5 受付嬢の闇
あの災厄をもたらす女が、ロブルタ王都にある我が冒険者ギルドにやって来た。少女達だけの冒険者パーティーなら危険だ。本来なら無理させずに先に講習を奨めるのが私の仕事。
でも全員が魔法学園の魔法を使える生徒達で、すでに鉄級冒険者が三人に銅級上位が一人。新人パーティーながら実力的にはDランク扱いの有望株だと思った。登録してすぐにダンジョンへの探索許可は出せるレベルだ。
街中で、彼女達にちょっかいをかけたCランクパーティー冒険者達が、酷い目に合ったときも、私だけは彼女達の味方だった。だいたいあの冒険者達は偉そうに講釈をたれたり、いやらしい言葉や手癖で困らせたりするので、痛い目にあっておかしくなかった。
冒険者の人達が、目つきの悪い美少女に次々と返り討ちに合うのを見て、正直に言ってざまぁと思った。
でも、あの頭の少しおかしい少女は、先輩冒険者だろうと、親切な受付嬢だろうと容赦ない事を身を持って知った。
きっかけは潜在的な実力は、CどころかBランクはあると思える彼女達のじつりを見込んでの、ギルドマスターからの指名依頼だった。
彼女は学園内でも彼女は有名で、学園始まって以来の問題児だといわれていた。錬金術師である彼女は、勉強のためなら自由に使って良い素材を鬼のように使いまくる。それにより、薬学科の初夏の名物の薬湯に使う素材が不足した。
学校側の依頼と、特定の生徒への牽制したい思惑に、調査で上がりだしていた魔物を退治出来そうなパーティーに、白羽の矢がたった。ギルドマスターとしては、期待も込めての指名だ。
普通なら名誉の依頼を、彼女カルミアは、嫌がらせと思ったとか。そして、彼女の復讐の相手として、まずは私が狙われた。根は素直でいい子、なんて同僚達に吹聴していた私を沈めたい。
あの女は悪魔だ。お膳立てしたのが私だと見抜いて、きっちり仕返しをしてきた。こちらがどう思ったのか、善意の行いでも、彼女が、どう判断するのかは別だった。
騙した形で依頼を出したのはギルドだから仕方ないの。でも、普通ならギルドマスターの指名依頼は報酬も良くて、名誉とか箔付けになって喜ばれるもの。
私自身、彼女達が気に入っていたのに調査依頼へ赴いたら、あっさり協力を拒否された。そして身を守る為に使うと良いとされた変な玉を渡され、実際に使う羽目に陥った。三日経っても臭いが取れず、いい感じの上級冒険者さんから距離を置かれた。
あの時から私の日常はおかしくなっていった。
何が許せないって、あの少女は自分の仕出かしたことを都合良く解釈したり、忘れる。もっと悪いのは、わかっていてそれをさせる。
ギルマスは見事に少女の策にはまり、無惨な頭部を晒すことになった。悪魔と言ったのは、文字通り魂を要求するからに他ならない。
髪の命運を握るだけで、ここまで他人の心を鷲掴みにするのは驚愕に値した。
それでもあの頭のおかしな少女と付き合うようになって、良かったのは王族に目をかけてもらえた事だ。
上級冒険者なんて目じゃないわ。王子様だよ、王子様。
第三王子だから立場は弱いけれど、その分引き上げてもらう機会がある。
私の人生、ようやく運気が上がって来たと思ったのに、色々知ってはいけない事を知らされ、むしろ落ちたら死ぬ崖っぷちを歩かされている感じになった。
やはりカルミアは悪魔だ。私のギルド内での評判はウ◯コ臭い娘と最悪の状況なのに、変態黒パン◯と言う、崖から落ちて、さらに底なし沼に沈む未来が待っていた。
アスト樣の専属になって、ギルド内での仕事が減って良かった。可哀相な娘を見る目や優しい慰めの言葉に、辛い気持ちをほじくり返されずに済むだけマシだった。
あの少女のせいで、不敬罪で国王陛下に首をはねられてもおかしくなかったから。
それでも、カルミア達といるのは楽しい。よく泣かされるけど、ヘレナやノヴェルが慰めてくれる。カルミアも成分を絞る事には容赦ないけど、私の大事な仲間を助けて、心配してくれる。
アスト樣が、正式なロブルタ王国の世継ぎになっても、この仲間達は変わらないから好きだ。でもねカルミア、火竜も泣いて逃げ出す下剤は人族に使うのは止めようよ。
魔女さんとカルミアが呼ぶ魔法使いの方の薬で私は死の淵から戻る事が出来た。絶対にあの悪魔な少女にも飲ませてやる。私、ヤムゥリ樣、フレミールは無言で手を差し出し復讐を誓ったのだ。




