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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第3章 星を造る 神の真似事編

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12 【巨人の眠る島】 ① 魔力次第で星も動くというもの

 わたし達は暗殺者達やムルクルの事をナンナルとスキュティアに任せて、港町カブラへと向かった。ずらされた町といっても、港町を移転したのではなくて、大地ごと徐々にずらされ離島に割り込まれた感じになっていた。


「ノヴェルやフレミールがいればわたし達でも出来なくないけど、普通は無理よね」


 離島はロブルタの王宮よりも大きくて、現地のリビューア帝国人達からは【巨人の眠る島】と呼ばれていて、近づく事が禁じられていたダンジョンだった。


「あの神殿のバカでかさを見て近づくやつはおらんじゃろ」


 わたしの横にやたらとベタベタしてくるフレミールが吠えるように言う。ロムゥリでお留守番をさせていたから寂しかったみたいね。不機嫌な先輩とご機嫌なフレミールが左右からべったりで重い。


 メネスとシェリハには暗殺者達の討伐隊が来るまで、ムルクルで待機させていた。新たに多彩な魔法を扱う剣士聖霊人形・魔戦鬼型(メジェド)をつけてある。メジェドにはバステトのように影に潜み二人を守るように告げてある。


 それとナンナルが騒いで煩いので、ガレスとガルフの狼成分から少しバルス成分を含めて作った忠狼聖霊人形(アプワート) をつけた。アマテルもナンナルも、能力は高いのに表立って働かないのよね。世話するものが注意しないとすぐサボるのよ。


「私はちゃんと働いてますよ」


 結局分体をつくり、身代わりが出来たので手乗り人形(タイニー・ドール)でまったりするアマテルを眼鏡エルフがヒョイッとつまんだ。アマテルの乗る豊穣型は、戦闘仕様を作り乗り換えさせている。見た目はそんなに変わらないけれどね。


「まだ今日のノルマ分の薬が足りないの」


 成分を絞って休ませていた間にすっかり怠ける癖が戻ってしまったので、アマテルにはエルミィの薬作りを手伝わせていた。


 ルーネもいるので、ヘレナ釜を使えば、エルミィにも高性能の薬がたくさん作る事が出来た。作っている薬の大半は、魔女さんに教えてもらった大地の恵みの回復薬だけどね。今後かなり需要が高まるでしょうから先に用意しておいた。


 ノヴェルにある程度大地の魔力を動かしてもらい、薬を振りまくと土壌の成分が生き返る。肌も土も潤いを保つには、お手入れがかかせないのよ。


「カルミア、まだ離島には行かないんでしょ」


 首に負荷がかかって青い顔のわたしにヘレナが話しかける。通常のヘレナはやはり良いわね。でも、そろそろ助けてほしい。


「二人とも、カルミアの顔が不死者みたいに青黒いよ」


 おぉ、さすがヘレナ。一喝で先輩とフレミールが離れてくれた。でも、息が整うまで待って。


「今日は様子見よ。造りと魔力の感じを見たかっただけ。それに、すでに巨体の領域内にいるからね」


 どうなっているのか謎だけど、押しのけた大地は、ダンジョンというか巨人の身体だと思うのよね。なんとなく、足元に魔力の脈動を感じる。


「巨人型の姿をしたダンジョンとでもいうのかしらね」


 洞窟に擬態する魔物もいるし、島になってる亀がいるのなら、巨人の身体の中にダンジョンがあってもおかしくないわよね。


「いや、おかしいって」


 みんなから突っ込まれたわ。島亀は正確には大きな亀の背中に勝手に人が住んでいるだけだものね。

 巨大牡牛の心臓(コル・タウリ)は星核でもあるから、巨体を築くうちに魔術式に不具合でもあったのか、元々そのつもりだったのか、まだ確定情報はない。心臓と神の牛との関連も。


 ここでは巨人にしていたけれど、巨大牡牛の心臓(コル・タウリ)というくらいだから、本来ならばもっともっと大きな牛だった可能性、それが神の牛(アピス)という事もあるわけなのよ。


「根拠はあるのだろう」


 先輩が興味を惹かれて聞いてきた。機嫌が直るまで長かったわね。甘えもあるからかしら。


「虫よ。わたしたちの身体にまとわりつくあの視認がやっとの小さな虫と、フレミールの竜化を比べてみればよくわかるわよね」


 倍化してゆけば、大陸どころか星を呑み込む蛇がいたっておかしくない。もう、そうなると想像出来ない大きさなので、互いにまともに動いていることも認識出来ないと思うのよね。


「ダンジョンの仕組みを考えると、大陸一つがまるごと異界の領域だっておかしくないのよ。そう考えると、このロブルタの都以上ありそうな巨人が動き出すのはあり得る話。そして、その中がダンジョンでもおかしくないわけよ」


 近過ぎて逆にその大きさが見えないなんてことはよくある。遠くから眺めると山は山とわかるけれど、その山の中で山の大きさなんて見えないからね。実際はどこまで大きいのか確認するのは魔力を図るしかないわ。

 膨大な魔力、それが根拠になっている。


「理屈はわかるけど、動くの······ここ」


 ヘレナが不思議そうに足元を見る。


「母のいる冒険者達は、大陸そのものがダンジョン化された所で、悪しきもの達の本拠地を襲撃したぞ」


 やはりあるのね。まあこのフィルナス世界があって、悪しきものやら異界の何やらがやって来ている時点で、世界まるごと、世界そのものがダンジョンだと言われても、わたしは納得するわよ。


 だからこそ、わたしは蠍人の星の復興を約束出来るのよ。


「キミ、何か隠しているのかね。言ってみたまえ」


 先輩め、気づくの早いわよ。そして首を締めるの早いって。


「デカブツも世界も、結局は魔力次第ってことですよ。魔力を失ってゆけば世界はシンマやリビューア東部のように荒れてゆくだけ。蠍人の(ふるさと)のように」


 たぶんだけど悪しきものや邪まなもの達の世界はこの地より荒れ果て、滅びに向かっているのだと思う。

 巨大牡牛の心臓(コル・タウリ)を先に欲したのがどちらなのかわからないけれども、蠍人達のせいでどちらも計画が狂ったんじゃないかな。


 セルケト達を見ていると、空気読まなそうだし。ダイダラスというものは、逆にこの地に牛人達が根を張るのに協力するために、心臓を使って巨人にした気がするわ。そう思うように上手く誘導していたものね。


 アマテルが、農耕以外のことにもっと興味を持っていれば、話もこじれずに簡単だったのに。


 まさかここまで何も考えなしに行動していたなんて、当時の牛人達も知らなかったのが幸いね。知ったらブチ切れて暴れそうだものね。



 偵察は済んだのでわたし達は港町へと向かう。魔力の見えない壁のようなものがあって、港町はきれいにその輪から押し出された地にあった。


 ヒッポストレインのためにも、ある程度地ならしをする必要があったし、巨人が動くようなら守る以前の問題だ。防壁の類は、リビューア帝国が攻めに転じて来た場合にだけ備えることにする。


「アマテルとルーネは機動式牛車輪(タウロスクロウラー)で、ムルクルまで道の舗装をして街道の仕上げを行うわよ。エルミィとティアマトは戦馬車とごっつ君で護衛をお願いするわ」


 行きは離島へ向けて別のルートを確認して来た。リビューア帝国側に近くなると守りが不安なので、やはり川を挟んでバスティラ側から道を固めて築く方が良いとなった。


 帰りはナンナルの魔本で戻って来る。その間にわたしはノヴェルとフレミールと張り付く先輩を抱えて港町の防御体制作りを検討した。


「毎回のことだけど今回はほぼ目の前に、どっちになるのかわからない場所があるのよね」


 巨人は無理でも魔物は別だ。リビューア帝国が、海からやってくる事も考えておく必要があった。


「大量の木材がいるわね。ドローラに見つからないように、ヒュエギアに用意してもらうしかないわ」


 海戦も考えて至急ヒュエギアに木材を発注しておいた。参考にするのは、アミュラさん達の戦闘艦だわ。


 わたしの船の場合は、火竜門を搭載した小舟もいくつか作る。大型戦闘艦と、機動海船で数の不利を海でも制する。


 それに加えて先輩やルーネやアマテルが空中を舞えば、制空、制海権を握れる。留守の時は吸血鬼族達に任せて籠城し、要塞からの砲火で凌ぐ。

 構想は出来た。あとは巨人がよけいな事をしないように祈るばかりだわ。

 

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