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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第3章 星を造る 神の真似事編

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2 眼鏡エルフの対処法

 特製魔晶石はまた取りに来るそうだ。いいものが欲しかったら、わたしの魔力をもっと上昇させる装具を下さいと、駄目もとでねだってみた。あっさり指輪をくれた。取り引きや駆け引きなしで。


 謎の人だよね、魔女さんも。実はわたしを使って遊んでる気もするのよ。今度来た時は無視してみようかしら。それはともかくとして、さっそく魔女さんから貰った指輪を嵌めてみた。


「えっ····凄っ」


 魔力値の上昇の幅が、わたしの付与の数十倍はありそうだった。それだけじゃないのは、わたしの総魔力をさらに倍化してゆく魔法がかかっていた。最大十段階はありそう。もちろん最大で使えば魔力切れになるけど、この指輪一つでフレミールに迫る魔力が得られる。


 ただ急な魔力の高まりに、わたしは魔力酔いを起こした。これは慣れるまで上昇幅の出力を絞り、使うときは一気に上昇させて最大値で魔力を使い切る方が良さそうね。

 魔力酔いするより、魔力切れしてでも最高の品を作る方がマシだもの。


 ヘレナと先輩が錬金部屋に入って来た。移動中の円盤君には、わたしの魔本を開いて置いてある。錬金部屋以外は治療室も兼ねているからね。魔女さんの依頼が入ると錬金部屋は特殊な空間になるので、仲間たちには何が起きているのかわからないみたい。


 ただ勘の良い先輩は、わたしの指輪に気づいたし、ヘレナはお世話を良くするため知らない物があることに気づいた。


「恐ろしい魔力を感じるけれど、キミが造ったものではないな」


 魔力の違いですぐにわかるわよね。出力が良い意味で壊れているもの。異界の強者が全能感に浸ってしまうの、少しわかる。力に呑まれると、ろくな結果にならないし、魔女さん(アレ)を知ってしまうと、余計にそう感じるわよね。


「魔女さんに、ねだってみたらくれたのよ。ちょうど良いわ、最大魔力で魔女さんの結晶を作りたいから倒れた後をお願いするわね」


 貰ったのはいいけど、最大魔力で普段使い出来ないのは、あくまでわたしの能力の問題なのよね。それなら指輪の魔力を、最大で使う時だけ魔女さん成分たっぷりの魔晶石を使う。いつもノヴェルやフレミールに手伝ってもらう事を、魔女さんの魔晶石に変わってもらえばいいわけだわ。


「その膨大な魔力を回復するのにも、時間がかかるのではないかね」


 先輩の言いたい事はわかるわ。だから先輩とティアマトとノヴェルの錬金釜で先に吸収、再生効果を強化する。


 魔女さんの魔晶石は無色透明だった。色がないとも思えるし、どの色にも染まる。いろんな成分を混ぜて出来たわたしの虹色とは、また別な特性よね。魔力を全て注ぎ込んだため、わたしはヘレナに身を預けて崩れ落ちた。



 目が覚めるとノヴェルが魔女さんの魔晶石を抱え込んで一緒に寝ていた。

わたしが言わなくても、成形して加工しやすい形に変えてくれていたようだ。魔力が異常なので、結界で抑えてもいるみたいね。


「目が覚めたね。何か食べる?」


 あたりは真っ暗だ。円盤君が止まっていてバルスが屋根の上で台座をよけて丸まって眠っている。見張りはヘレナとエルミィがついていた。


「お風呂入ったらいただくわ。わたしの見張り番は最後かしら」


「アスト先輩がまだ造りたがるから放っておけって。だから、カルミアは担当から外して入れてないよ」


 成分の入った瓶を見て、先輩は何か察してくれたみたいだわ。後で入手した経緯を話さないと拗ねそうよね。

 魔女さんの成分は錬金術作業の補助に使うとして、残る二つは半分は魔女さんに渡す。実質最高の状態を維持して扱うのなら、先にそれぞれ専用の錬金釜を作る方が無難ね。


 魔女さんの指輪のように、急激な能力上昇に振り回されては元も子もないもの。


 移動は円盤君なので馬車より速いにしても、リビューア帝国までの道のりは長い。どこまでも一瞬の転移とか、魔女さんの魔力がやっぱりおかしいのよね。でもね、ガレスとガルフが張り切っているし、のんびり旅もいいものよ。


「ねぇ、カルミア。君、暗殺者集団の事をすっかり忘れてないかい」


 二度目の魔力切れでダウンしたわたしを介抱する眼鏡エルフが、呆れたようにわたしの頰を付いた。


「バスティラ国内では襲って来ないわよ。襲うなら、わたし達よりヤムゥリ様に向かうだろうし」


 先輩を狙うなら、こんな街道もない荒野では不利だとわかるわよね。下調べをしなくても、すでに先輩の英雄ぶりは近隣諸国に知れ渡っているもの。ロブルタの危機を救い、シンマを滅ぼした吸血鬼族や、蠍人達を支配下に収めてヤムゥリ様を女王に仕立て上げた伝説の英雄王、それがアストリア様なのだから。


「半分以上はカルミアの捏造が元だよね。まあ忘れてないならいいよ」


 危なかったわね。希少成分がまとめて入ったせいで、自分が何をしているのか気にしてなかったわ。


 そう、あの成分で錬金釜が造れたのよね。一つは異様に浄化能力が高い成分。もう一つは、先輩と同じ美しい群青。浄化の方はアミュラさんが言っていた剣聖の方のものだと思う。わたし達に欲しい強い浄化能力がこれでつけられる。さっそく全員の、主武装の更新祭りよ。


「この群青のものは、【星竜の翼】に所属している皇女のものじゃないかな」


 先輩が思い出したように話しに割り込んで来て、わたしの首を狩った。いたわね、確かに。活躍の話しはまあ、みんなも知っているくらい有名だからいいとして、その方の成分を抽出させた魔女さんとのやり取りを詳しく知りたいわ。


「成分欲しさに、シャリアーナ皇女に詰め寄るのは止めたまえよ。商人に頼むのもなしだ」


 わたしの性格を良くわかってるわね、この先輩。アミュラさんの事で、すでに余計な仕事が増えた事を察しているようね。あれ、もしかして皇女様に嫉妬しているのかしら。


「グエッ」


 図星だったみたいで、先輩の腕の締めが強まった。そんな顔をしなくても、先輩がわたしを逃さないように、わたしも先輩を手放すわけないわ。英雄性では先輩も負けてないですよってば。

 じゃれあっているとエルミィに突撃されて、逝ってしまうので大人しくしましょうか。


 浄化能力に関しては、ヘレナの剣が一番相性が良かった。ノヴェルや先輩とよく一緒にいる影響なのか、炎だけじゃなくて大地の力が強まっているのよね。


「ほわぁ〜、見てよカルミア。わたしの剣が」


 ヘレナが剣を掲げてはしゃいでいる。なんか見た事がある光景だ。でも今回の更新は【不死者殺し】と呼ばれる剣聖の方の能力が宿っているので、浄化能力がとにかく強いのよ。


「魔力はヘレナと変わらないくらいなのに、浄化能力と剣そのものの技量が優れている方のようね」


 ヘレナに合うのも同じ剣士、それに魔力量が同調しやすいためなのかもね。


「僕の魔銃も、浄化弾を放てる仕様に切り替えたまえよ」


「先輩の魔銃は弾丸でいいじゃないですか。怪光線なら切り替えしやすいですから直せますよ」


 魔銃の方は、魔力弾を発生させる装置と浄化弾を装置を併設するために、大きく重くなる。使う時に扱い難くなってしまいそうなのよね。


「むぅ、ならば改良型が出来るまで胸当てで我慢しよう」


 最近先輩がわたしや仲間に対して、我儘を口にするようになった。相手するのは面倒臭いけど、いい傾向だわ。

 一見人懐っこいのに、元王妃様や現王妃様のせいで、甘え下手なのよね。

 ヘレナやシェリハは面倒見が良いから、もっと駄々こねてみるといいわ。


 というかエルミィみたいに、溜め込んで暴発されるのが困るのよ。ヘレナや先輩のはしゃぎぶりを見て、眼鏡をぶるぶる震わせ始めた。


 わたしは魔女さんの指輪を最大出力にして、先輩の胸当てを新錬成させてから意識を離した。

 感情の行き場をなくしたエルミィが、わたしを揺さぶり騒いでいるけれど、意識を先に失えばこっちの勝ちなのよ。

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