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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第3章 星を造る 神の真似事編

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8 輸送計画  〜ヒッポストレイン〜

 食料輸送計画については、アミュラさんとヒュエギアが話し合って必要な物と量を決めていた。ロブルタ農園からはもともと、ロブルタ領内各地へ復興補助として物資を運んでいたのよね。その一部をいったんロムゥリに回して、ロムゥリのものとまとめて船でリビューア帝国へ輸送する事になったようだ。


「リビューア帝国の港から、ムルクルを始めとした東部の困窮地域を抑えておいた方が良さそうね」


 スキュティアに言えば話しが早い。ただ馬賊百騎以上失った後に、他の地域に話しを聞かせられるのかは微妙だ。帝国へ話しを通しておかせたのはそのためだけど、戦馬車を輸送用に改造するなかな。


「そこで登場するのが、連結戦馬車(ヒッポストレイン)よね」


 アスト号とヤムゥリ号を前後にして間に戦馬車と荷馬車を交互に挟む。機動偵察用にアルヴァル達もつける。アスト号とヤムゥリ号は、自立して機動式戦馬車としても戦えるから、大群相手でもやり合えるわよね。


「いいと思う」


 アミュラさんが賛成してくれた。ロブルタから荷を運び、ロムゥリでも積荷を加えてヒッポス達ごと船に乗る。

 輸送の人員は、ロムゥリにいる先輩への忠誠度の高いシンマ攻略組の部隊から選ぶ。交代要員も含めて百名近い人数がアミュラさんから提示された。


 この人、引き抜いて本当に良かったわ。正式に先輩がロブルタを継いだ時は、財務大臣やロムゥリの太守につけて、クランから独立させるべきよね。


 すっごい寒気がした。いっつもわたしの声なんか聞こえても知らんぷりかますのに。

 わたしにはアミュラさんを完全に引き抜く秘策があるので、魔女さんが焦っているのは良くわかるのだ。


 話しは終わったので、ノヴェルとノエムにアマテルを連れて農地の拡張へ向かう。ロブルタ本国の支援でも手一杯なままなので農地が足りないのよね。ローディス帝国の急変も考える必要もあるので、今のうちに農地を増やして収穫を上げておく。


「掘るのはダメらしいから、フィールド型なら良いわよね」


 農地の拡張も限界がある。そこで小さいながらも、栽培型のフィールド型のダンジョンを作ってみた。試作型だけど、収穫物を定期的に回収出来るミニダンジョンが完成よ。ハニーワスプを連れてくれば蜂蜜も取り放題になりそうね。


 魔力次第で回復が早まるから緊急時にも対応可能。何よりミニダンジョンなのは魔本用だから。ヌッフッフ、これ一冊にあらゆる作物の農園が出来ていたら素晴らしいと思わない?


「恵みを与えるダンジョンは、この大陸でもいくつか発見されている。夜魔の森にもあるらしいが、持ち運びの可能なのは初めてではないかね」


 先輩が夜魔の里の話しや隣の大陸のダンジョンについて教えてくれた。冒険者に関わる話しって、学校の授業とは別で先輩の趣味で覚えた事よね。


「この魔本には、アマテル仕様、ルーネ仕様にドローラ仕様と分けるつもりなのですよ」


 作物だけじゃないのよ。魔力草や樹木などもルーネの鉢植君内の箱庭のような庭園化してノヴェルの魔本へ収めるの。

 フレミール部屋のサイズなら霊樹も入るかしらね。


「そんなものを持っていると知れたら、余計なトラブルを招きそうだが、好きにしたまえよ」


 こればっかりは、魂を握る仲間以外には話せないわね。花の妖精(ニンフ)もいれば、完璧に近くなる。

 ルーネに呼び出せないか相談してみようかしらね。


 試作のミニダンジョンが成功したので、魔本分の他にもう一度、このロブルタ農園用に作り直す。これは、魔晶石を所定の場所にセットすれば良い。魔力供給が途切れてもダンジョン化が切れるだけなので、自然環境に左右されながら育成は可能になっていた。


 水や光や肥料のかわりが魔晶石になっただけとも言うわね。ロムゥリやエドラの城内にもこのタイプの果樹園を

作っておこうかしら。


「ロブルタの王宮は良いのかね」


 ロブルタは後よ、後。今行くとハゲたちが殺到するから嫌なのよ。先輩こそ、甘えて来たかったらどうぞ。


「キミを放置するとろくな結果にならなそうだから、遠慮しておくとするよ」


 おっと、先輩が完全に親離れしたよ。駆けずり回って、問題を解決しているのは先輩だものね。意図してないけれど、ロブルタとバスティラは先輩が救ったようなもので、ローディス帝国よりの現王派なんて、もう息をしていない。


「このままいくとリビューア帝国の東部も、先輩に帰属すると思うんですよ」


 バスティラの復興が終われば、リビューア帝国の東部に力を貸せる。でも帰属する事になれば、牛人に関係なく戦闘になるかもしれない。


 ムルクルの街だけが、ロブルタにつこうがリビューア帝国も大して気にしないと思う。でも東部一帯となると、軍事介入して来て当然になる。

 放置しても問題ないから今まで放置していたのであって、他国として問題になれば動かざるを得ないのが国というものだから。


「そのあたりの駆け引きについては、生産性がもともとない土地だから、独立国としていったんリビューア帝国との距離を取れば問題なかろうよ」


 牛人達や暗殺者達の振る舞いを含めて、厄介事の多い土地なので、リビューア帝国内の主要貴族達の面目さえ保てば、見逃すだろうというのが、先輩の見通しだった。


「流れとしては、支援、独立、復興だな。復興を先にしてしまうと、捨てるのが惜しくなるものだ」


「それならいっそ、厄介扱いされている牛人の地をまとめて帝国から独立させましょうか」


 独立が駄目なら亡命でも良いわよね。土地にこだわりがあるものは別として、もともと遊牧民族も多いのなら、困窮する地域にとどまらず、いっそロブルタとバスティラ内で遊牧生活すればいいわ。

 食べて行けるのなら、自分から悪さするのもいなくなるでしょうからね。


 輸送計画の目処がついたので、わたし達はハトホルに乗ったアマテルを連れてムルクルに戻る。そしてアミュラさんに現状を見せた後に、ロムゥリへと送った。


 スキュティアは大人しくしているようね。ハトホルに乗った手乗り人形(タイニー・ドール)の中身がアマテルだとは気づかなかったみたい。ややこしくしただけの事はあったみたいね。


「ねぇ、このハトホルという娘が、アスト先輩の豊満な身体の姿なら、私のも出来る?」


 おぉっと、変な所でヘレナの闘志に火が付いた。声を気にして、おっさんの声にしていたから、こういうのは興味ないのかと思っていたわ。


「作れなくないけれど、ヘレナは今のままが良いから却下よ」


 造るのなら、ノヴェルの時のノエムのようなものしかわたしが認めない。


「先輩ばっかりズルい」


 やばい、ヘレナが反抗期に入ったわ。いや、先輩は一応身代わりがいくらあっても良い人なのよ。貴女はそもそもそれを守る人じゃないのよ。

 でも、ヘレナの戦闘特化型は良いわね。そのまま戦闘服に仕立て上げれば、ヘレナの中身はそのまま、望みを叶えられそうね。


「成分がたりないわ。絞る覚悟と、ヤムゥリ女王様みたいに兎耳もつけるわ。それで良いなら変身させてあげるわ」


 アマテルの乗るハトホルも危険を考慮して、やはり武装搭載型に換えよう。ヘレナ、ルーネ、ハトホルと、火力、機動、防御とそれぞれ特化させた護衛がいれば安心だもの。


 先輩が目を輝かせた。はいはい、貴女の装備も全部換装し直しますよ。


 ヘレナの戦闘服は超火力重視だ。火竜の大咆哮(フレミール・ブレス)を参考にして、直線上の敵を貫く火竜の炎貫砲(フレミールブラスト)を両手の手甲につけた。これは間合いの広い火竜の炎大剣(フレミール・ソード)にもなるので、ヘレナ向きなのよ。


 身体を包む戦闘服は耐熱遮断加工。要望に応えて、胸の部分は衝撃吸収材で厚みを持たせて、内部の空気循環装置と魔力吸収装置をつけて、ヘレナの魔力を補う。ヘレナの特性である打たれることで強くなる呪いはそのまま戦闘服でもつける。兎耳には索敵機能と感知上昇がついている。


 構想の基本はヘレナと同じなのよね。ただ戦闘服の分だけ、身体が大きく胸もバインバインになった。


 お尻には兎耳のセットになる可愛い尻尾がある。これは戦闘服の展開と解除用のスイッチになる。触ると変身したり解除されたりするので気をつけて欲しい。


 足には反重力装置をつけた。背丈のバランスを足の長さで取ったので、転ばないための処置だ。魔力充填で超加速も可能だし、わたしの靴同様に空も歩ける。


 そして、この戦闘服には浄化能力もついているので、不死者殺しの真似事も可能だった。


「どうかしら、ヘレナ。あと、視界は暗闇も見える暗視と、魔力の流れも見えるようにするわ」


 成分を自ら大量に抽出してげっそりしたヘレナは、満足気に微笑んだ。声も美声君なしで、貴女の気に入った大人の妖艶な女性の声に変えてある。だから今はゆっくり休むといいわ。

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