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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第3章 星を造る 神の真似事編

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14 【巨人の眠る島】 ③ いずれ海戦の予感は······ない

 アミュラさんから連絡が入り、わたし達のいる港町カプラへやって来た。


「海竜族の子たちは私が預かる」


 相変わらず無表情よね。でも駄目よ。なにせプロウトからカプラまで、自由に行き交うことの出来る海域を作るのに必要になる存在だもの。

 ゆっくり育てながら成分だって集めたいからね。


「ラグーンの方が安全。成分と船は渡す」


 ほほぅ、それならいいけど何か企んでないかしら。


「脱皮した素材の半分」


 育成費用も全て持ってくれて、素材半分ならいいわね。


「カルミア?」


 わかっているわよ。売るわけない。でも、カプラやプロウトよりも、魔女さん達の本拠地程安心な場所はないのよ。あんな化け物みたいな冒険者たちがいるんだもの、むしろ保護をお願いしたいのはこっちだわ。


「交渉成立。メニーがこれ使えって。あと蠍の殻と砂漠の砂と前にあげた石で耐久硝子作れる」


 渡されたのは海の魔物のマッドオルカの船のような物と皮だ。研究者がいるみたいだけど、この素材は結構貴重なのにいいのかしら。


「海の中に沈む時に必要になる」


 うっ、なんか嫌な予測を聞かされた気がするわ。【巨人の眠る島】がダンジョンだとして、巨大牡牛の心臓(コル・タウリ)がダンジョンの核ならば、取り出せば海中に沈むのは道理よね。


 マッドオルカの皮で作られた潜水艇のようなものは、ボロボロなので解体する必要がある。ただ分解して使えるものを選別し直せば、わたしが錬生で造り出せそうだ。


 絶妙なタイミングでサポートをくれるけれど、道の整備が終わったとたんに、ヒッポストレインを運んで来たようにも見えるから不思議よね。


「目処はついたのかね」


 先輩がキラキラした目でマッドオルカの船を見る。珍しい物だから嬉しそうね。


「素材の提供を受けたからには作りますよ」


 ネレイド達にも海上と海中に使える乗り物が欲しいわね。わたしはドローラに頼み込み、潜水艦や戦艇の竜骨になる木材を使う許可を得た。


 他は持っている素材でなんとかなりそうだけど、骨組みの中心はやはり丈夫でしなやかな木材が一番だもの。何故かドローラが褒められた感じで喜び、ロブルタ農園から必要な木材を加工して持って来てくれた。


「木人の喜ぶポイント、よくわからないわね」


 戦闘とかで材木を雑に使われたくないだけだとは思うけど、これで海戦用と、ダンジョンでの脱出艇が用意出来たわね。


「これで完成、水陸両用型円盤君(アンフィサイクラー)よ」


 円盤君の設計を基本に作っていて、浮力のある水中ではマッドオルカの皮と蠍の魔物の殻を混ぜた装甲で包んで、重力と浮力の操作を行う。水中での推進力には風樽君を使い、室内の空気も風の魔晶石を風樽君で空気精製器を作って、快適に保つ。


「あの気狂いみたいな刃はなくなったの?」


 ヘレナ、そういう目で円盤君を見ていたのね。


「ちゃんとあるわよ。実装展開は水揚式鉢植君(アクアテラリウム)にさせるけどね」


 水中では攻撃力と機動性が落ちるから、あまり戦いたくないのよね。


「それとみんなの全身タイツ(フルラップウェア)にも耐水性と気圧耐性を持たせて、最悪の場合でも溺れないようにしておくわ。エルミィは空気飴(エアボール)を作ってみんなに渡してちょうだい。()()()の分も忘れないでよ」


 エルミィが呻く。わたしは自分のした事は忘れても、された事は忘れないわよ、たぶん。念押ししたけど、嫌がらせに辛苦玉とか混ぜられると真面目に溺れ死ぬから、追い詰めないようにしないと。


「はじめから言わなければ良いのだよ」


 先輩に窘められた。まあいいわ。なんかダンジョンに潜りデカブツ対策を考えるよりも、海に投げ出された後を考えてしまうのは、まともに戦える気がしないからかしら。


 ネイト達にはドローラから融通してもらった木材とマッドオルカの皮で水上風樽噴射艇(アクアジェットボート)を人数分作った。これは、風樽君を仕込んだ風樽君大砲型に跨って乗る形で、足のペダルで操作可能だ。前面には突撃用の杭に、二門の火竜砲が付いている。


「本体内に、非常用の薬を仕舞える収納が付いているから、薬と動力用の予備魔晶石を入れておくのよ」


 括り付ければ装備をいくつか備えつけ出来る。大きな船は今すぐは無理なので、これで頑張ってもらうしかないわね。


 リヴァラハには、人化時の装備を用意した。海竜化した時に魔本化して、首飾りのように海竜の身体に身につけることが可能だ。魔本そのものも耐水性を高めてある。


「ネイト達の言う事をよく聞いてね。無理しては駄目よ」


 ノヴェルはダンジョンへ一緒に行くので、リヴァラハについてはネイトに預ける。まだ幼竜なのでアミュラさんに預けた方が良かったかもしれないけれど、本人が留守番頑張ると奮起していた。


「おら、お土産持ってくるから楽しみにするだよ」


 すっかりお姉さんぶるノヴェルが可愛いわね。お土産がなんなのか気になるけれど、ノヴェルも泳げないから水上用の靴を作ったの忘れてないよね。


 フンスッして、やる気に満ちたノヴェルの水を差すのもよくないので、わたしは微笑ましい二人を眺めるにとどめた。



 カプラの防備を整え、ようやくわたし達は【巨人の眠る島】へと潜入した。相手が相手なので、防備を整えるのに時間がかかってしまったわね。

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