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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第2章 砂漠の心臓編

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12 圧倒的な火力

「それじゃあ次、招霊君集合」


 先輩用には魔女さんのオリジナル宝珠を、ノヴェルとルーネ、それにバステトにはわたしの作った聖霊珠を渡す。バステトの魂は既に返してある。万一わたしが死んだ時に、巻き添えで死んだら悪いもの。


 蠍人にやられたせいか、招霊君の数は増えていた。やはり悪しきものと同じで、魂は空っぽに近い。


「元々敵なのだから同情はしないが、同じ世界を生きるものとして、キミ達の無念を晴らそうではないか」


 ふひゃあっと招霊君が歓喜するように舞う。この先輩、たらしよね。生まれながらに玉座が合う英雄って、こういう人なのだろうと思う。


 普段はわたしの周りを黒パン一丁でうろついてる変質者だけどね。


 出撃前だと言うのに先輩がわたしの首を狩り、締め落とそうとする。怖いのならヤムゥリ王女様と大人しくお留守番していてほしい。


「キミというやつは、認識を改めることを知らないようだな」


 先輩に首を狩られグェっとなっているわたしを見て、みんなもうすっかり慣れて微笑む。出撃前の儀式みたいなもので、緊張が解けるのだ。いや、落ちる前に助けてね?


 蠍人の軍団の進み具合は早い。でも、その侵略速度のおかげで突出した軍から個別撃破していける。


 ロムゥリの街から一日歩いた先に敵の大軍の蠢く姿を確認出来た。わたし達はシンマの王都へ向かうための街道に戦馬車を持ち込み、簡易の砦を築く。


 ノヴェルが土を盛り上げ、その砦の前を、ドローラが樹木の柵で左右それぞれ二百Mほどの防柵を築いてくれた。


「ありがとう、ドローラ。戻ったらヤムゥリ王女様のこと頼むわね」


 簡易砦を築いた後、魔本を使ってドローラが戻っていった。防柵はただの足止めだけど、ルーネがそこにカカシラの種を蒔いて発芽させ成長させたので、蠍の魔物の嫌がる臭いが出ていた。


「あんなの簡単に壊されないの?」


「蠍人には簡単に壊されるでしょうけど、いいのよ」


 心配するヘレナも、浮揚式鉢植砲(テラリウムキャノン)を当てやすく、効果を発揮出来るためのものだとよくわかっていた。


 嫌な言い方だけど、逃げ遅れた人の多い地域と、何もない地域では侵攻に差が生じる。眼前に迫る軍団が突出したのは、狩れる獲物が少なかったから早く到着したのだろう······ともとれた。


 吸血鬼族の偵察と逃げて来た人々の話しを聞く限り、ロムゥリへ向かってくる可能性のある五つの方面軍の内、三つの軍団が来るのは確実だった。


 その内二つは人々の避難が早かった地域、つまり侵攻が進みやすい戦況だと思われるわけね。無駄に生命を散らさずに済んだと思えば良いのかな。


「ヤムゥリ王女様から連絡が入れば、こちらから一部隊援護に回すつもりよ」


 わたし達も部隊を三つに分けていた。砦を中心に中央をわたし、先輩、ルーネ、フレミールが吸血鬼族の戦士達と守る。


 左はヘレナ、ノヴェル、エルミィに吸血鬼族のミューゼと戦士達が守りにつく。右はティアマト、メネス、バステトと吸血鬼族のヴェカテ達がいた。


「援護には魔本を使って、ティアマト達に戻ってもらう。その時はわたし達も砦に合流して足止めしつつ、後退する」


 これは事前に先輩と決めていた。わたしたちを脅威と認識させれば、蠍人は食いつく。ロムゥリに近づいた時に一気に後退してフレミールの火力で一網打尽にする作戦だ。


 作戦通りにうまくいかなくても、だいぶ間引けると思うのよ。


「来たよ」


 遠見をしていたメネスから敵の接近が伝えられた。報告では三千の蠍人だったはずだけど、あちらも獲物とした人々から情報を集めていたようだ。


「魔物とは違うのが厄介よね」


 力押しの根幹は魔物。でも指揮するものがいるだけで、ただでさえ多い敵の戦力が倍加する気がするわ。シンマ軍には、使い捨てのようにゴリ押しする魔物が先に全滅したので戦えた。


「邪なるものというだけあるわね」


 ずる賢い戦略の取り方だと、感心している場合ではなかった。


「一方面まとめて来てくれた方が、こちらとしてもやりやすいけどね」


 五千の魔物を本隊に残して、三万近い魔物が先行して来た。無理はさせてないので、敵の数の増減は誤差の内だ。


 砦を見つけ向かってくる蠍の魔物はノヴェル程の大きさから三M以上の大きなものまでいた。

 先輩達飛翔部隊が飛び立ち、一斉に浮揚式鉢植砲(テラリウムキャノン)による炎熱集束砲(フレアブラスト)を御見舞する。


 小さな魔物は即死、大きな魔物は外殻も厚くて仕留め切れなかったけれど、大きなダメージを与えられた。


 足止めにもなり、こちらの砲撃が当たりやすくなる。カカシラの粉混じりの煙幕弾を魔物に撃ち込み、誘導してみる。すると煙と辛味を嫌がり、弱った魔物が集まりだした。


 蠍人達が慌てて魔物を戻そうとするけど、もう遅い。砦に残るわたしの火竜の咆門(フレミール·カノン)が一斉に火を吹いた。


「オマエ、ワレの出番をなくす気か」


 風樽君を魔改造して、高火力にも耐えられるようにした自慢の砲撃武装よ。

フレミールいらずと名付けたら、フレミールに頭を噛じられた。


「フレミールの魔晶石を使うのが難点なのよね」


 火竜の魔晶石を惜しみなく消費するのは、錬金に関わるものが知ったら魂の声が聞こえそうよね。庶民だった頃には考えられない贅沢使い。それなのに庶民の頃より貧乏になってるのは本当におかしい。


 蠍人の陣が崩れた。火力が高くて砲撃に巻き込まれたようね。


「魔力展開しているぞ」


 さすがに対応は早い。大型の魔物が盾になるように囲み魔法による耐性強化を受ける。上空の部隊には、魔法部隊と戦弓部隊が集中攻撃をして来た。


「あの蠍人が指揮官ね」


 他の蠍人よりも、大きく装備も立派にみえた。蠍人は外殻が頭や背にあるので柔らかい人族の部分を守るため、鎧というよりも装飾品に見える。


「あれは結構強力な呪具ね」


 シンマ軍との違いはやはり魔法ね。脳筋戦士の見た目なのに、魔法耐性が高くて、装具まで魔力があるから吸血鬼族も苦戦したのはよくわかるわ。


 先輩達には全身タイツ(フルラップウェア)で魔法耐性と物理耐性を強化しているおかげで、魔法による集中攻撃も耐えきれたようだ。


 魔法障壁などで魔力を断絶されても、落とされないために浮揚式鉢植砲(テラリウムキャノン)の中に、浮揚式鉢植君(コスモテラリウム)が混ざっていた。


「アスト達は知っているのか?」


「先輩とルーネは元々使っているから知ってるわ。あれは魔法と関係なく浮くことが出来るものだからね」


 強力な術師がいる可能性だって考えていたわよ。指揮官の装具を見る限りは、わたしより能力は高い魔法の使い手なのは認める。


 ただ敵の軍団の装いからわかるのは、わたしのように気力を失うまで魔道具を造り続けるような地獄を見てないようね。指揮官級以外の装備が明らかに落ちるもの。


 先輩も気づいたみたいね。素敵な表情で、砲撃の用意を指示している。殺虫剤の効果は予想以上に高く、装備の弱い蠍人や魔物を壊滅状態に追い込んだ。

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