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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第2章 砂漠の心臓編

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13 蠍人の将官たち

 わたし達の攻撃を受けて、蠍人の統率が完全に乱れた。恐慌に陥り逃げ出す魔物は吸血鬼族の戦士達に任せ、先輩達は敵の将官らしき蠍人の近くに降り立つ。指揮官から情報を得るためだろう。


「フレミール、わたしを先輩の所まで投げて」


 呪いの魔装具らしきものが妙に引っかかる。どういう類いの呪いかわからないのなら、尋問より滅ぼすのが先決だ。


「先輩、ルーネ離れて!!」


 後から合流して来たノヴェルとバステトは、わたしが火竜の咆門(フレミール·カノン)を展開したのに気づいて、二人を抱えて飛んだ。


 弱ったり死んだはずの蠍人が呪いの力で生き返る。というより不死者より厄介な事に、再生しながら復活する。


 わたしは至近距離から、蠍人達に向けて砲撃をする。お高い装備を回収したかったけど、この際仕方ない。

 無理やり火力で沈黙させたけど呪いの魔装具を身に着けた、蠍人は簡単には倒れなかった。


「やるな人間。だが、このアクラブ、それしきの攻撃では死なぬ」


 嘘でしょ、と思いたい。他の蠍人は呪いが解けて、灰と化したのに。魔装具の力だけじゃない。この蠍人自身が金級冒険者並の強さがあるってことだわ。


 砲撃後の無防備なわたしに、蠍人のアクラブは容赦なく尻尾の毒針で刺し殺そうとした。かろうじて浮遊する火竜の咆門(フレミール·カノン)で防ぐも破壊され、手に持つ曲刀で斬りつけられた。


「魔力もそこそこ、あるな。このアクラブがその魂をもらい受けよう」


 わたしの首を狙って蠍人の曲刀が平行に斬りつけられる。しかし、ノヴェルが大地の魔法でアクラブと名乗る蠍人を押し潰す。先輩がすかさず浄化と殺虫剤の弾丸で追撃する。


「ぐっ、これはなんだ」


 浄化は多少力を弱めた程度だった。これはわたしの魔力が呪いの魔装具の術師と同じくらいの実力だったってことね。

 それともう一つの先輩が放った殺虫弾は、あの忌まわしき黒いやつを一網打尽にするほど強烈なやつだ。呪いで復活? 黒いアイツのタフさに比べたら呪いなんて関係ないわね。


「アクラブの首は我輩がもらうねィ」


 まあ、黒いアイツは倒せても蠍人の呪いは無理でした。でも、そういうの専門に刈るのが、こちらにはいたわ。


 ノヴェルと先輩、それにルーネが状態異常魔法で援護したため、蠍人は動きを鈍らせた。そこへバステトがトドメの一撃を加えた。


「最近は草刈り鎌として使ってないのに、対した威力ね」


 呪いの力ごと刈り取るとか、バステトしか出来ないわ。


「我輩、あの邪神(クソったれ)の首を刈るねィ。カルミアの首はアストと刈るよィ」


 うわっ、まだわたしの首を狙ってるのね。蠍人を滅ぼしたところで先輩に首を狩られた。


「キミはどうしてそういう無茶をするのだね。フレミールが泣いてるじゃないか」


 砦の方が騒がしい。伝声からフレミールがアワアワしている声が届き、うるさいから伝声を切る。


「嫌な予感がしたの。以前に先輩に守られたから、お返しですよ」


 あの呪いの攻撃は、魂を穢す。いまの先輩には相性があまり良くないと感じたので飛び込んだ。


 わたしが受けた呪いは、おいおい泣きながら飛んで来たフレミールが浄化してくれた。貴女、火竜なんだからもう少し堂々としてなさいよね。


「バカモノ。戻って来たヘレナ達にやいのやいの言われる身にもなれ」


 それって、あとでわたしまで怒られるパターンじゃないのよ。ヘレナ達は吸血鬼族の戦士達と素材回収を行っている。圧倒的火力で制圧していたので、蠍人の復活などには気づいていない様子だった。


「バステト、あなたひょっとしてあいつらに力を奪われてるの?」


 バステトの魂の輝きに変化があるように見えた。


「そうねィ」


 狂人がコクンと頷く。ずっと力のバランスが悪いなと思っていたのよね。魂をくれたのは、彼女なりにその力を補うためだったのね。意外と考えてるわ。


「自分で刈らなくても、もどるのね?」


「あとサルガスとシャウラを倒すねィ」


 似たような敵将があと二人もいるようだ。どうも呪いの魔装具の他に、大量の魔物を召喚する力を持っているらしい。


「大量の蠍の魔物をあれだけ用意したのは敵将達なのね」


 魔物の大暴走(スタンピード)が起こせる魔将官があと二人もいるとか悪夢よね。蠍の魔物は雑食なので、蝗同様に大地を荒らす。


「あいつらの素材からこっちも何か対抗しないと、せっかく実った穀物や果物まで食いつくされちゃうわ」


 今回はまだ一軍団で済んだけれど

二面三面に展開されると、ロブルタ領内に進入されてしまう。


「バステト、貴女猫人族の眷属以外に呼べるのかしら。出来るなら力を貸しなさいよ」


「我輩が呼ぶのは難しいねィ」


 いまのバステトの状態では無理らしい。呼ぶには農園を守らせてる眷属を戻す必要があるそうだ。


「補給もあるから、砦に戻るわ。バステト、部屋の中で錬生するから力を貸しなさいよ」



 砦に戻ると、魔本を開き錬金術室へ入る。見張りは仲間達に任せて交代で休むように先輩が指示していた。集めた素材や魔晶石は倉庫へ運ばれる。わたしはそこから壊れた呪いの魔装具や蠍の殻を回収しておいた。


 魔物を狩れるのと、呪いの魔装具に対抗するために、わたしは新たな錬成生物を造る。バステトに首を貸すかわりに魔力をもらう。


 生み出したのは殻を破る猫(シェルバイター)だ。白と赤の見た目は美しいけれど、呪いの力を破る猫の魔物だ。狂人は鎌で刈っていたけど、この新たな猫の眷属は呪いを喰らう。


「これで、よしと。バステトが援護に回った時に、呪いの魔装具持ちを倒せないと困るからね」


 名前はバルスになった。猫って言ってるけれどヒッポス並に大きな体格をしてる。ヒッポスと違って重たいものは引けないけれど、素早く動けて戦える。


「我輩の騎獣にくれいョォ」


 一目惚れしたバステトがうるさいので、戦いが終わったら眷属に加えさせることになった。どっちもニタ〜ッて嗤うから怖いけど、気が合うみたいね。

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