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錬生術師、星を造る 【完結済】  作者: モモル24号
第2章 砂漠の心臓編

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9 巨大蠍人 アンタレス

 夜魔の王国は夜魔族を主家に置く国家連合だ。政治体制はエルフの国に近く、各国の長が王となり一族を率いる代表となる。


 吸魔族は魔族と呼ばれる集合国家の中でも勢力が大きいかわりに、吸血鬼族、吸精魔族、吸魂鬼族など細かに分かれ互いに争っていた。


 吸血鬼族は元々は吸血魔族と呼ばれていて、吸魔族の中でも最大勢力になっていた。隣国のシンマ王国から勇者を名乗る冒険者達がしょっちゅうやって来るため、いつしか吸血鬼と呼ばれる武闘派になったに過ぎない。魔王を倒す······と、のたまい、暴れ回る相手をするために強く成らざるを得なかったとも言う。


 そのシンマ王国からの攻撃が止まった。シンマとは比較的友好的だった隣国のロブルタ王国と戦争になり、冒険者も戦争に駆り出された。異界の強者達も半数以上は戦場へ向かい、敵の反撃で壊滅した。


 シンマ王国の横暴に散々悩まされて来た吸血鬼族は、この機会に反撃を開始する。樹海に守られた夜魔の王国と違い、シンマ王国までは砂漠地帯が多い。

 吸血鬼族の能力はかなり下がるが、それでもいままで暴れられ同族を殺され拉致された恨みを晴らす好機を逃すわけにはいかなかった。


 戦いは互角の戦況が続いた。異界の強者の抵抗が激しく、吸血鬼族の名のある剛の者たちが次々と破れた。

 戦いは膠着したものの、ロブルタ王国との戦いで疲弊していたシンマ王国の方が次第に自滅に向かって崩れ出した。


 シンマ王国の王宮を占拠した吸血鬼族は、この戦いの勝利を確信した。しかしそれは、シンマ王国の首脳部を牛耳っていた邪神の横槍で無に帰されてしまう。


 シンマ王国の神殿にある地下のダンジョンから大量の蠍の魔物があらわれたのだ。王宮は落ちたが王都の民の避難が済んでおらず、王都は混乱の死地と化す。


 次いで現れたのが、蠍の鎧甲を持つ蠍人の軍団だ。血のように赤黒い殻や漆黒の殻の蠍人は、逃げ惑う人々を次々と捕食してゆく。

 シンマ王国の戦力はたったいま戦っていた吸血鬼族を相手に壊滅状態に陥り、残っていなかった。


 吸血鬼族はシンマの王宮の占拠を諦めて、撤退に移るところでソレを見た。


◇◆◇


「その巨大蠍人は三体もいたのね」


 吸血鬼族を率いてやって来たのは、ヴェカテという若い女部族長だった。一族を率いていた長は、一族の戦士と共に踏みとどまり、仲間たちを逃がすために戦い抜いたそうだ。


「シンマの王都には一万に近い一族の戦士がいたにも関わらず、あれの外甲に刃も爪も弾かれ撤退を余儀なくされたのだ」


 ヴェカテの話しだと、現れたのはシンマの王都の神殿ね。夜魔の森に現れたのなら、魔族一丸で動いたのだろう。


「分断され孤立したのは四千の軍。だが、故郷の分かれた側が砂漠地帯を越えて逃げられると思えんのだ」


 シンマの一帯を先行偵察に出ていたものの話しと比べて、ヴェカテの戦いに至る経緯や王都の状況はわかりやすかった。


巨大牛人(アルデバラン)を倒した時のように、通用する武装を揃えていくしかあるまいよ」


 もともとその予定だから、構わないわよね。あとは、吸血鬼族の処遇をどうするかだわ。


「受け入れ先はロムゥリでもいいし、港町の防衛もある。荒れたままでよいのなら山近くの街へ行くのもよかろう。どちらにせよ、支援は行う。相談して好きに選びたまえ」


 先輩がそう告げると、ヴェカテが驚く顔をした。


「斥候のミューゼから聞いていたが、そちらとは何の因果もなしに何故?」


 しっかり伝わったようで良かったわ。まだ疑わしい気持ちはあるにしても、それは見返りを要求してないから当然よね。

 先輩がチラッとわたしを見た。ぬふふ、わたしが要求して良いのね。


「要求は二つよ。この戦いの結末がどう転ぼうとも、吸血鬼族の戦士最低でも百名ずつはロムゥリとプロウトの街の衛兵として残してもらうわよ。もう一つは、ミューゼと言ったかしら、あの斥候の娘をわたしが貰うわ」


 あの娘は良い成分が採れそうだからね。出来れば三人くらいいると、助かるのだけど。


「あの、そういうご趣味でしたら他にもご用意しますが······」


 そういうご趣味って何よ。いや、他にもいるならもらうわよ。エルミィから肘で突付かれたけれど、純度の高い魔晶石を手に入れるのは苦労するのよ。


「この錬金術師の言い方が悪かったが、僕の近衛部隊、諜報部隊として加わるものを欲しいのだよ」


 先輩がフォローしてくれたので、ミューゼの他に十名の吸血鬼族の戦士が手に入ったわ。人形兵士(ゴーレムポーン)とか殺虫剤づくりとかで、だいぶ魔晶石を消費したから補充しないとね。


 ミューゼを隊長とした吸血魔戦隊(ヴァンプパーティー)が、わたし達の仲間に加わった。装備強化のために全員先輩の私物から流用した、黒パンを履かせている。


 意外と抵抗がないのは、魔族だからかしらね。先輩は育ちが良いからとわかったけれど、魔族の場合は種族特性だ。いまさらだけど、逃げてきた吸血鬼族全員から、絞り取れば良かったかもしれないわ。


 夜魔達は、気まぐれで扱いにくい種族なのだけど、吸血鬼族は戦闘が続き脳筋が多いので、組織だった戦いにも向くのよね。

 弱っていたとはいえ、異界の強者達の籠もる王宮を崩したくらいだから、今後も戦力として確保したいものだわ。

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