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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第2章 砂漠の心臓編

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23 デカブツを作ろう

「ノヴェル、神殿の上ものをどかすから、ブロックの土台を地下通路の入り口に作ってくれるかしら」


 私財や素材回収のために、わたし達は滅びの都に滞在していた。オルティナさん達は魔女さんが来た時に連れて帰って行った。記憶を除いてしまったけど、おかしくならないよう記憶の整合性が取っていた。わたしが自分で辻褄合わせをしたようね。


 なんか頼みがあるって言っていたのに、聞きそびれたわ。また会えた時に覚えていたら向こうから言ってくるわよね。


 瓦礫を一通り集めて、復興用に新たに改造して作った瓦礫人形君(クレイゴーレム)が大量の瓦礫を固形化してゆく。


「造っておいてなんだけど、なんで瓦礫が溶けて融合して強化成型されているのか、よくわからないわね」


 スライム型ゴーレムのスマイリー君といい、聖霊人形(ニューマノイド)といい、時々招霊君が入り込んで、高性能化した生命が出来るのよ。


「クレイゴーレムって、確かにこうした廃墟の瓦礫から魔物が誕生したものだけど、これは違うわよね」


 ごっつ君の面影があるので、じっとしていると石像にも見える。力はあるし、自動撤去掃除君(クレイスウィープ)の運んでくる瓦礫から貴重品や通貨など出てくると、きちんと仕分けてくれる。

 遊びでお宝探しをしたけれど、はじめから作っていたら、わたしの勝ちだったよね。


「複数人を使ったのなら反則負けだよ」


 人形(ゴーレム)を何人作ろうともわたしの能力なのに。先輩に首を狩られ、ぐへぇっとなった。滅んだ他所の国にの王宮跡で埃塗れになって宝探しを楽しむ一国の王子様。わたしが作業用の人形(ゴーレム)を作ったので、やる事がなくなって暇そうだ。


「ロブルタの王宮に戻りますか。あっちはあっちで、帝国の余波に巻き込まれる可能性が高いですが」


 ヒュエギアやノエムが何も言って来ないので、いまのところは大丈夫なのだろう。


「かまってほしいわけではないぞ。ハリボテで構わないからデカブツの人形を作って、遠目から見えるようにしたまえ」


 先輩は宝物殿に残っていた財宝の状況を分析していたみたいね。ヤムゥリ王女様の一族が、ろくに財産を持ち出す間もなく逃げた事を心配していた。


「野垂れ死にしてくれてれば、手間がなくて済むのに」


 わたしの近くにいたヤムゥリ王女様が毒づいた。王女様の機嫌が悪いのは、彼女の姉のユルゥム王女が、難民に紛れてロムゥリまでやって来たと、ドローラから知らされたからだ。


「生き抜く事において、随分と賢明な方ではあるのかしらね」


 私財のない逃避行には先がないと見切り、ユルゥム王女はロブルタ王国への亡命をはかった。憎くても彼女の存在を、シンマ王族であると唯一認めてくれるはずの妹は不在だった。騒ぎを起こす不審人物として、ユルゥム王女はロムゥリで投獄されていた。


「ユルゥム王女はヤムゥリ王女様に任せるとして、逃げた王が生きているのがわかった以上、異界の強者も生き残っている可能性は高いわね」


 先輩がデカブツもどきを作るように言い出したのは、蠍人がまだ滅んだ王都を支配しているように見せかけるためだ。シンマの元王に力がなくても、部下達の異界の強者がどれだけ残っているのか不明だからね。


「それならいっそ、乗って戦えるようにしましょうか」


 以前にそんな案を考えていたわよね。幸いな事に、牛人、蠍人にフレミールの抜け殻と、巨大生物の素材が揃っているのだ。


 基本的に普段は歩行位置を整えて自動で動かし、乗り込んで操作も出来るようにしたい。実例を示したセルケトがいるので、いまなら造れそうだ。


 デカブツ生命体には膨大な魔力が必要だけど、これなら魔力を節約出来るものね。


 おじいちゃん先生の蔵書に異界の巨大器械化兵の話しはあって、巨大搭乗兵器には興味あったのよ。あれは魔力と違い、核熱などで動かすようだけれど、仕組みも回路も複雑にし過ぎで故障しやすい気がする。直すにも専門家がつきっきりで必要だから面倒なのが難点よね。


「魔力動力源て、単純に魔力供給が絶たれたら終わりだけど、便利よね」


 巨体を支える骨格も、要衝部に自動修復や、浮揚式の魔導回路を独立させて組むことで負荷を減らせる。重量の負荷をかけない工夫が肝要なのだ。人で言う命令伝達の神経も、直接繋ぐものと、魔力念波で動かすものを組み込むことで重破壊に対応させた。


「外殻一つ一つに魔力式を組み込めるから、耐性、吸収、反射が選べるわ」


 器械兵が虫っぽくなるのは、こういうことかと作っていて納得したわ。聖霊人形(ニューマノイド)と違って、部品(パーツ)を一つずつ組み上げられるからいろいろ詰め込みたくなる。


「バラバラの付与を組み込んでも、一つのものという認識を持たせないと打ち消し合うのだな」


 目を輝かせて手伝っていた先輩が、試作品の巨大な腕を動かそうとしてみて失敗を告げた。細かく詰め込むのには、別な魔導回路なり刻印などで、部品(パーツ)単位ではなく部位(ユニット)単位で統一させた方がうまく行った。


先輩型器械像(アストタイプ·タロス)の構想で、蠍人だけど、棘部分に結界や魔力弾を発射する魔力砲門を設置したわ。ハサミの間からは火竜の咆門(フレミール·カノン)も放てる仕組みよ」


 ヒッポスくらいの大きさの魔物ならハサミで刻んでしまうパワーに、相手が同じようなデカブツなら、ハサミで掴んで近距離からのブチかましが可能なのだ。


 ヌッフッフ〜、いいわ。いくらでも武装が詰め込めるわ。


「ねぇ、カルミア。そんなにあちらこちらに魔力砲門とかつけて、魔力供給が追いつくの?」


 魔力があまり多い方ではないヘレナがわたしの暴走を止めた。乗り手の魔力は基本的に操作に使うので手一杯なのに、大量の魔力消費を要求される砲門攻撃は乗り手の魔力では補いきれない。


「魔晶石を使うにしても、三十M級の巨大な器械像にどれだけ使うのか考えようよ」


 各砲門は基本的には魔晶石供出型にして、魔力吸収の外殻で魔力を吸収した時に使えるように変更した。供給なしだと数回撃つと弾切れになるけど致し方ないわよね。


 火竜の咆門(フレミール·カノン)は巨体に合わせ大型にしたかったけれど、三門を三角二つを六芒の形に設置した。最大火力を放つ時は全門同時に放ち、相手の強さによって、通常砲門、火竜砲門を三段階に分けて使うのだ。


「うぅ、翔べる機能もつけたかったけれど魔力的に無理だわ」


 馬鹿げた魔力を持つ魔晶石に、心当たりがあった気がするけれど、また貰えた時に改造するとしましょう。


「そんなわけで、巨大蠍人器械像(アンタレス·タロス)の完成です」


 本物よりも小さくなったけれど、他に二十Mくらいの大きさで、四体のハリボテ巨大蠍人の像を神殿に置く。


 その他に巡回ごっつ君のように、先輩ごっつ君・哨戒型(アスト・シーカー)自動で見回るものを四体作る。まともに戦う力はないけれど、十M以上の器械像を蠍人型にしてうろつかせておけば、戦力も増えて健在だと勘違いするわよね。


 おまけに三Mの蠍人器械兵(タランチャー)を二体ずつつけると、物々しさが増した。これはハサミから魔力弾丸を乱射出来るようにしたのだ。


「遠目から偵察部隊を誤魔化せればいいからね。近づいて死にたくないだろうし」


 あとは滅びの王都の近郷の再生だろう。ロブルタの農園にいるヒュエギアから種を送ってもらい、ロムゥリからはドローラを呼ぶ。干上がったかつての水辺付近に、エルミィとティアマトが水の魔法で水源を確保し、ノヴェル、ルーネ、ドローラが大地の再生を行った。


「あぁ、なんて素晴らしい光景なのでしょうか」


 セルケトが感動して三人に向かって拝むように膝をついた。貴女、一応蠍人の女神様(シンボル)なのよ。

 感涙しているセルケトには聞こえてないようなので放っておくしかなかった。


 滅びの王都は、こうして再生して生まれ変わった。セルケト達のかつての故郷の都の名前を取って、エドラと名付けられた。蠍人達の神殿があるので、聖域エドラと呼ぶことになりそうだ。


 復興を行っていると、正気に戻った蠍人達がエドラに集まって来た。呪いは解けても元々侵略者でもある。わたし達を見て攻撃をしようとして来たので、フレミールが竜化して一喝した。


 そしてセルケトを始め、集まった三千人ほどの蠍人がわたし達に平伏していた。セルケトが全てを話して聞かせ、故郷の復興にも力を貸してくれる人々だと言い聞かせたのだ。


 もちろん全滅するまで戦おうと言うのなら、やるわよ? セルケトの魂は得ているから、蠍人が本当に絶滅することはないもの。


 蠍人達が、セルケトの真似をして魂を捧げると言い出した。敵対する意思がないのならそれでいいわ。

 ここにいる先輩や、ヤムゥリ王女様の言う事をよく聞いてくれればそれでいいのよ。


「なんかさ、カルミアが邪神より邪悪に見えるんだけど、気のせいかな」


 何を言ってるのよ眼鏡エルフは。慈悲を与えまくっているわたしと邪なるものとかいう、器の小さい神なんかと一緒にしないでほしいわ。

 大地の再生はノヴェルやエルミィ達の力なので、確かにわたしは何もしていないんだけどね。


 成分もらったから、セルケトに魂はちゃんと返したし。なかなか受け取らないし、もっと成分を絞って下さいとか言い出して危ないのよ、あの娘。

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