第3話 氷と炎の娘
ボクは金級冒険者の娘だ。いつも花嫁衣装を着ている頭のおかしい父と、力比べに余念がない好戦的な母。カルミアが冒険者と呼んでいた冒険者たちの中に、ボクの両親二人の姿があった。
カルミアには何も言ってない。ボクだって秘密くらいあるんだぞ。でも‥‥ボクもあの二人が両親なのを知ってるだけ。まとも話した記憶はないんだ。
ボクはラグーンという、山の麓にある都市の孤児院に預けられた。理由は簡単。あの夫婦ではまともな子育ては無理だと判断されたから。
あらためて思う。ボクの父? 父さん? 父上? 父親という存在は奇抜な格好の冒険者だった。
ノヴェルの読んでいた本に出てくる花嫁衣装という服を、何故か父親は毎日着ていた。ボクの父親はカルミアが言うには頭がおかしいらしい。カルミアに言われるようではおしまいだよ。
母親はとにかく喧嘩っ早い冒険者だと言う。魔物の集団の中にも単身飛び込んで行って、狂ったように暴れていた。
────ボクとしては、両親と血が繋がっているのが不本意なんだけど。
カルミアからは冒険者と呼ぶ人たちと同じような匂いを感じる。言うと怒るから言わない。ボクはカルミアに嫌われたくないから。
レーナと言う魔女から、カルミアの面倒を見るよう言われた。綺麗だけど怖い人だ。
レーナとカルミアは血は繋がっているみたいだ。魔力的には母娘のように繋がっているらしい。言っている意味は分からないけれど、カルミアの匂いに惹かれた理由はわかった気がした。
ボクと違いカルミアは頭は良いのに、ブチ切れたオークのようにバカみたいな突進をする。だからみんなが振り回される。
アストも悪ノリして、カルミアを煽るから懲らしめた方がいい。そう思っていたら魔女レーナから、課題がいっぱい届いた。
ボクの願いを聞き入れてくれたのかもしれない。カルミアは大量の薬を作る羽目になり悲鳴をあげていた。レーナの魔性の血が入っているので、魔力量を増やすには良い訓練になるはずだった。
魔法学園を卒業してもボクはカルミア達といたいので、アストの親衛隊に入った。アストはカルミアが一番気にかけていて大事にしている。
父親がなんであんな風になったのか、わからないけれどアストを見ているとなんとなくそういう人がいるのだという気がした。アストからも同じ匂いがするのは気のせいではないとボクは感じていた。
これからボクたちは国境の街へ向かう。ヤムゥリとメネス、それにタニアたちが先行して復旧作業を行っているはず。またカルミアを中心にドタバタが始まるんだ。
ボクはカルミアや仲間たちのために、ボクの母親がそうしたように、この拳で敵を殴り倒してやるだけ、そう誓うのみだった。
レーナとカルミアの関係性を修正しました。




