ」


 小さな大地のある星でいい。錬金術師が涎を垂らしかねない素材の詰まった魔本による箱庭といくつもの湯郷理想郷(ユートピア)のお風呂の数々。先輩には、そこでも王様になってもらって、頭には王冠替わりにルーネが乗っかっているのよ。


「むぅ、王様なんかヤムゥリに任せればいいじゃないか」


「駄目よ。この世界ならともかく、わたしのつくる世界に王様は二人もいらないもの。ヤムゥリ様にはいろんな種族の魂を統括してもらうわ」


 また勝手に話しを決めないでと、ヤムゥリ様のプンスカ声が届く。いいじゃない、あくまでこれはわたしの想像なのだから。ヘレナは先輩の側で叱っているし、ノヴェルはノエムや新たな妹達に魔本を開いて文字を教えているわね。


 エルミィはわたしにくっついて毒舌を吐いているだろうから、置いていこうかしらね。バステトやティアマトは黙っていてもついて来て、訓練に明け暮れていそうだわ。


 メネスはシェリハと一緒に先輩のお守りをさせるから強引に連れて行くわ。フレミールとアマテルは放っておくと、悪い邪神達に騙されるから連れて行かないと駄目よね。


 ヒュエギアやドローラ達も来たがるだろうから、なんだか大所帯になりそうだわ。


 これはまだまだ先の話し。結局わたしは神様の真似事をしてまで星を造り、何がしたいのかと言うと、わたしの愛する魂と共にあり続けたいのだと思う。


 ついでに貧乏から解放されたい。錬生術師の箱庭(カルミアガーデン)があれば素材に困らないからね。


 それまではみんな、わたしの我が儘に付き合ってもらうわよ。ぬっふっふ、いまさら気づいて逃げようったってもう遅いわよ。

 あなたたちは身体中の成分も魂も総てをわたしに捧げてしまっているのだから。



 悪しきものや邪まなるものなんかよりも最悪な魂の収集家がわたしなの。もちろん、あいつらみたいに強引に奪うような真似はしないわ。

 わたしなら自分達から魂を捧げさせる。見なさい、このあなたがたの成分を集めて濃縮した美しい魂の虹色結晶(カルミアクリスタル)を。星核にも優る、この結晶こそわたしの求めた宝なのよ。



「悪神ごっこはいいから、その結晶はわたしが預からせてもらうわよ」


 美声君を外して、独り愉悦に浸っていたわたしの頭に柔らかな手の感触が伝わる。くぅ~、この魔女さんこそ、わたしの最大の宝であり敵だ。


「何を言っているのよ。色々融通したから出来たものを回収するのは当たり前でしょ?」


 すぐこれよ。フレミールでも歯の立たない魔力による暴圧で脅すのよ。わたしがつくったのに理不尽よね。


 わたしの魔力を使った見えない魔力の拳骨で、わたしの頭が殴られた。そう何度も喰らわないように、魔力吸収を受けた瞬間に自分の魔力を吸収する魔道具を開発してあるのよ。


「貴女は本当に無駄に頭が良いわよね。そして抜けてるのよ」


 あっ、やめて。勝手に魔力を使いまくられたら魔力切れになるの。あっさり魔女さん対策を破られ、ごめんなさいと反省させられた。無駄に頭がキレるのはどっちよ。悔じぃ〜。


「まあ、いいわ。蠍人達は無事に故郷へ帰還を果たせたようだからね。貴女の夢の為にも、今度はロブルタから遠征に出てもらう事になるわ」


 ノヴェルのこともあって、それは想定していた。いくつもの戦禍を凌ぎロブルタ王国はようやく平穏を取り戻した。先輩やヤムゥリ様の身代わりの聖霊人形(ヒューマノイド)を代行に置いておけば、アミュラさんもいるので任せておける。


「決心がついたのなら、あの娘をあなた達の仲間に拾ってあげて頂戴。年齢が近い方が気楽でしょうからね。それと貴女の大事な先輩共々レガトの【星竜の翼】に加わってもらうわよ」


 本当にこの魔女さん、いえ敢えて言うわ、このオババは人づかいが荒い。痛い、魔力吸収対策無視してわたしの頭をぐりぐりしてる。

 本当の事なのに、事実なのに怒るとか意味がわからないわ。



 どうやら理不尽極まりない魔女さん達との戦いと、奪いに来るもの達との戦いはまだ続くようだ。奪いに来るものリストには魔女さんも入ってるんだからね!

 先輩やヘレナ達には本当に申し訳ないけれど、わたしに出会ったのが運の尽き、運命神の為せる業と諦めてもらいたいわ。




――――――  錬生術師、星を造る 完

 【錬生術師、星を造る】をお読みいただきありがとうございました。カルミアという少女は星を造る事は出来た、しかし本当に造りたいものが何かがわかったために、どうやら新たな旅立ちに出る事になりました。


 この物語の後日談は、同シリーズの【逃げた神々と迎撃魔王】の第二部へと組み込む予定です。

 この物語の続きのみを読みたい方は、彼女達が登場する場面までしばらくはお待ち下さい。


 シリーズを通してお読み頂いている方は、お待たせいたしました。


 【錬生術師、星を造る】はこの話しを持ちまして完結になりますが、登場人物達の閑話を次話に掲載予定の為、連載中設定のままとさせていただきます。 (投稿後に完結)


※ カルミアの発明関連のまとめを追加掲載したいと思います。設定集には通し番号をつけた改訂版にする予定です。


※ 2023年10月15日、魂の虹色結晶(カルミアソウル)魂の虹色結晶(カルミアクリスタル)に変更しました。


※ 2023年11月16日、メインタイトルに【 〜 希少成分欲しさに、魔王の母に神様の真似事を押し付けられそう 〜 】を試しにつけてみました。


※ 現在は元に戻しています。


※ シリーズ外伝【転生しても女子高生だったあたし〜でもね、三人のおじじのおまけつきで毎日うるさいんだよ〜ぅ゙ぅ゙ゥ゙】にもカルミアが登場しております。


※ 公式企画 冬の童話祭2024、ルーネの冒険譚 投稿中。いわゆる作中作品になります。


※ 関連シリーズ外伝として、公式企画〜なろうラジオ大賞5作品にてカルディアを主役とした「邪竜神のお腹に温泉を作ろう!」、特別公式企画〜小説家になろう Thanks 20thにてリドルカを主役とした「リドルカ女傑は恋戦鬼」を掲載中です。


※【勇者に五回もぶっ殺された私は、聖女としてダンジョンに旅立つことになりました。あっ、転生して♀から♂になってます────(泣) ライバルは同じ親友ポジを争う腹黒委員長キャラ♀→♂と、ガチショタ呪術師!! 完結済】 聖奈視点の物語になります。


※ 【逃げた神々と迎撃魔王】 第二部を検索除外にしたため、続編部分を2024年6月より当作品にて、掲載させていただきます。


 また只今話数の表記変更と改稿中となっております。

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