表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第2章 砂漠の心臓編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

141/199

22 魔女さんの成分

 蠍人の巫女の名前を聞いてなかったわね。彼女はセルケトと呼ばれる蠍人の女王でもあった。女神のように扱われていたのは、その魔力の高さゆえのようだ。


「貴女がたの来た当初、ロブルタやシンマはもっと緑豊かな土地だったのは確かなのね」


「はい。とくに神殿のある地は自然豊かで、多数の動植物がおりました」


 そもそもこの大陸が暗黒大陸とか、わたしの故郷の地が黒の大地と呼ばれていたのは、濃い緑の大地を様々な魔族が暮らしていたからだ。


 魔族が多かったから魔力が濃かったのか、そういう土地だったのかもね。バステトの一族も、どちらかというと猫人族というより、猫魔族って呼んでいいくらい魔力は高いものね。


 均衡を破るもの(バランスブレイカー)がやって来たせいで、ロブルタもシンマも酷く荒れた。傍目からは、きっかけがこの蠍人達だったようには見えないものね。


 オルティナさん達から、お隣のムーリア大陸の詳しい話しを聞いたので、あの時代に何が起きたのか紐づけ出来たわ。


「この世界を破壊しようとした悪しきもののせいで、異界の強者や勇者の強制召喚も多発したのね」


 中には呼ばれたのを幸いと、邪なるもののように、ダンジョンを築き侵略の根を張る邪神もいた。この世界がどうなろうと構わないから、とにかく奪い尽くそうとする狂った偽神のせいでティアマトの両親や、バステトの国は滅んだ。


「ドヴェルガー達が狙われたのは、侵略口の拡張ね。そのあたりは、悪しきものと邪なるもの達とは見解が変わるようだけど」


 侵略の目的は一緒なのだけど、悪しきものは破壊したいだけ。だから、邪なるもの達と最終的には争うことになったと思う。いや、実際もう争っていた。


「迷惑な話しね。他星(よそ)でやってほしいわよ」


 オルティナさん達のリーダーは、この世界から迷惑な存在達を一掃しようと戦っていた。冒険者(チンピラ)達も、ムカつく女商人(リエラ)なんかも、そのために動き回っていたのがよくわかったわ。


「弄ばれていたと言う意味では、悪神も魔女さんもわたし達からみれば同類よね」


「えっ、なんでそうなるの?」


 オルティナさんが衝撃を受けた顔をした。仲間達は逆に頷く。


「良いか悪いかは、別の話しなのよ。わたし達にとって、雲の上の存在の善し悪しなんてわかりっこないものね。わからないから、シンマもローディス帝国も今までずっと利用されて来たのでしょう?」


 オルティナさん達を責めてるつもりはないのよ。援軍にも来てくれたからね。でも、迷惑は迷惑なのよ。そこら辺は認識しておいてもらわないと。


「元も子もない言い方よね」


 なぜか、ガリアさんに頭をぐしぐしされた。怒ってはいないみたい。


「怒るわけないじゃない。文句言いながらもこうして戦果をあげて素材も確保して、平定してくれたのに」


 背後に魔王がいた。魔女さんなんかじゃないわ、魔王様よね。気配なんてなかったのはずなに。この人、一方的に喋るし、不意に勝手にやって来るのよね。


「蠍の子達の生き残りは、確認出来たものは全員ここへ来させたわ。あちらの世界を、見てきたのよね」


 魔女さんは知っていて訊ねた。この魔女さんなら蠍人の世界を何とか出来るのかしら。


「貴女がやるのよ。巨大蠍の心臓石(アンタレス)を持っているのでしょう。あれとその娘の持つ星核の欠片を宝珠に集め蠍人達の魂を融合させて、真星核にするといいわ」


 魔女さんはそういうと、わたしがアミュラさんと取り引きしたはずの虹色輝星石(カルミアスター)を手渡した。


「ご褒美よ。わたしの成分を抽出して造り直してあるから、真星核を造る時に使いなさい」


 ふぅぉ〜っ、何これ。輝きが眩しすぎて目をやられる。魔女さんの成分とか、この人使役する側じゃないの?


 魔力がおかしなことになりそうで、今のわたしには宝の持ち腐れだわ。何がヤバいって、この会合の間は時間が止まっている。


「それの代わりに、いま貴女が首から下げている首飾りを頂戴。アミュラから無理矢理取って来ちゃったから」


 何してるの、魔女さん。アミュラさんが、目茶苦茶騒いでる姿が浮かんだ。首飾りを交換すると、魔女さんはわからないようにわたしの首飾りの魔力を付与で抑え消えた。急速に時間が動き出す感覚にわたしは戸惑う。


「むっ、この気配······」


 フレミールは流石に気づいたみたいだけど、口には出さなかった。魔女さんが来たことは、流石のわたしも黙っておく。魔女さんも、そうしてほしいからああいう現れ方をしたのよね。

 思考から漏れるといけないから、記憶を首飾りと一緒に封印した。


「さあ、王宮跡へお宝捜しに行くわよ。自動掃除人形君(オートスウィープ)は出払っているから人力よ」


 一番の楽しみは、やっぱお宝捜しに限るわよね。それも、国庫級の財宝があると確定しているもの。


「なんだか、盗賊になった気がするんだけど」


 真面目な眼鏡エルフはこれだから。


「滅んだとはいえ、シンマの王女様の許可があるのよ? 文句があるなら財源を提示しなさい」


 セルケトの話しでは、蠍人の武装は神殿や王都の騎士団跡から徴収したもので、貴金属の回収はしてないとのことだった。


 吸血鬼族の襲来と蠍人の出現と、立て続けに起きた騒乱で、私財を運び出して逃げおおせたものは殆どいなかったようね。


 何度も口を酸っぱくして言うけれど、復興に次ぐ復興で予算も食糧も空なのよ。野盗の真似をしようが、復興のために使えるものは使う。


 権利? そんなものは民を見捨てて国を放棄した時点で滅んだわよ。王宮の私財は、ダンジョンのお宝と同類なの。強いて言うなら正統の血筋を受け継ぐヤムゥリ王女樣のものね。


「ヤムゥリが許可を出したのだから問題ないだろう。誰が一番お宝を発掘するか競争しようじゃないか」


 先輩の言葉にみんなの目が輝く。お宝に興味のないルーネにフレミールとバルス、それにオルティナさん達が周囲の警戒をしてくれる。セルケトは円盤君の中で魔本を開き、寝室で休ませた。


「ふんグゥ!」


 あっ、これ、わたしは絶対に勝てないやつだ。いそいで自動掃除人形君(オートスウィープ)を一体作り、瓦礫の撤去と財宝の探索を行う。


 でも体力おばけどもの速度には敵わない。ティアマト、ヘレナ、ノヴェルはいつもの事だけど、エルミィにシェリハまでそっちの住人なのかと思える力があった。

 あっ、エルミィは魔法を細かく使ってるからだわ。


「私は無理。あなた達に任せるわ」


 メネスとヤムゥリ王女様はわたしの側ですでに諦めていた。メネスはお給与よりも、平和で安全な生活こそ一番大切だと気づいたようね。以前ほどがっつきが減っているもの。


 先輩はというと小さくなって、いつの間にかごっつ君に乗っていた。先輩しか出来ない、いい手よね。バステトは影に潜って、財宝だけを見事に探し出していた。あれも真似出来ないわ。


 最終的には、宝探しの勝者はノヴェルだった。瓦礫を意のままに魔力で退かして、宝飾品も見分けるため、ノヴェルが一番早かった。


「おらカルミアのために頑張っただよ」


 健気でいい娘ね。わたしは作業中につけた手袋を外して、ノヴェルの頭をワシワシした。


 次点はバステトで、こちらは潜るので速い。ただ、宝探しでノヴェルに負けた。


 三位はティアマトだ。彼女は力づくで瓦礫を排除出来るし、お宝も匂いで目処がつく。ただ、両者に比べ速度で負けていたわね。


 わたしは試合放棄した二人がいるので、ヘレナ、エルミィ、先輩、シェリハの後だ。実質順位は、最下位よ。むぅ、悔しい。


「わざわざ掃除人形君を造るのなら、ごっつ君ベース作って瓦礫を片付けさせれば良かったのに」


 眼鏡エルフが落胆するわたしに、トドメの言葉で追い討ちをかけに来た。


 おかけさまで復興用に、自動撤去掃除君(クレイスウィープ)が出来た。瓦礫を回収掃除して、成形し直して塊にする優れものよ。エルミィめ、もっと早く言って欲しかったわ。


 連戦疲れもあるけれど貰うものは貰えたので、あとは街の埋もれた私財を回収するだけね。えっ、それもみたいな顔は止めて。使えるものは隅々まで全部回収するのよ。

 復興資金の他に、運営資金というのも必要になるに決まっているのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー用
 推理ジャンルも投稿しています。応援よろしくお願いいたします。↓  料理に込められたメッセージとは
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ